-『スーパー地形』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
9月下旬から暑さもようやく収まり、待望の車中泊遠征の季節がやってきた。
夏の間からプランを何通りか組んでいて、あとはどう実行するかだが、肝心の天気がすぐれない。二週間予報を眺めても晴れマークは皆無。延々、曇りと雨が敷き詰められている。
雨に降りこまれた時の車中泊は厳しい。キャンピングカーやハイエースならばそれなりに暮らす事も可能だが、
ほぼライトバンを乗用車にした程度の我が車だ。夜以外は車外での生活が基本になるのだ。
退職以前に思い描いていた自分の車中泊のイメージは、登山中心より観光から一歩踏み込んだような見聞を愉しむ旅であった。でも、最近はすっかり登山がメインになってしまい、
合間に”旅要素”を盛り込むようになってきた。まぁ、体力の続くうちはこんな山旅もよかろう。体力が及ばなければ山を軽くすればよいし、
当初思い描いていた旅に還るのも良いだろうと思うのだ。
もう一つ思い違いしていたことがる。
47都道府県をすべて自分の車で車中泊で巡るという野望。
今までの車中泊経験に照らし合わせると、これはかなり困難である事に改めて気づいた。
キャンピングカーなどを入手するなどのハード面の充実を図れば可能性も出てくるが、糸の切れた凧のように自宅を長期間離れて行動するのは諸般の事情からしてなかなか難しい。
車中泊ですれ違った人から「もう一か月も車でさまよってます」なんていう話を聞くとやはり人生の価値観や置かれている境遇がどこか違うのだなと思うのだ。
さて、今秋一発目の車中泊遠征だ。
結果的には遠征とはならず、二泊三日で登山一日。要は行くのに一日、登山一日、帰りに一日と移動コスパの著しく悪い遠征となった。
10月1日(火)
登山口である大弛峠への道は栃木から大変遠い。下道で8時間あまりかかった。北側の川上村からの道もあるが、非舗装の悪路で
推奨されないらしい。一方、南側の塩山からの林道は舗装はされているものの、すれ違い困難な箇所が延々と続く山岳林道を最寄りの集落から一時間ほど走ることになる。
加えて、大弛峠を起点とした金峰山
は人気が高く、駐車場は平日でもすぐに満車になるらしい。休日は可能なところに路駐となるが、それも狭小な道幅故に限られている。登山を断念するケースもあるとか。
今回は平日のしかも夕方入りだから止められない心配はないが、いざ現地入りしてみるとすでに車中泊モードの車が数台。全般的に傾斜が強い駐車場なので、
本来は車中泊向きではない。良い場所はすでに陣取られていた。かろうじて許容範囲の箇所に止めるも、今度は携帯の電波が入らない。
ギリギリ、トイレの前は電波が来ているのだが、そこは左右傾斜が強くてとても寝られるような場所でないのが残念。ネット漬けの生活をしていると不便だが、
こればかりは致し方無し。持ってきた本が進んだのはいうまでもない。
宇都宮からの長距離ドライブの疲れを癒すには十分な気温の低さと静けさ。夜半に車が入ってくる音に目が覚めて
トイレに行くと、あらかた白線がある駐車スペースは埋まりつつあった。
今晩の食料調達のベルク 武甲山は秩父の街のシンボル
雁坂トンネルを通過した先にある道の駅みとみ 雁坂峠、破風山への登山基地でもある いつかここに泊る日もあるだろう
長い長い林道を走り抜けやってきた今日の泊地 大弛峠 既に標高2,365m 涼しさは約束されている
残っている車は自分も含め車中泊組 このあと続々と増えて翌朝6時頃に満車
夕暮れと共にガスが忍び寄ってくる
明日の予報は快晴 期待に胸ふくらむ
10月2日(水)
台風17号が通過した影響は昨日まで少しあったようだが、今日は予報も天気図も絶好の登山日和。タイミングを粘った甲斐があるというものだ。明け方、
顔が冷たくてシュラフに頭から潜り込んだ。起きて温度計を見ると最低気温が9度くらいまで下がっていた。
日の出時刻を過ぎると周囲の人達も続々と行動を始めた様子。自分も車内で着替えを済ませてシェードを外し、快晴の空が照らすまばゆい光を入れる。
お湯を沸かして摂る朝食ももどかしく、登山靴を履いた。
爽やかな朝がやってきた まずは金峰山目指して出発! 道は終始歩きやすい
高度を上げると一部立ち枯れ区間 明るく日が差し込み足取りも軽くなる
金峰山への登山道は序盤こそ若干の急登気味だが、とにかく歩きやすい道で危険個所や泥濘もない。最近歩いた登山道の中では最上級の歩きやすさでないだろうか。
休日に沢山の登山者が訪れるのもうなずける。まだ経験の浅い人や子供連れでも安心して勧められるルートだ。このあと絶景が出てくるが、ルートの難易度と得られる眺望の
良さというコスパを考えるとかなりのものだろう。
八ヶ岳同様、こちらもコケがたくさん 柄にもなく撮ってみたが今一つ愛が感じられないかな😅
朝日岳手前の好眺望地より
朝日岳から一旦下るところで金峰山と五丈岩が姿を現す
対峙感が良い!
鉄山は訪れる人も少ないようで道は少し荒れ気味 帰りは巻いた
味のある山名板 ”くろがね”と読むそうだ
樹林帯歩きも、しっとりした感じで良い雰囲気だが、森林限界を超えた賽河原で状況は一変する。眺望が一気に拡がり八ヶ岳やアルプスが連なる。
眼下にはところどころに花崗岩が露出した異形の山塊、とりわけ瑞牆山の姿に視線が奪われる。ここから山頂までは気持ちの良い稜線歩きとなる。
賽河原で空が広がった
八ヶ岳
右手前がかの有名な瑞牆山なのか?
