東北の旅2023 二日目 雨のち晴れの大尽山


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-

 昨日は一挙にむつ市まで移動したのだが、盛岡を過ぎると後続先行、そして対向車線を走る車も殆ど無くなる。高速道路でまさかの単独行の趣だ。新幹線が開通する前に盛岡から特急に乗って青森へ行ったことが何度かあるが、その時も乗客がまばらだったのが印象的だった。やはり今でも盛岡以北というのは圧倒的に往来が少ないように感じる。

 連日の暑さ故に真夏の格好で出発したのだが、車の中はよい。途中休憩したSAまでもなんとかなったが道の駅よこはまで休憩した時は半そでTシャツの自分は完全にアウェイ。曇り空でもともと気温が低かったのも手伝い、陸奥湾から吹く風が大層冷たいではないか。皆さん長袖にもう一枚羽織っている。完全に浮いてしまった。勿論着替えは持っているが面倒なので今日のところは強行突破だ。

 初日から車中泊も考えたが、何せ驚異的な距離を走って来たので疲労もそれなりにある。初日に条件が悪くて安眠出来なくなるとその後のスケジューラにさわるだろう。ということで安ビジホ宿泊で一旦体力チャージとした。夕食の買い物に近くのスーパーに出かけたが、おっといけない、まだTシャツ着ていて”変な人”のままだった。北国の肌寒さが身に染みる。

 さて、二日目は宇曽利山湖の南に聳える大尽山へ登る。宇曽利山湖といえば恐山があまりにも有名である。かつて二度訪れた事があるので今回観光は割愛することにした。時間があれば・・・とも思ったのだが車中泊山行は移動や買い物など意外と手間取るので余裕が案外少ないものなのだ。

 天気予報が微妙だった。幾つかの予報を総合して判断するのはいつも通りだが安心して山に登れるような予報では無かった。風は若干強めだが晴れも全く望めない訳でもないので気を取り直して出発することにした。自宅周辺の近場なら恐らくキャンセルするレベルの予報だろう。

 まるで魔界への入り口か?木で覆われたゲートをくぐり鬱蒼とした雰囲気の登山道に吸い込まれていく。しばらくは宇曽利山湖南岸の平坦な周遊道を進む事になるがこれが案外単調で長い。
 梢を鳴らす風が強いが、辛うじて弱い青空も見え隠れするので案外気持ちは軽い。時折ツンと鼻をつく硫化水素の匂いが異世界の雰囲気を醸し出す。静寂の森の中でふと立ち止まると木の葉の落ちる音にはっとさせられるのは恐山という名前に気圧されているせいなのか。


魔界への入り口か?


車両が進入出来ないように縦杭が並ぶ


深い自然樹林に包まれている


宇曽利山湖へ注ぎ込む沢橋より


基本的には眺望の無い湖岸道 朝の陽ざしを受ける宇曽利山湖が眩しい


林道とはここでお別れ 先に林道は続くが草に覆われている


幾らか登山道らしくなってきた

 斜度がきつくなりようやく登山道らしくなってきた頃、俄かに空が暗くなってきた。そしてついにポツポツと雨が降り始めた。幸いにして深い森の中なので落ちて来る雨のしずくはさして多くも無い。だが濡れるのは嫌だったので滅多に着ないレインウエアの上着だけを羽織った。レインウエアを着て山を歩いたのはいつのことだろう。恐らく10年以上ではないかな。山を歩き始めた頃に数回しか記憶に無い。それだけ雨の山行は嫌っている自分だ。

 頭上を通り過ぎる雲はせわしない。先ほどまで降っていた雨は上がりまた薄い青空。レインウエアを脱いで進むと暫くしてまた黒雲がやってきた。沢音と間違うような今度は大きな音と共に本格的に降って来た。慌ててレインウエアのズボンも履く。カメラは先ほどの雨の時からザックにしまっているので雨の景色は撮っていない。
 靴も濡れてきたし、こんな本降りの雨ではモチベーションダダ下がりだ。地図を見ると後少しなので雨脚が弱くなるようならせめて山頂を踏むだけでもと逡巡しながら大きな木の下で若干の停滞をした。場合によっては撤退も頭の隅にしながら佇む。雨粒にしっかりと体を打ちつけられながらこんな深い山に一人居るのは寂しいもの。雨さえなければどんなに一人の山行でも寂しいと感じることは無いのだが。

