東北の旅2023 三日目 岩の殿堂縫道石山


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-

 昨晩の泊地、「道の駅かわうち湖」の夜は至って静かな時間を過ごす事が出来た。山中なれば喧噪とは程遠い所にある。道の駅といえば売店や食堂を併設してそれなりに賑わいがあるものだが、此処は駐車スペースにトイレと小さな売店が付属しているだけといった雰囲気である。
 驚いた事に街灯照明が無く、夜間、トイレに行く時は漆黒の闇の中懐中電灯を下げて行かなければならない。たった一台の自動販売機も夜間は照明が消えているというありさまだ。トイレに入ると人感センサーで明かりが灯りほっとする。

 夜半に雷雨があった。自然濃き下北半島の山奥だからか、雷鳴の迫力のスケールが違うように感じる。だが自然に包まれる安らぎ、昼間の疲れもあり屋根打つ雨音も子守唄のように心地よかった。朝、目覚めて見ると同志の車は他に二台あった。大型トラックのアイドリング音などとは全く無縁の静かな一夜を過ごす事が出来たのだ。機会があったら是非再訪したい道の駅となった。

 さて、今日は山中に秘められた奇岩が織り成す縫道石山へ登る。天気予報はどれも快晴を約束。風は若干強めだが問題無い範囲。登山コースは比較的短時間で終える事が出来るので、下山後は半島を北上して大間崎を目指す。その後時計回りにむつ市まで戻り、明日の登山基地である酸ヶ湯温泉まで走る。移動距離が長い一日である。


道の駅かわうち湖のすがすがしい朝


縫道石山登山口


熊鈴を貸し出しているとのこと


開けて見ると・・・

 登山口に熊鈴の貸し出しがあったので開けてみる。御覧の通り小さな鈴が並んでいた。試しに鳴らしてみると囁くような音量でこれでは大いに役不足であろう。看板に描かれている筋骨隆々のクマ殿にはとても届くものでは無い。今回は常用している熊鈴をザックに付けたが、大音量タイプも持って来れば良かったかなとも思った。

 一人で山中を移動しているとなにがしかの見えぬ動物の足音や鳴き声、糞、足跡などを目にすることが多い。だが、昨日歩いた大尽山にしても案外動物の気配が感じられない。縫道石山も歩き終えた後に感じたことは同じであった。もしかするとフィールドの広さが段違いなので動物の生息密度が低いのが原因なのかもしれないという考えに思いつく。人間の侵入密度も然り。ある意味距離をもって互いに存在しているというのがホントのところかもしれない。
 結局縫道石山は登山口に入ってから帰ってくるまで自分一人であった。時折「ウォッ!」とか「アー」とか、これがホントのクマよけとばかりに他人に聞かれたら恥ずかしいような奇声を発しながら歩くニンゲン。遠くからそんな自分を観察している動物がいたのだろうと思うのだ。


自然林の登山道へと進む


ルートは一本だけで迷う箇所は無いが何故かほっとする道標


ばば岩じじ岩分岐は御覧の通りシンプル


ばば岩手前にある岩


げんこつのようにも見える


そしてばば岩へ


ばば岩からの眺め


向こう側にこれから行くじじ岩

 ばば岩からじじ岩の間は特に道標も無いが、道がしっかりついているので迷うことは無い。途中ショートカットする踏み跡があったが地図を見ながら方角を間違えなければ問題無し。山頂へのメインルートに立派な道標があったのだから、この辺りに少し補強して道標を設置しても良いのではと感じた。


じじ岩から 陸奥湾より津軽海峡へと進む船一艘 海が見える山は情緒があって好きだ


振り返ると縫道石山が屹立している あんな所に登れるのか


じじの横顔にも見えるが・・・


あちらは ばば岩 そのように見えなくもない


登山道は一本道だからまさにこの通り 簡潔極まりなし


山頂直下から見上げる縫道石山

 序盤だらだらだった登山道も、山頂巨大岩の裏手を廻りこむと一気に急登となる。だがそう長くは続かない。じじ岩から見た山頂岩はとてつもない威容を誇っており、一体どうやってあの山頂に辿り着くのか、文字通り取りつくしまも無しといった感じだ。
 しかし、この手の山は必ず裏側に登山道が付いているのが定石なのだ。そうでなければロッククライマー専用となってしまうからだ。ちなみにクライミング行為は禁止されているとあったが、クライマーにとっては垂涎の岩かもしれない。


