三重の旅 倶留尊山


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-

 昨晩の泊地「道の駅 吉野路上北山」は吉野という文字が見える通り奈良の南部にある。姫越山を下山したあと、無料高速の紀勢道路を使っても結構な時間のロングドライブとなった。国道169号を北上する山あいの道はどこまで走っても里が現れず、栃木で例えれば五十里湖あたりを延々と走るようなそんな雰囲気だ。夕方の弱い日差しに幾らか心細くもなるが、尾鷲で食料調達は済ませてあるし道の駅には併設温泉もあるので頑張って走るしかない。

 到着するとなかなか微妙なレイアウトの駐車場だ。コンビニのYショップが道の駅になっており、少し離れた場所に「フォレストかみきた」という宿泊施設がある。そこの温泉を日帰りで利用できるのだ。
 駐車場は前後の傾斜が強くまたトイレに遠いのでいささか落胆する。コンビニは夜8時迄営業だから真ん前に停めるのは流石にまずいだろう。だがトイレ側裏手の駐車場にあるEV充電スポット周りに数台のスペースがあった。充電器は一台しかないので停めるならこちら側しかない。まずは風呂だ。

 作られてまだ日が浅いのか、真新しい温泉はかなり快適で安らぐ。だがやはり駐車場所がどうしても頭から離れない。一旦休憩所で火照りをさましてから車に戻りEV充電スポット付近に停めてみる。平坦でトイレに近いが隣に浄化槽の機械室があり、中からモーター音が結構な音量で聞こえてくる。さぁ選択だ。猿田彦のお導きはうるさくてもEV側と出た。トラックのアイドリングに比べれば全然OKレベルの音量だ。それに大型車は温泉側の離れた場所にしか停められないので悩まされる可能性が無い点は大きなアドバンテージとなろう。

 ようやく車に収まり食事も終えて明日の予定や天気、ルートなどを確認していてふと気づいた。予定していた大台ケ原は登山口が既に標高1500mを超えている。YAMAPでここ数日のリポートを見ると登山口へのアプローチで路面がシャーベット状になっている写真があり、「スタットレスを履いたので閉鎖前の大台ケ原を訪れる」とか「車は心配で奈良からバスで来た」とか、極めつけは「チェーンを持ってきたがトラブル続きでやっと登山口に着いたのが昼過ぎ」なんてのを目にする。また、登山口へアクセスする道路は11月23日で冬季閉鎖とある。二日後だ。既に閉鎖すべき状況にあるということだ。これは完璧に調査不足だった。

 「フォレストかみきた」は大台ケ原のインフォメーションセンター機能もある。電話で恐る恐る問い合わせすると電話口の女性は「スタッドレスタイヤ必須です」ときっぱり。
 最悪の事態が起きた時の脱出用にチェーンは携行しているが安物の径が細いものであくまで緊急用だ。これに頼る訳にはいかない。車中泊の旅は行き当たりばったりに見えて意外と事前の計画と細かい情報収集が重要だ。また状況に応じて予定変更が必要になることが多々ある。主なものは天候だが、登山口へのアクセスについては完全に失念していた。目指す日出ヶ岳は日本百名山でもありまた大台ケ原は世界遺産という折り紙付き。今回の山旅の目玉であっただけに期待は大きかった。しかし運転のリスクを負ってまで突っ込んでいくべきではないだろう。ということで断腸の思いで次の山を繰り上げに予定変更した。これも猿田彦判断だな(笑)

 山間部故に夜間の冷え込みはきつい。明け方には顔が冷たくなりニット帽を被ってシュラフに顔をうずめる。標高330mのこの場所でこのありさまだ。単純計算で標高1500mの登山口付近はここより約7度近く気温が低いという事になる。氷点下は確実だろう。路面凍結が充分あり得る大台ケ原へ向かう道はパスして正解だ。

 ただ、予定を変更したので今日登るべき俱留尊山(くろそやま)の登山口までの移動が下道で100km程度となった。登山所要時間は3時間程度なので余裕はあるが、それでもまだ日が昇る前の暗い時間に支度を始めた。気温が低い時期の車中泊で最も辛いのは火の無い車内での着替えだ。この時だけは暖房の効いた部屋が羨ましく思えてならない。