 やがて雲が薄くなり恢復の雰囲気が出てきた。歩みを進めると先行者が一名下ってきて交差。挨拶した彼もまたなんでこんな天気で・・・といった面持ちであった。

 ところがである、それまで一喜一憂していた空模様が一気に吹っ切れたように急変した。気圧の谷が去ったのであろう。今までと違った方向の強い風が吹き始め、にわかに青空が一面を覆い始める。長かった森の歩きを終えたその瞬間、最後の登りを詰めると奇跡の晴れの山頂だ。先ほどまでの雨で水蒸気をたくさん含んだ景色はいま一つシャキッとしないがそれでも360度の眺望を得られたことは大変嬉しい限りだ。ついさっき交差した彼は気の毒にこの景色を見られていない筈だから自分はツイていたのだ。


山頂へ飛び出すと奇跡の晴天が待っていた


陸奥湾の向こう側は夏泊半島かな


下北半島南西の山脈 低山が連なるが奥深さを感じる




手前が丸山、奥が朝比奈岳 果たしてルートはあるのだろうか


そして眼下に神秘の宇曽利山湖 奥に下北半島北側の海


お隣の釜臥山にある自衛隊のレーダー

 釜臥山はむつ市内から見るとせり上がり南側にスパっと切り落ちた山姿が特徴的で山頂にレーダーが置かれているので誰でも一発で視認することが出来る。だが北西に位置する大尽山側から見ると頂稜部だけが見えるのみである。また、山頂直下まで自動車で登ることが出来るので時間があれば・・・と思っていたのだが宇曽利山湖以外は見える景色もそうは変わらないだろうから今回はパス。

 ラッキーな景色に恵まれた事に感謝する。軽い行動食を口にして下山を開始。空模様はどうやらこのまま落ち着いてくれそうだ。


一体地蔵には文字通りお地蔵様が一体


素朴な道の概念図あり


大木が登山道に寄りそう


道一杯に咲いていた花




帰りの宇曽利山湖は晴れ晴れとした空に輝いていた


むつ市にある大平地区まで10Kmの山間ルートがあるというが


この藪ではちょっと尻込みしちゃうね かつてはむつ市からの主要道であったという


長い湖岸歩き 終盤もコツコツと進む

 恐山が霊場として現在のスタイルになったのは昭和に入ってからであるという。それまではむつ市方面の人が温泉を求めて沢山訪れ、祭りなども開かれたそうである。要は行楽地であったのだ。現在感じるのとは大変印象が異なる。先ほどの写真の大平への道は宇曽利山湖へ向かうメインルートであり、行き交う人は心弾む思いで歩いていたのであろう。


下山後 三途の川へ寄り道


正面奥が恐山霊場


奪衣婆と懸衣翁の背には大尽山


宇曽利山湖の背後にある端正な形の大尽山の姿は目を引く




今夜の泊地へ向かう途中 陸奥湾の静かな風景に癒される


さぁ、明日はどんな一日になるのだろう

概略コースタイム

駐車地発(07:29)-道標(08:25)-大尽山(10:30)-一体地蔵(11:17)-道標(12:28)-
大平分岐(12:57)-駐車地着(13:32)

カシミール3Dデータ

沿面距離:15.7Km
所要時間:6時間3分

撮影使用機材
・NIKON Z50
・NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR

カテゴリー: 車中泊の旅, 青森県の山 パーマリンク

東北の旅2023 二日目 雨のち晴れの大尽山 への4件のフィードバック

  1. リンゴ のコメント:

    なんと!9日間の東北遠征でしたか。
    初日に青森県むつ市まで北上して徐々に南下しながらの山旅だったのですね。
    若い頃なら兎も角、1日で650㎞は大変だった事でしょう。
    お疲れ様でした。
    続編も楽しみにしています。

  2. まっちゃん のコメント:

    いやぁ、一日でむつ市はなかなかなものでしたよ。
    もっとも東北自動車道は北に行くほどすいているので案外運転は楽でした。
    同じ調子で西の方面もロングを考えているのですが、鬼門の首都高・東名・名阪は甘くないかもしれません。
    10月後半はまずは県内と周辺県で紅葉を楽しみたいと思っています。

  3. 野球親爺 のコメント:

    大尽山なる山は初めて知りました。
    それにしても初日の走行距離には恐れ入ります。
    山頂でドラマティックに晴れたのは日ごろの行いの良さからかな。

    これからどんどん南下して行くのですね。
    マイナーな山?が多いのでしょうか。
    楽しみにしてます。

    • まっちゃん のコメント:

      山頂で晴れたのはたまたまで、ツキを消費したに過ぎないかもです(笑)
      下北半島の二座はマイナー、というかメジャーな山は無いので海が見える山を選んでいったらこのチョイスになりました。

      なかなか連続して好天に恵まれるのは難しいですが、今回の遠征も風雨でメジャーな二座(岩木山と秋田駒ケ岳)を落としました。
      しかし、これで再訪する気持ちの理由が付いたのは間違いないです。

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