想い出の鞍掛山から信仰の山羽黒山へ


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

羽黒山、池ノ鳥屋の過去の記事
    2009年03月08日  半蔵山から池ノ鳥屋
関連山行
    2007年01月08日  記念すべき第一歩「鞍掛山」
    2009年01月25日  薮をかき分け雨乞山

  今年の紅葉シーズンは休みと晴天がなかなかリンクしてくれなかった。たまに土曜日が晴れても出勤日だったりしているうちに、すっかり県内の紅葉は終盤でさえ過ぎ去っていった感がある。晴れた日を狙ってスパッと山に行くのはやはり現役組には辛いもの。まだ、暫くは我慢の年月を過ごさねばなるまい。

 最近、道なき山シリーズも若干ネタが枯渇気味である。正確にはネタ帳にはいろいろあるのだが、調査偵察が不十分で企画前レベルなのである。本格的なシーズンインを前にして、トレーニングではないが少しカンを取り戻しておこうと思い、自宅からもっとも近く、また馴染みのある鞍掛山を起点とした里山逍遥に出発した。

 鞍掛山に登る場合は登山口付近に車を駐めるのが常道であるが、今日は周回するので帰りの車道歩きを短縮させる為に途中の路側の広い箇所に駐めさせて貰った。ここへ駐めて雨乞山へ登ったのも懐かしい思い出だ。
(上記、関連山行より参照されたし)

 いつもは車でさっと通りすぎていく射撃場脇をゆっくり進んでいく。射撃場は現在休業中ということだが、配電盤なども撤去されており、柵越しに見る施設は荒廃しきった感もある。事実は廃業といったほうが合っているだろう。

 見慣れた登山口の鳥居をくぐり、沢に出会う。最近はすぐ右手の『昌子岩』ルートへ進んでしまうが、今日は珍しく正規登山道を沢沿いに進み、かつてコテンパンにやられた岩コースを選択した。

 岩コースは今は懐かしい栃木での山登りの記念すべき一座目である。
(再び、上記関連山行より参照されたし)

 この記念すべき山行記事の第一回目では、今と違った印象の文体でちょっと恥ずかしいが、とにかく山頂に着くまで疲労困憊、まさに虫の息となりながらの山行だったのである。翌日の筋肉痛は苛烈を極め、自らの体力の無さを思い知らされた出来事でもあった。故に、この岩コースのキツさは今もってトラウマとして記憶に残っているのだ。
 今日の予定ルートは後半に体力を要しないので、それならばいっちょリベンジで岩コースを登って見ようじゃないかと思った訳である。

こちらに駐車させていただいた 今日は懐かしの岩コースへ 急登だがあっという間に標高獲得

 斜度の割にはジグザクに道も切られておらず、殆ど直登なので高度はあっという間に稼いでしまう。流石にあれから幾多の登山経験をしている今となってはたやすい登りである。ストレートの急登だから、普段運動をまったくしない者にとってはこれはたいそうキツかっただろうと容易に想像が出来る。
 終盤の鎖付きの箇所で少し息があがり立ち止まると、ふと9年前に喘ぎながら自分が此処を登っていたのが不思議な感覚として通りすぎっていった。

二度目の奥の院 大岩から定番眺望 その2、古賀志山

 今日の課題は鞍掛山から半蔵山山塊への接続である。いつの日か、赤岩山から半蔵山まで一気通貫で歩き通す為に避けて通れない箇所だ。
 鞍掛山は地形図をご覧いただくとわかるが、台形の山頂付近から北側はあまりにも急峻すぎる。かつて、北に降りたという記事を読んだことはあるのだが、具体的に何処を降りたというのが今ひとつはっきりしていない。今回、所々下を伺ってみるもやはりどこから下降しても厳しい雰囲気が漂っている。降りだしが幾らか楽そうに見えても、万が一先が岩などで破綻した場合戻って来られる斜度でなければならない。ピンホールのルートを知っている先達と一緒ならともかく、単独で無闇に突っ込むべきではないだろう。

 準備しておいた代替案で、大岩より少し降りた場所の等高線が緩い所から下降し、山頂の北側にある鞍掛峠へトラバースするルートを取ることにした。

 降り始めはやや急だが、足がかりや掴まるものも沢山あるので楽勝である。少し東寄りになってしまうが、しばし高度下げに徹する。上を見るとやはり途中に岩が出ていたりして、山頂の北側を無理に降りるとかなり苦労したであろうことは想像するに難くなかった。