アップ 凄い迫力!
金峰山まではあと少し
山頂直下は大きな岩が重なりあって道を失った。というよりも前の人の後を追っていっただけなのだが、慣れない人は唯一注意が必要な箇所化もしれない。
無理やり岩を伝っていけばなんとかなりそうだったが、一旦少し戻ってルートに復帰。狭い山頂の向こうには、五丈岩の神秘的な姿。そして遥か先に富士山が浮かぶ姿もなかなか素晴らしい。
絶景だ。
山頂は岩ゴロ上にあって休憩には適さない
少し下った先にある五丈岩が威容を放つ
岩が富士山に正対するという神秘的な姿
ルートがあって登ることができるらしいが、登攀に心得のある人以外は「命あっての物種」 眺めるだけなら安心安全😆
山頂南端からの富士山は秀逸
手前が鉄山、左上に朝日岳、右奥が国師ケ岳方面
復路、北側眺望
賽河原で動画撮影中の登山者
一帯に露出する花崗岩が独特の風景を醸し出している
秋の訪れを一枚!
大弛峠まで戻ってきた 反対方向へ第二ラウンド すぐ上の大弛小屋のソフトクリームが気になる
金峰山までの登山道が思いのほか快適だったので、反対側の国師ヶ岳は油断していたが、こちらは階段地獄が延々と続いた。
山頂部への標高差は250m程度。一気に登り詰めるルートなのでむしろこちらのほうが登山としては普通なのだが、やはり階段は精神的に堪えるものだ💦
ジャーーン!立派な階段がこのあと延々と続く😱
階段ゾーンが終わって北奥千丈岳のたおやかな山頂が姿を現わす
通過点の前国師岳
そして国師ケ岳 遠景はガスでふるわず
そして最後のピーク 北奥千丈岳
先着一組の静かな山頂。南側眺望はガスに覆われ富士山の姿はもうない。しかし、金峰山へ向けて歩いた稜線が見渡せる。遠目にも屹立する五丈岩の姿。
ここを歩いてきたのだという満足感に浸りながら、軽い食事をとって下山の途についた。
相対する金峰山と五丈岩 大した距離ではないのだがずいぶん遠くに感じる
遠くから見ても五丈岩は神々しく感じる
景色も堪能した 名残惜しいが下山にかかろう
下りの階段は膝にくるので慎重に
登りはパスした「夢の庭園」ルートで下る 開放感があり眼下に大弛峠の車が見えた 左奥が朝日岳だろう
13時の時点、出る入るでまだ満車
これから頑張って自宅に帰ることも可能だろう。高速を使えば5時間くらいで済むかもしれないが、基本的に疲れた体での運転はあまり好きではない。
明日仕事の現役世代には申し訳ないがもう一泊する。塩山郊外で食料調達をして二時間ほど走った彩甲斐街道 出会いの丘
を今日の泊地とした。
山峡に挟まれ標高が1000mを超えていること、国道から少し奥まった箇所にあること。トイレは24時間利用できるが、自販機も無いような駐車場なので利用者が少なく静かさが期待出来る。
車中泊者が情報を寄せるサイトでも好評な場所だ。適度に賑わいがある道の駅が好みな方には向かないが、自分には三ツ星ならぬ極上の駐車地であった。
大弛峠より二時間ほど走ったところ、今日はここを泊地とした
静かな駐車場に、ゆっくりと夕暮れが近づきつつある
今日は本当に良い天気だった
10月3日(木)
好天は昨日まで。明けて翌朝、昨日と同じ起床時間にしては車外が暗い。外に出てみると朝焼けが東の空を照らしていた。曇に覆われていたせいか、
一晩中気温は20度程度で変化は無かった。湿度が高くて今一つ快適と言い切れる夜ではなかったが、静かさはピカ一。
山中から聞こえてくる動物の鳴き声に癒される一晩を過ごすことができた。こういう上質の車中泊を経験すると、街中にある道の駅でトラックのアイドリング騒音や
隣に止まった車の人の傍若無人ぶりなどに悩まされて過ごす夜は出来るだけ避けたいと深く思うのだ。
長い長い山あいの道、通称「彩甲斐街道」。文字通り彩の国と甲斐の国を結ぶこの道。一時間以上も走ってようやく人里に差し掛かれば、登校する小学生の列、信号待ちのハンドルを握る通勤者、
いつもの朝が流れている。登山一日だけのプチ遠征であったが、自由の身で旅が出来るのはつくづく幸せなことだと思う瞬間だ。渋滞などもなく、正午前には無事自宅に帰着した。
明けて翌朝 奇麗な朝焼け、今日から天気は下り坂
国道から奥まったこの駐車場で静かな一夜を過ごすことが出来た さぁ、宇都宮へ戻ろう
概略コースタイム
駐車場発(06:16)-朝日岳(07:27)-鉄山(08:01)-賽河原(08:21)-金峰山(08:37)-
五丈岩(08:43)-賽河原(09:16)-朝日岳(10:11)-大弛峠(11:08)-国師ヶ岳(11:58)-
北奥千丈岳(12:16)-駐車場着(13:03)
カシミール3Dデータ
沿面距離:11.7Km
所要時間:6時間47分
撮影使用機材
・NIKON Z50
・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR