疲労困憊の黒檜岳


-『スーパー地形図』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
-※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

黒檜岳の過去の記事
    2020年10月28日  9年ぶりの中禅寺湖南稜
    2011年09月16日  中禅寺湖南陵を歩く
関連山行
    2023年11月01日  社山周回
    2013年11月23日  中禅寺湖、大日尾根 上野島ルートで社山


 6月から基本的に山から遠ざかる生活を始めるつもりだ。特に差し迫った理由がある訳でもないのだが、まず暑いなかの行動が耐え難いのが一番だ。

 天気予報を見ると、台風一号がやってくる直前の晴れ間。5月の締めに歩いてこようと思い、春季は初めての中禅寺湖南稜を伝い黒檜岳を登ってきた。

 中禅寺湖南稜へのアプローチは社山経由ではなく、阿世潟北方にある尾根(巷ではショートカットルートと呼ばれている)から取り付く。

 社山北側の尾根に乗るには五つのルートがある。松ヶ崎から、大日崎から、上野島側岬から、そして比較的よく歩かれている今回の阿世潟北端から取り付くショートカット尾根、最後は社山を越える登山道だ。11年前は上野島側岬から登り、昨年はショートカット尾根を登っている。この取り付き尾根は大変な急登なのだが、二度目にも関わらずどうも学習していなかったようだ。

 ショートカット尾根は藪もなくすっきりとした気持ちの良い尾根だ。だが、とんでもなく急登でもある。この取り付き尾根を登りきり、黒檜岳へ走る稜線に乗り換えると、しばらくは緩やかな区間が訪れる。だが、二度目の急登で再び体力をそぎ落とされる。踏み跡も少なくグリップに力を使い、前傾で登り続けるので結構な体力消費となるのだ。

 社山を越えていくより楽かなと単純に考えてこのルートを選択したが、結果的には急登区間にアキレス腱が伸び切り、いつにもない疲労感を感じる歩きになった。


早朝の華厳の滝脇市営駐車場 帰りはここまでバスで戻る
停まっていた車数台は県外ナンバー 山か釣りか


社山、中央ピークと社山右手の小高いピークが今日の序盤ルート 社山は登らない


阿世潟手前地点から いつもの逆さ男体山 逆光で滲む光線 釣り人は阿世潟あたりまでも沢山いた


中禅寺湖の水も大分回復してきた様子 上野島の途中も水没復帰したようだ


尾根取り付き末端 さぁ、行きましょう

 先ほども掻いたが、この尾根は昨秋は紅葉の中登った。その時は周回して社山から下山するだけだったので、ゆっくり登ったからなのか、やはり急登はきついと記録していたが今回はやけに辛い。噴き出す汗、伸び切るアキレス腱。今日のこのあとの長丁場に耐えられるだろうか。


踏み跡無き急登急登!アキレス腱が伸び切った💦


ご褒美の緩やかな尾根に癒される


社山の山頂が左手に小高い

 今年はもう白ヤシオは諦めていた。僅かな花を求めて登ることも可能だろうが、潔く今年は諦めようと思っていた。ところが途中でちらほら咲くシロヤシオを発見。初めて山でシロヤシオを見た時のように感激。


シロヤシオ発見!今年初めて見る実物に感激


少し痛み始めているがそれでも充分綺麗だ

 三度目の中禅寺湖眺望点に到達する。ここは良いところだ。この先の稜線歩きでも何か所か中禅寺湖方面を見ることが出来る箇所はあるが、自分的にはここがベスト眺望だと思う。写真は掲載しなかったが、カメラを右に振ると大きく男体山。少し枝が邪魔するのが玉に瑕。


中禅寺湖眺望地点へ到達 今回が三回目だが眺望が素晴らしい 白錫尾根が悠々と横たわる


正面の逆さ高山


黒檜岳分岐通過 気分的に第一区間クリア


黒檜岳へと向かう稜線歩き開始


足尾煙害で荒廃した山にも樹が戻りつつあるが、豊かな山に戻るにはあとどのくらいの時間が必要なのだろうか

 以前と比べると格段に道型は濃くなり迷うことは無くなっていた。以前は時折深い笹薮に閉ざされ道を失い藪漕ぎを強いられることもあったが、今回はそういったことは全くない。笹を見ると全てシカに食べられた跡があり、煙害に苦しんだこの山域を次はシカの食害が蝕みつつあるという事実に悲しさを禁じえない。


13年前にここを歩いた時は腰高の笹薮で道を失い迷った 鹿の食害が新たな山の危機を呼び起こしている






振り返って社山


登山者発見(画像中央に二名) 後刻、黒檜岳で会った女性二名 この先にも単独者一名を視認


黒檜岳の山体が間近に見える 廻りこむようにしていくのでまだまだ遠い


突然シロヤシオの群落出現 先ほどの場所より沢山の木で咲いているではないか


白根山をバックにして


よくぞ咲いてくれていた!




南東方面


荒涼とした松木渓谷 中倉山


来た道を振り返る




右奥の黒檜岳に向かって稜線はまだまだ続く


袈裟丸山塊から皇海山への稜線 中倉山の先に庚申山が聳える


再度来た道を振り返る 社山からの距離感を感じるアングル




一旦、癒しの平坦地を通過


左奥、大平山は今日疲労の為パス

 稜線自体は大きな上り下りが無いが、序盤の取り付き尾根急登ですっかり消耗してしまった。最近にないレベルの疲労でちょっとした登りにもすぐ息があがる。山を始めた頃はしょっちゅうこんな感じで歩いていたなと、ちょっぴり懐かしくなった。だがこの稜線は眺望が終始良いので気持ち的には楽。吹き抜ける風も涼しいを通り越して少し寒い位だ。暑がりの自分には丁度良い。

 大平山を左に見て分岐まで到達すれば、あとは黒木の森の中にひっそりと佇む黒檜岳の山頂を踏んでと下山となる。ここまでくれば山頂までの僅かな部分以外登りはもう無い。ようやく、ほっと胸をなでおろした。


大平山へはここを直進するように進む
今はしっかりとした道型があるが、以前は腰高の笹薮漕ぎで進んだ ここもシカの食害だろう


黒木の森へ入ると眺望ともお別れ


一つ目の山頂(最高標高点)  黒檜岳は二か所に山名板がかかっている 共に眺望は無い


こちらは二つ目の山頂 最近失われつつある山部さんの山名板がよく似合っている 上の板も朱色が良い


森の中は目印を外さないように慎重に


下山路にシャクナゲがいくらか咲いていた ベストでこんな感じ


長い長い急な下りの末ようやく中禅寺湖に降り立つ まずはほっと肩の力を抜く


今日は疲れているので群生地はパス でも、周辺に咲いているクリンソウも充分に綺麗だ






台風接近の影響か? 徐々に天候は下り坂のようだ

 いつにもない疲労に傷心し、千手ヶ浜から低公害バスに乗ってしまおうかと悩む。だが、浜でしばらく男体山を眺めていたら幾らか元気が出てきた。さぁ、竜頭の滝バス停を目指そう。


歩いて来た稜線にもガスが掛かり始める


熊窪の砂浜も湖面の色が冴えないといま一つ


周遊道は元気なヤマツツジが色を添える



 中禅寺北岸周遊道は至って穏やかな道。時折、見事なヤマツツジがあたりぱっと照らすように現れる。すっかり疲れ果てた体に励ましを貰う。
 終盤、赤岩直前の登り返しは後からやってきた年配の方に追い抜かれた。もう無理はしない。あとはバス停までいけばそこがゴール。2024年春の歩き終いに相応しい、体はボロボロだが気持ちは爽やかになれた一日であった。

概略コースタイム

県営駐車場発(05:31)-歌ヶ浜駐車場(05:50)-阿世潟北の尾根取付(06:57)-一本目急登終了(07:37)-
二本目急登開始(07:57)-二本目急登終了(08:25)-中禅寺湖方面展望地(08:30)-社山黒檜岳分岐(08:42)-
シロヤシオ開花群生地(08:59)-大平山分岐(10:27)-黒檜岳最高標高点(10:47)-黒檜岳(10:51)-
中禅寺湖畔へ(12:37)-千手ヶ浜(12:52)-熊窪(13:26)-赤岩(14:04)-竜頭の滝バス停(14:34)

カシミール3Dデータ

沿面距離:22.8Km
所要時間:9時間3分

撮影使用機材
・NIKON Z50
・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR

カテゴリー: 日光の山 パーマリンク

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