 日の出直後の6時半過ぎに出発。登山口に着いたのは8時40分。朝から3時間弱のドライブとなった。早朝の国道169号は吉野南部の山岳地帯を通過するので風光明媚。所々雲海が漂う景色にいちいち停まっていては時間が足りない。景色もそこそこに駆け抜けたのが大変残念であった。大台ケ原も宿題となったので三重は再訪必至だな。

 さて、ようやく曾爾(そに)高原へ到着。駐車場が有料で800円というのはいささか割高な気もしたが有名なススキ原を維持するために必要だという。倶留尊山へ向かう登山者よりも曾爾高原を散策する観光客が多いらしく環境保全に金がかかるということだ。


登山口の曽爾高原 インパクトのある山肌にまず目を奪われる


まだ陽が届かない斜面に輝くススキ


半時計周回 亀山へ向けて登山開始


高度を上げると湿地帯の「お亀池」が見えるようになる まだ陽が充分に差し込んでいない


亀山まであと一息


西側には岩肌が剥き出しの骨っぽい山が立ち並ぶ


倶留尊山の山頂は今見えているピークの更に奥


高原に憩う人々 青少年自然の家から登ってくる人の姿も見える




樹林帯を超えて一つ目のピークが日本ボソ


正面に倶留尊山がデンと見える 一旦下ってあそこまで登り返しか(汗)


日本ボソから麓の眺望



 二本ボソに「いわしの口」なる山名板があった。てっきり眼下に見える亀山とその双耳峰がパックりと口を開けたイワシの口に見えるので「いわしの口が見えるポイント」なのだと思ったが、よくよく調べると三重県側登山口から二本ボソを見るとイワシの口に見えるというのが由来らしい。すなわち二本ボソ=イワシの口(厳密には10m位離れているが)という事になる。ちなみに二本ボソの由来は昔二本のホソという気が生えていたからだという。


そしてこれが「イワシの口」と思いきや違った


山頂は割と地味


倶留尊山から日本ボソ 奥の冠雪している所はたぶん大台ケ原


北側の名張市方面


下山にかかる ようやく日差しに包まれた曾爾高原


地図を見ても特定できなかったが環状にゴツゴツした山が威容を放つ




輝くススキ原








遊歩道には観光客も沢山訪れる



 俱留尊山自体はかなり地味な印象だが、日本ボソの眺望は素晴らしいし、ススキの名所である曾爾高原を楽しむのがキモと言えよう。ただ曾爾高原は一般観光客も沢山入ってくるので登山者としてはそこが唯一残念な点ではあった。

 さて、大台ケ原を割愛した関係で一日余る事になったので予定を若干アレンジすることにした。本来ならすぐ東にある御杖村にある道の駅に向かう予定であったが、すぐ西側には既に奈良県の宇陀市、そしてその隣には橿原市がある。天気予報も考慮して明日一日は山登りを休憩して遊ぶのも悪くは無い。泊地や食料調達は市街地に降りて昼食がてらコンビニの無料Wifiでリサーチすれば良いだろう。(ずっと家から離れていると案外パケット残量が枯渇してくるので無料Wifiは大変助かる)

概略コースタイム

駐車場発(08:52)-登山口(08:56)-亀山(09:17)-二本ボソ(10:01)-俱留尊山(10:37)-
二本ボソ(11:14)-駐車場着(12:03)

カシミール3Dデータ

沿面距離:5Km
所要時間:3時間11分

撮影使用機材
・NIKON Z50
・NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR

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三重の旅 倶留尊山 への2件のフィードバック

  1. リンゴ のコメント:

    おはようございます。
    今回の三重県遠征は奥様とのお伊勢参り観光から始まり、その後の車中泊山旅と、充実した日々を送られている様ですね。
    こちら方面の山は殆ど馴染みはありませんが、さすがに大台ケ原だけは知っています。
    路面状況を考慮しての断念は残念でしたが、代わりにチョイスした曽爾高原の倶留尊山も中々の雰囲気。
    残りのレポも楽しませて頂きます。

    • まっちゃん のコメント:

      大台ヶ原は実に残念でした。
      最も、これで再訪する理由が心の中にしっかりと出来ました。
      でもやはり遠いですね。

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