伊豆半島の旅 二日目


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-

 天城高原駐車場の夜はトイレにちょっと難があった。
 というのも、照明が全て切れていて完全な闇状態だったのだ。
 ハンドライトとランタンを握りしめて車から往復すること数度。こんな時には頻尿がつくづく悔やまれるというものだ。

 さて、明けた翌朝。勤労感謝の日でもありハイカーの出足は早朝から多い。
 次々と出発していく人達に比べて車中泊組は案外のんびりしている。
 隣に停めたキャンピングカーの窓から子供の顔が所在なさげに覗いては隠れ。親御さんはまだ眠りの中なのだろう。

 今日のコースは半日程度と予定している。もうちょっと早立ちすれば充分午前中に帰着も可能であったが、朝方に昨晩からの強めの風が残っていた為にわざと時間をずらして出発した。
 駐車場から僅かの所にバスの終点停留所があり、そこが天城縦走路の登山口となっている。自家用車が無くても公共交通機関で楽々とアクセスすることが出来るのは素晴らしい。


ずばりそのものバス停前が登山口 利便性抜群


こんな感じ 今回は万三郎岳からシャクナゲコースで周回


序盤 流石に良く踏まれた登山道である 逆にオーバーユース感な箇所も随所にあった


所々歩きにくい箇所もあるが問題ではない


四辻までやってきた 道標が立派で素晴らしい


ツツジの木って小ぶりなものしか見た事が無かったが、天城ツツジはこんなに太くなる


高度が上がってくると徐々に眺望が見られるようになる

 万二郎岳まではさしてキツイ区間も無くあっと言う間に登ってしまった印象。眺望は山頂手前に少しあり、山頂で一気に南方向が拡がる。逆にこのあと万三郎岳に向かう途中と下山路であるシャクナゲコースにはまったく眺望が無く、すなわちこのルート随一の眺望であった。


程なく万二郎岳へ到着


コースを通してこの万二郎岳からの景色がメインとなる 頭を出しているのは伊豆大島の三原山


銀色に光る海面に浮かぶ伊豆諸島 とても幻想的だ


海なし県に住む者にとって素晴らしい景色である


これから向かう万三郎岳(右から二番目のピーク)

 万二郎岳からは一旦高度を下げ、緩く登り返すと馬の背へ。平坦地を暫く進んで行くと途中から大室山の形の良い姿を見ることが出来た。
 大室山は植生保護の為登山が禁じられているが、リフトで山頂の外輪往復が出来る観光ポイントとして有名だ。前日は周辺地域のあまりもの観光客の多さにビビってしまって大室山行きはすっかり諦めてしまったが、機会を改めて是非登ってみたいものだ。


形の良い大室山


万二郎岳からの下りは岩交じりで梯子もあるがよく整備されていて危険は無い


雲が多くなってきたなぁ(*´Д`)


そして万三郎岳 伊豆半島の最高峰 残念ながらここからの眺望はまったく無い


一瞬富士山が見えるポイントがあって思わずシャッターを切った

 万三郎岳から北に向けて一気に高度を下げると、岩交じりの歩きにくい道が続く。
 進行方向が東に変わると山腹を縫うようなルートとなるが、地形図の登山道通りではない微妙な起伏が含まれており、コース終盤の足腰にじわじわと効いてくる。

 途中で2組の親子連れとスライドしたが、父親に手を繋いで貰いながら登る小さな子供は未だ3~4歳程度かな。ゴロゴロと転がる岩は坊やの背丈ほどもあり、超えて行くのもさぞかし難儀だろうにと、涙ながらに爺ちゃん目線で見てしまう。既に11時近くだからあの足運びでは万三郎岳の山頂を踏むにはどのくらい時間がかかるのだろうか。そして、お世辞にも開放感がない山頂、しかも南からどんどんガスが流れて暗くさえある山頂に立つ坊やが少し気の毒に思えた。駐車場から歩きやすく景色の良い万二郎岳へのピストンのほうが良かったのではと老婆心。


山の北側を廻るシャクナゲコースで下山していく 確かに途中シャクナゲが多い箇所もあり花季は賑わうのだろう


伊豆半島の山はやはり植生に独自なものがある


ほぼ下山終了 まるで顔のような愛嬌のある堰堤も思わず撮ってしまった

 下山を済ませると時間が微妙に中途半端だ。
 昼食として持って行ったパンも手を付けずじまいだが、街に降りて何か食べるにしても更に時間が遅くなってしまう。
 駐車場で食べてしまえば良かったのだが、今日の宿泊地へ向かう途中の道路脇に停めて、リアハッチを開け放ってお湯を沸かして昼飯タイム。往来する車の人の視線が少し気にはなるがどこでも食事が出来るのは車中泊仕様の有難さである。

 一旦北上し、西へルートを変え修善寺方面を目指す。
 実は予定していた温泉があったのだが、そちらに着く前に『白岩の湯』という文字が目に入る。
 「共同浴場」という言葉に、これぞ車中泊の旅に相応しと飛び込んだ。


修善寺方面へ移動する途中に見つけた共同浴場

 入浴料は400円也。地元の人は半額の200円。生憎石鹸とシャンプーを持ち合わせていなかったのでそれらを買い求めると650円になった。シャンプーは何回か使える位の量なので持ち帰ってまたどこぞの共同浴場で使えば良いだろう。
 透明な硫酸塩温泉、湯温は自分好みだ。カランは五つしかないが、そもそもこの時間帯はガラガラで自分を含んで三名のみが入浴。
 ドライヤーも何も無い更衣室。自販機も無いホール。シンプルもここに極まりといった佇まいだが、地元の方にとっては必要充分。また流れの旅人にとってはなかなか思い出深い風呂となること請け合いだ。
 ドライヤーが無かったのはチト痛かったが、独り占めの更衣室の扇風機全開で髪の毛を乾かすと、温泉で火照った体もやがてクールダウンした。


地元の人が数人居たのみ 観光客向けとは程遠い

 予定していた今日の車中泊地である道の駅 伊豆月ヶ瀬。最近開設されたばかりの真新しい道の駅で、トイレも綺麗だし設備もなかなか素晴らしい。だが一点だけ難点がある。駐車スペースがほぼ全て平らでないのだ。

 車中泊をする時に自分が一番こだわるのが水平を確保できるかどうかだ。
 寝る時は、助手席裏側を頭にして車の右半分に体を置く。左半分は荷物スペースなので使わない。また、頭の位置は必ず進行方向と決めておりこれが逆になるとドアからの出入りが極めて困難になる為だ。
 従って理想は前後左右平坦、最悪頭が少し高くなっても左右はほぼ平坦を求めたいところ。この為駐車スペースを見繕ってなるべく目標に近い場所を探すことになるのだが、もう一つ重要なのがトイレの近くという要件だ。
 車中泊の一般論だとトイレの近くは夜間も利用者があってうるさいので勧められないというが、自分の場合はトイレの近さは切実なる問題。実際、夜間に車からトイレが離れているのはかなり辛いのである(笑)

 道の駅伊豆月ヶ瀬は全ての駐車スペースが及第するレベルでないので早々に見切りを付けた。代替えの場所として道の駅 天城越えを考えていたのでそちらへと進む。

 明日予定していた浄蓮の滝が途中にあったのでついでに観光してしまおう。もう夕闇が近づきつつあるというのにGoTo観光客の足並みが絶えないなか、自分もその中に混じった。駐車場から滝までは標高差が50m程度あり、帰りの登り返しは温泉あがりの体にはちょっともったいない汗をかいてしまった。

 浄蓮の滝というと石川さゆりの天城越えの歌詞の中に出てくるので有名だが、自分としてはやはりサビの部分の「天城~越~え~」の部分が非常に印象に深く、明日は是非その近くまで行って見ようと思っている。


浄蓮の滝でプチ観光

 道の駅 天城越えに着くとまだ観光客の足並みが途絶えておらず、簡単な設営準備をして様子見とする。道の駅の営業時間は大概が夕方5時までなので、この時期日没ともなれば利用者は殆ど居なくなる。いよいよ車中泊者の活動時間となるのだ。

 今日の車中泊車は数台程度。昨晩は沢山の車が共に一晩を過ごしたが、流石に連休が終わり明日から平日ともなると暇人のみが残る。
 天候は悪く無く、気温も比較的高め。難を言えば傍らの国道を走るトラックの音がうるさいくらいか。それも夜が更けると共に静けさが戻ってくるのであった。

概略コースタイム

駐車場発(07:23)-四辻(07:46)-万二郎岳(08:35)-馬の背(08:57)-万三郎岳(09:52)-
四辻(11:51)-駐車場着(12:10)

カシミール3Dデータ

沿面距離:9.5Km
所要時間:4時間47分

カテゴリー: 車中泊の旅, 静岡県の山 パーマリンク

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