北へ手薄な箇所を探る やはりこちらは楽勝 あちら側で降りなくて正解

 高度が下がるとやがて薮が濃くなり、更に下げると作業道の痕跡が出てきてこれを利用する。油断していると荊棘のトゲで思わぬ痛い思いをするので、ストックで払いのけながら進むが、時折跳ね返った枝にチクリとやられるのもこういう薮の楽しみというか醍醐味というか(;´∀`)
 作業道跡を適当にトラバースしていくと広々とした伐採地へ出て薮からは開放された。

下ると薮が濃くなり 廃作業道なども利用してトラバース 伐採地へ出た

 最後は幅広の作業道を辿って鞍掛峠のある旧道へと接合。往来が閉ざされたアスファルト路は落ち葉が敷き詰められた静かな佇まい。足元を見ると野草の種がこびりついていた。かくして種子は動物によって運搬されるのである(笑)

  やがて旧道鞍掛峠付近へ接合 種の運び屋と化す

 車道の向こうに伸びるアスファルト路(一般車通行禁止)を伝い、栗谷無線中継所へ到達。無線塔裏手からは正面に今しがた歩いてきた鞍掛山がどっしりと構えている。この周辺も最近伐採されたようで丸裸になっている。景色が良いのは歓迎だがいつもながら斜面が丸裸になっている姿は悲しくもある。

 無線中継所浦の連絡路終点から右手の尾根筋に入ると今日の後半戦スタートだ。

栗谷無線中継所から正面の鞍掛山 右手の尾根筋に入る 落葉の小ピーク越えは良いね

 最近の鞍掛尾根の人気も、流石にこの稜線には届いていないようで静かな山歩きとなった。人気ルートだと人に会わなくとも靴跡などに多数の気配を感じる事があるが、落ち葉も手伝い道形も踏み跡も無い実に静かな山行、珠玉のひと時を楽しむ晩秋の里山歩きである。

名付けることもなかろうに 晩秋の里山を愉しむ  

 西側にちろちろと日光の景色が見え隠れする。今日のルートは眺望はほぼ期待していなかったので少しでも景色が見えると嬉しいもの。

かろうじて男体山 そしてファミリー どんどん行きます

 池ノ鳥屋で休憩していると、麓のグラウンドから学生たちの元気な声が流れてくる。里の営みとどことなく繋がっているのも里山歩きの味わいと言ってよいだろう。

 ピークから戻りルートに再び乗ると、この山行にふさわしい地味な紅葉が行く手に彩りを添えていた。

池ノ鳥屋直下の大岩   ふさわしい地味な紅葉

 起伏の少ないこのルートで唯一急登と言えるだろうか、池ノ鳥屋から高度を下げてから100mの登り返し、493mP手前の巨岩脇は動物達もヒトも一緒に岩の脇を巻いている。此処だけは踏み跡がはっきりしていた。

 岩を巻いている最中、背後より枯れ葉を踏む複数の足音が聞こえた。振り返るとトレラン風の若者がこちらへ向かってくる。今日は流石に誰にも会わない筈と思っていただけに意外である。俊足な彼らはあっという間に追い抜いていき、周囲に再び静けさが戻ってきた。羽黒山手前は緩斜面の薮だが、落ち葉の無いこの区間は道形もはっきりしているのでこれを追うと羽黒山へと到着した。先ほど声が聞こえていた若者達は既に半蔵山方面に行ってしまったようだ。

巨岩を巻く踏み跡濃し ザクザクと薮を歩いて 羽黒山へ到着

 羽黒山のシンボルとも言える巨大な石祠の前で菓子パンを齧って小休止。今日は山ご飯の予定はないので行動食で済ませる。思えば今までの山行で初めてかな。いつもはこの時期にはカップラーメンとコーヒーが定番なのだが。

 前回、羽黒山を通過した時に巨大石祠が向かう先、すなわち田口集落に伸びる道を確認していた。これだけ大きな石祠があるならばきっと参道として南に道が拓かれていても不思議はないだろう。いつかこれを辿ってみたいと思っていたのだ。

