-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
明け方四時頃に甲高い若者達の話し声で目が覚めた。
出発の支度でもしているのかなと外を覗いてみると、テーブルを出して日の出を楽しもうという趣向のようだ。
こちらも車中泊組だから駐車場の本来の使い方としてはお互いになんとも言えない部分があるが、やはりうるさいのは事実。だが仕方がない。要は自分が早く起きれば良いだけのこと。
起き出して片付けなどをしていると若者の一人がやってきた。
「すみません。写真を撮ってくれませんか」
見れば、まだ二十歳前後のあどけなさも残る数人のグループであった。
日が昇る頃には持ち込んだプレーヤーでラップ系音楽をかけてノリノリの彼らであったが、自分とて彼らくらいの年頃には表現の仕方こそ異なれいろいろと周囲に気が付かぬうちに迷惑をかけていたのだろうなと思う。
実に楽しそうな彼らの笑顔をファインダーの中に見ていると、すっと胸のつかえがおりた。青春っていいなぁ。
早起きは三文の得。
いざ、まいりましょう。今日は山登りというよりは散歩だから、涼しいうちにちゃっちゃとすませちゃおう。
まずは、最短距離の車道歩きで王ヶ鼻へ向かう。
途中で山本小屋のマイクロバスが止まっていた。王ヶ鼻の途中で、小屋の早朝ガイドツアーの集団さんに出会う。後刻王ヶ頭ホテルの一行も大量にやってきた。GOTOキャンペーンで盛況なようである。
早朝ツアーはマイクロバスで移動するので、歩きたくないけど美ヶ原のいいとこどりを楽しみたい人にはうってつけ。こんな早朝の絶景を労せずして見ることが出来るのだから人気も頷けよう。だが、バスから僅かな距離といえども狭い登山道に延々と続く人の列。ちょっと密が過ぎやしませんかと自分などは思ってしまうのであった。コロナ禍の一日も早い収束を願うところだ。
山本小屋の団体さんを追い越して王ヶ鼻に到着すると先行の登山者一名が丁度戻るところ。
南アルプス、八ヶ岳、中央アルプス、北アルプスまでぐるっと見渡せる贅沢な眺望の独り占め。至福の時間だ。
以下、山の名前がきちんと説明できないが、もうちょっとちゃんと日本の名山について基礎知識得なけりゃなぁ。
じゃないとこの素晴らしい景色が勿体ない。
ホントは実際に登ればちゃんと頭に入るんだけどねぇ。
山本小屋の団体さん、王ヶ鼻ホテルの大量のお客さん達と入れ替わりに来た道を戻り、王ヶ頭直下より車道を外れてアルプス展望コースへと進む。
こちらは徒歩でのみ入れる場所なので時間も時間だけに実に静かな場所。思った以上に荒々しく、また、文字通り天上に浮かぶ楽園のような地形を楽しむことが出来る。チリチリと焼き付けるような日差しがいささか堪えるが、大体イメージ通りの素晴らしい散策ルート。
結局コースを抜けるまでに数人のハイカーと会っただけであった。雄大な自然はやはりなるべく人の少ない環境で楽しみたいところだ。
”塩くれ場”までくるとアルプス展望コースはおしまい。あとは牛達が待つ放牧地へとのんびり歩を進める。
こんな景色の中で暮らしてたらストレスないだろうなコイツラ と思いきや
近くにいた一頭にカメラを向けたら何故か凄い勢いで駆け寄ってくる。
すると、体全体が白っぽいもう一頭もやってきた。
だが、呆気にとられたことに、あとから来たシロはクロに鼻で邪魔だとばかりに追い払われしまった。
『旦那の施しはテメエにはやらないぜ。すっこんでろ』的な勢いで。
こんなとこにも争いがあるのね。
嗚呼、御免ね。おじさんは何もあげるものないんだなぁ。(そもそもあげちゃいかんのだが)
牛達の恨めしそうな視線を感じながらその場を後にした。
美しの塔までが一応予定。その先に牛臥山がのっぺりと横たわっているが、丸裸の登山道を見るに如何にも暑そう。また、山頂からの景色もあまり目新しいものは無さそうだ。
美しの塔の日陰の箇所でしばし休憩をして予定通り王ヶ頭へ向かう。
美ヶ原を歩く人は大体がビーナスラインの道の駅側からアクセスして美しの塔まで、ハイキングの人はアルプス展望コース経由王ヶ鼻の往復のようだ。自分のように全く逆向きの人は少ないような感じがする。そもそも袋小路の山道をクネクネと走らなければならない自然保護センターからアクセスしようとする人が少ないのもあるのかもしれない。
そんなわけで、一人トボトボと炎天下の車道を歩く自分。王ヶ頭ホテルの食堂で外を眺める宿泊客になんとなく好奇な目で見られているような気がした。否、時間はまだ9時前。自分だってホテル泊なら窓外の絶景を眺めながらコーヒーのお代わりをじっくりと楽しんでいたに違いない。
ちなみに、王ヶ頭ホテルの料金を調べてみるとなかなか結構なお値段だ。まぁ、あのロケーションなら仕方がないかな。先立つものの心細いプータローとしては炎天下をトボトボと歩く組からなかなか脱却できそうも無い(笑)
ホテルの裏側に廻りこむとそこが王ヶ頭の山頂碑。
早朝王ヶ鼻より見たアルプス眺望は雲海も取れてスッキリ。本当に良い天気に恵まれて幸せだ。
右下の自然保護センターに向けて降りていく 帰路は登山道にて 左上は武石峠
10時前に車の元まで帰着。例の若者グループも流石に暑さには勝てぬようで、丁度撤収作業にとりかっかていた。
自分はトイレで軽く汗を拭って着替えを済ます。下山後のよく冷えた自販機の飲料が価千金なのはいつものことだ。ゴクゴクと喉を鳴らした。今日の残りの行動は観光ドライブだな。
帰りの車道から この景色を見る為にだけ走りに来ても良いと思う
一旦、松本の市街地まで降りる。
時間的に丁度良いので某ファミレスにて昼食。朝晩は車内で保存性の高い食料。昼食は軽くてザックに放り込んでいても安全な食料ばかりとなると、やはり外食が恋しくなるというもの。旅はまだ三日目なのに無性に生野菜が食べたくなってサラダバーを追加してしまった。涼しい部屋で出来立ての食べ物とみずみずしい生野菜。そして食後の片付けも無し。外食こたえらんねぇ。
すっかり腹を膨らませたあと、今度はビーナスラインへと車を走らせる。霧ヶ峰を覗きに行くためだ。
つい先ほどまで、もう少行けばビーナスラインという場所まで美ヶ原を歩いていたのに、我ながらご苦労さま。
実は自然保護センターから美ヶ原の道の駅へと通ずる道があるにはあるのだが、やはり災害による通行止め。やむなく松本市経由の大回りとなった訳だ。もっともファミレスにありつけたのでそれはそれでヨシなのだが。
霧ヶ峰の北西端にある八島が原湿原を覗いてみる。
車から降りた途端むっとした熱気に包まれた。湿原の入り口に立つも、あそこを歩いたら間違いなく干物になるなぁと思い、秒で踵を返した。
中には水分を持たずに突入していく猛者な観光客も居たが、自分はもうちょっと気候が穏やかな時期に訪れたい。
ビーナスラインを下って白樺湖手前から見る蓼科山はやはり形の良い山
今日の車中泊地に無事到着する。標高1700mを超える地点なのに、まだまだ日差しが高く、日陰がまったく無い駐車場に止められる場所は見つけられない。10分程走った所に木陰を見つけてしばし涼を求め、夕暮れが空気を冷やすのを待った。明日は北八ヶ岳二つ目の山に登る。
概略コースタイム
自然保護センター駐車場発(05:53)-王ヶ鼻(06:36)-アルプス展望コース入り口(06:53)-塩くれ場(07:53)-
美しの塔(08:03)-王ヶ頭(08:50)-自然保護センター駐車場着(09:39)
カシミール3Dデータ
沿面距離:10.8Km
所要時間:3時間46分
長野遠征登山 天気に恵まれて 良かったですね。
楽しく読ませてもらってます。
天気は大当たりでした。
でも、暑さが苦手の自分は、
登っている時は曇りで山頂や眺望の良い場所で休憩している時だけ晴れ
なんて図々しいこと考えてましたが、自然は甘く無かったです(笑)