そして山頂へ到着 海の向こうは北海道


撮り忘れたが、おそらく向こうの岩に山名板があるのだろう


眼下にばば岩(左)とじじ岩(右)


福浦の集落を眼下に望む

 山名板を撮り忘れたのは痛かった。しかし、吹きさらしの山頂は強風に晒されていて不用意に岩の上を歩き回ると突風に煽られて滑落の可能性も否めない。足場のしっかりした箇所から写真を撮るにとどめたが、それでも津軽海峡を挟んだ対岸に見える北海道の景色に胸打たれるものがあった。今、北の果ての山の頂に立っているのだと。


来た道を戻る 深い森、苔むす倒木に未だ秋は遠し


・・・と思ったら小さな秋が


秘められた岩の山から戻ってきた

 無事下山終了。山に潜んでいた動物達もやれやれといったとこだろう。さて、今日は時間が早いので下北半島時計回りドライブとなる。
 途中、有名観光地である仏ケ浦があったが、海岸まで降りると駐車場から往復1時間かかるということなので割愛。車道にあるビューポイントから写真を撮るにとどめた。他にも願掛岩など見るべき景勝地やゆっくり眺めたい風景があったが、今回の旅の大きな反省はスケジュールに余裕が無かったこと。再訪する時は下北半島だけで一週間はかけたいものだ。


仏ケ浦を道路から俯瞰


まさに奇岩と言えよう


願掛岩 双方の岩に神社がある 時間があったらゆっくり歩いて見たかった


そして本州最北端の大間崎へ到達


北海道の亀田半島にある恵山と思われる 頂稜部の白いものは雪なのか


こちらは函館山

 大間といえばマグロだ。大間崎にはいくつかの店が並びどの店でもマグロを使った料理を食べる事が出来る。だが値段が特に安い訳でもないし、それに大間で採れたマグロは速攻で東京送りされている筈である。従ってここで供されるマグロは首都圏から冷凍で輸送された遠洋ものじゃないかなんて斜に構える自分。特にマグロにこだわりがあるわけでもないので、海鮮ラーメンを注文するのであった(笑)


大間崎から南下すると海の色が気のせいか違うように感じた


下北半島の付け根 野辺地からむつ方面


下北半島は風車が多い

 酸ヶ湯温泉へのルートは青森経由でなく、野辺地から南下して七戸町から八甲田山エリアへ向け高度を上げる。結構な長距離移動であった為すっかり時間が押してしまった。泊地である酸ヶ湯インフォメーションセンターに到着したのは18時過ぎ。いつもなら車内設営も終え、買ってきた食料をテーブルに並べてから寝転がっている時間だ。車から降りると外気温は10度を割っていた。今晩は少し防寒に気を遣わないと寝られないかもしれない。

概略コースタイム

駐車地発(07:26)-ばば岩(07:53)-じじ岩(08:12)-縫道石山(09:27)-駐車地着(10:49)

カシミール3Dデータ

沿面距離:5.4Km
所要時間:3時間23分

撮影使用機材
・NIKON Z50
・NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR

カテゴリー: 車中泊の旅, 青森県の山 パーマリンク

東北の旅2023 三日目 岩の殿堂縫道石山 への2件のフィードバック

  1. 野球親爺 のコメント:

    こちらの山も初めて見聞きした山です。
    リサーチするのが大変だったのではないでしょうか。

    熊対策で声を出して歩くことは私にもよくあります。他の登山者に聞かれると恥ずかしいなと思いながらも熊に会うよりはいいかと思って大声出して時には歌って歩いてます。

    さてさてお次はどちらのお山でしょうか。

    • まっちゃん のコメント:

      下北半島で登山対象になる山はそう多くありませんでした。
      短時間で登れる、海が見える、YAMAPで実績があるという条件で選びました。
      正式登山道の無い山も多数ですが流石に山深く敷居が高そうです。

      歌となると超オンチの自分は無いかもしれませんね。
      誰かに聞かれたらそれこそ山籠もりで里に下りてこられなくなるかもしれません。

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