 踏み跡は案外濃く、所々にピンクリボンもあり迷うことは無い。GPSに落とした尾根通しのルートとも完全に一致している

高さ2m半以上もある大きな石祠 今日は石祠の向かう先に下降する 途中も岩が案外多い

 下から比較的新しい作業道が伸びてきている。外観からは容易に計り知れないが、やはり里山の主役が林業であることを改めて確認することが出来た。

 更に高度を下げると灯籠まであつらえた二基の石祠に出会う。唐突なその場所の下には『男體山』と紅く彫り込まれた大きな石塔があった。これだけでもびっくりなのに、何も無いだろうという勘ぐりを覆す光景を次に見る事になる。

比較的新しい作業道があった 石祠2基、灯籠もあった 高さ2m位の巨大な石塔

 背後に何か気配を感じた。動物ではない。針葉樹の中に怪しく光る白い絶壁。振り返るとそこには垂直の露岩が切り立っていたのだ。

 かつての石切場なのか。自然にかたどられたもので有るならばこんなに珍しいものは無い。だが、先程から見られた幾多の石祠を考えれば、人間が掘ったものだと考えるのが妥当なのだろう。

 以前、男抱山の北面エリアで大谷石の廃採掘場を見たことがあった。その場所は大規模な立坑や放置された重機の片鱗やワイヤーから近代の採掘場跡であることは容易に解るが、ここはどうなのだろう。真偽の程は謎である。

脇の碑文 少し離れた所にも石塔が 高さ20m近い垂直の露岩が

 いよいよ高度が下がり、脇のゴルフ上でプレーするショット音などが聞こえてくるようになると背の高い薮をくぐるようになる。そしてその先にはいつぞやオフロードバイクで偵察した墓地が見えてきた。想像通りのドンピシャルートである。

天気晴朗 最後は薮 遠くにお墓が見えてきた

 最初の墓地を突っ切るように進むと、下る道すがら続けて左右に墓地が点在。羽黒山から伸びる稜線上の掘削地、生活の糧ともなった岩に込められた里の人々の想いが麓のこの場所に墓を集めたのでは、と考えるとどこか納得のいくように思えた。

 思いがけない収穫のあった山行に満足した帰路は、里に実る柚子にもまた初冬を感じる心地よい里山逍遥となったのである。

田んぼへと出た 柚子が鈴なりだ  

概略コースタイム

駐車地発(08:04)-鞍掛山登山口(08:28)-岩コース尾根コース分岐(08:44)-鞍掛山大岩(09:17)-峠の車道(09:50)-
無線中継所(10:02)-栗谷420mP(10:18)-池ノ鳥屋(11:00)-羽黒山(11:51)-石祠群(12:15)-舗装路へ接合(12:39)-
民家で行止り(13:03)-駐車地着(13:28)

カシミール3Dデータ

沿面距離:12.8Km
累積標高差:(+)997m (-)993m
所要時間:5時間24分

カテゴリー: 宇都宮の山 パーマリンク

想い出の鞍掛山から信仰の山羽黒山へ への10件のフィードバック

  1. リンゴ のコメント:

    シーズンに向けてのトレーニングとは言え、目的を持った素晴らしい山行でしたね。
    特に鞍掛山大岩から鞍掛峠へのルート取りはお見事。
    以前、半蔵山~羽黒山を歩いたのが懐かしく思われました。

    • まっちゃん のコメント:

      鞍掛山から鞍掛峠は懸案だったので、無事遂行できて達成感がありました。
      今ひとつトレースが綺麗ではありませんでしたが、あの急斜面では流石にこれが
      ベストだったかもしれません。
      赤岩山から半蔵山までの一気通貫をいずれかと考えているのですが、
      日の長い季節になると今度は暑さとの戦い。
      人一倍暑さに弱い自分にとって悩ましいものです。

  2. 亀三郎 のコメント:

    こんばんは
    岩ルート!
    亀家は、かつて下山で使いましたが 
    登りで使うのは嫌だ!と思ったルートの一つです 笑
    わたしも がんばって たやすいと言ってみたい、、、
    けど、、、キホンの体力が欠けているので
    無理っぽいっす (T_T)

    PS なんだか うちは、、、自然とオフシーズン入りしたような??
       いや、、、
       朝が寒くても
       頑張って出掛けないと、、、
       と、、、
       こんな雰囲気です ドテッ

    • まっちゃん のコメント:

      この数日急に寒くなってきましたね。
      車通勤なのですが、車内の寒さに我慢できずに昨日からコートを着だしました。
      駐車場から会社まで5分くらい歩くのですが厳冬期は結構辛いです。

      これが山だとどんなに寒くても平気なので現金なものです(笑)
      岩ルートは自分もトラウマでしたが、今回はようやくやっつけることが
      出来ました。

  3. ケン坊 のコメント:

    おはようございます。
    タイトルを見たときは”びっくりぽん”でした...
    鞍掛山から羽黒山って飛んでもないコースを歩かれたと
    思いながらマップを見てたら、同じ”羽黒山”という名の
    山があったんですね~(旧:河内町)と勘違い>笑<
    鞍掛峠へのルートなんて考えたことも無かったので、改めて
    古賀志山や鞍掛山周辺のマップで確認しながら読みました。
    でも標高は辛うじて載ってましたが、残念ながら山名までは
    載って無くて、想像しながら一緒にあるきました。
    楽しかったです...ケン坊単独では無理なので>苦<

    • まっちゃん のコメント:

      羽黒山って結構紛らわしいですよね。
      宇都宮近辺だったら99%上河内の羽黒山だと思いますよね。

      鞍掛山から鞍掛峠への下降は、ネットの記事でどこかの山岳会みたいな人達が
      降りているのを読んだことがあって、自分も鞍掛峠にオフロードバイクで赴く度に
      上を眺めては「どうやって降りるんだろう」と懸案でした。

      ちなみに鞍掛峠から羽黒山さらに半蔵山まではこれぞ里山といった趣のルートに
      なります。もし、お仲間でそういう企画があがるなど、何かのチャンスがあれば是非
      一度歩かれると面白いと思いますよ。

  4. 野球親爺 のコメント:

    岩コースは初めて鞍掛山に登ったきり歩いていません。あまりにも急だった記憶があります。
    山歩き初心者の頃だったので余計に急に感じたのかも知れませんが、その時にもう歩かないぞと思いました。
    鞍掛山から鞍掛峠へのルートはまっちゃんさんの歩かれたのが一番よさそうですね。私は適当に下って岩を微妙に避けて下りたような気がしますが、市境の尾根が結構顕著に見え、そこを下りればよかったとその時は思いました。
    そろそろ古賀志山界隈を徘徊する季節になります。

    • まっちゃん のコメント:

      野球親爺さんも岩コースで似たような思い出をお持ちだったんですね。
      自分は始めての栃木の山だったので、デビュー初戦でノックアウトといった
      感じでした(笑)

      やはり市境尾根が狙いめでしたか。
      藪があったとしても、元来境界を設定するということは測量とか杭打ち
      とかで作業した可能性があるの往来の可能性は高いかもですね。
      また機会を見て、今度は下から市境を探ってみたいと思います。

  5. omuraisu のコメント:

    はじめまして、omuraisuです。メタボ宣告を受けた去年の夏から里山歩きを始めました。まっちゃんさんのブログには時々お世話になっています。歩き始めたころの秋の終わり、ろまんちっくに車を置き、男抱山・半蔵山から鞍掛峠に行こうとして、作業道に惑わされて道に迷い、羽黒山を下りてしまったことがありました。そのとき、立派な石柱があって信仰の山だと実感したこと、林道の出口が農家で若い人が作業をしていたことを思い出しました。新里の羽黒山は、新里街道から見ると、稜線がいい感じに突き出ていて、温かみを感じます。まっちゃんさんのブログは、読みやすいですし、写真も多くて何より丁寧です。これからも更新を楽しみにしています。どうぞ、よいお年をお迎えください!

    • まっちゃん のコメント:

      omuraisuさん。はじめまして。

      拙ブログへのご訪問&コメントありがとうございます。
      まず始めにお詫びしなければならないのは、システムの誤作動でコメントが4日間の間反映されなかったことです。大変失礼いたしました。

      羽黒山から南への下山路は里山ならではの情緒があって良い雰囲気でしたね。
      自分も大きな石柱を見た時は宝物でも見つけたような気持ちになりました。

      山歩きを始める前は自分もメタボでしたが、最近はやっとウエストのサイズ上(だけ)では脱出した感があります。
      山歩きは身体の健康だけではなく、心の安静にも繋がるので体力があるうちは続けていこうと思っています。

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