群馬遠征第一弾の二日目


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-

 本来の群馬遠征計画は一周間を予定していたが、一つ前の記事でも書いたように車が修理中では車中泊は望めない。そして仕事にも穴はあけられないということで、行程を刻んだ計画のその第一弾の二日目だ。

 今日の計画は榛名山の外輪山である二ツ岳と相馬山である。二ツ岳は南に風穴の多いオンマ谷を擁し、雄岳、雌岳そして孫岳の三つ目の姿を地図でを眺めていて是非訪れたいと思っていた山だ。また相馬山は見る方角によってはイルカの頭部のようなユーモラスかつダイナミックな風貌を持っている所に惹かれた。

 はばかるように足音を潜め、夜明けの部屋に戻る酔っ払いの宿泊客達。彼らがいびきを立て始めた頃、自分はベッドから起きて支度を急ぐ。安普請だから、いろいろな物音が隣室の御仁の迷惑にならないかとひやひやしながら準備を終え、ホテルを出る。外は明るく優しいい春の日差しが降り注ぎ、心も軽やかにエンジンを始動させた。

 ホテルから榛名湖まで約40分のドライブ。ロケーション的には伊香保温泉に宿をとるのが妥当だが、やはり観光客単価の所しか空いていないのでこれは仕方がないさ。

 オンマ谷駐車場は鬱蒼とした木々に囲われており、朝の日差しはまだ充分に届いていなかった。
 休日はそれなりに賑わいがあるというが、平日、しかも朝7時では誰も居ないのは頷ける。念の為に熊鈴を腰に下げて出発した。


オンマ谷の朝 日差しが充分に届かない鬱蒼とした雰囲気に包まれている

 実はオンマ谷という名前にもかなり興味があった。オンマは韓国語で「おかあさん」という意味であり、どうしてもそのことが頭から離れなかったのだ。
 登山道にあった掲示物の説明では、「御馬谷」であったり、相馬山が「総魔山」とも伝えられていて、硫気を含む谷なので「御魔谷」と言われたという説もあるということであった。


樹間を通して相馬山岸壁の迫力が押し寄せてくる


火山の隆起と冷却の過程で山がそして岩が砕けたということらしい

 序盤の湿っぽい谷筋を抜けると乾いた岩が露出する登山道に変わり、それまで緊張していた心持が緩む。湿っぽい谷というのは往々にして、何か生き物が潜んでいるような気がする。事実、里山の暗い谷筋は猪のねぐらがあったりするのを何度も目撃しているからだ。こういった場所になるといつも熊鈴を鳴らすだけではなく腰に下げているホイッスルを鳴らし鳴らし通過するようにしているが、今回も例外ではない。谷の動物達はさぞかしうるさかったであろうに。


気の利くスプレー書き


屋根があるだけだから降雨程度しか避けることは出来無さそうだが


そして雌岳山頂へ

 雌岳山頂からの景色は素晴らしく、眼下の水沢山の特徴的な山姿が我が目を捉えて離さない。水沢山のこのピラミダルな雰囲気は、水沢うどんを食す為にバイクツーリングでこの地にやってきた時にいつも感じていたもの。いつの日か必ず登ってみたいと思っていた山だ。残念ながら今回は予定に入れることが出来なかったが、こうして上から俯瞰するように見るとますますもって山頂を踏みたい気持ちがかきたてられる。


オウム貝の背中のような水沢山 そして遥か向こうに赤城の山並


雌岳より雄岳へ向かうコルの部分 左下の小石のような岩でさえ50~60cmはあろうかという大きさだ

 標高差100mを下り、再び100m登り返す雄岳だが、山頂手前には立派なTV送信所がある。山頂から麓まで、北斜面に線状帯のように電線を通すために削られた部分が少々痛ましい。入り口のプレートを見ると、群馬テレビ(株)のTV送信所、前橋デジタルテレビ中継局、榛名山FMラジオ中継局、多くの機能を担っていることが判る。


雄岳の山頂脇には立派なTV送信所がある


雄岳山頂より榛名富士 後ろに浅間山がちらり


いま一つ霞がかかっていてクリアでは無いが、肉眼では結構綺麗に見えた


烏帽子ヶ岳 地形図に描かれているまんまの岩稜帯が凄い迫力


TV送信所隣の岩に登るとこちらも眺望よし 手前は雌岳


そして・・・ 相馬山大岩壁の雄姿も余すところなく眺めることができる

 オンマ谷駐車まで戻り、二ツ岳の下山は終了。一旦車を松之沢グランド駐車場へ移動させる。相馬山へは松之沢峠側から北東へ尾根通しで登る。下山はヤセオネ峠へ降り立ち、そこから車道を引き返していくというルートだ。歩き始めるとすぐに、コブのような磨墨岩から相馬山への稜線が見渡せるが先はまだ長い。


磨墨峠より磨墨岩から相馬山への稜線 こちらから見る相馬山も特徴的な形をしている


稜線にはこんな穏やかな区間もある


磨墨岩を見上げると


やがて案内あり 3分はよく見ると「下り」とあるが確かにそうだった(笑)

 「スルス岩三分」に誘われて足を踏み入れる。こんなポコンとした岩ならロッククライマー専用だと思いきや、ちゃんと歩けるルートがあるのでありがたい。最後に短いロープ一本があり、そこをよじ登るとなんと先客の女性が居て挨拶を交わす。


磨墨岩は360度眺望


相馬山までの登りはまだまだ続く


ヤセオネ峠分岐からラストの急登
鳥居から先は登拝者の為のエリアである雰囲気が色濃くなる


途中、一気に高度を稼ぐ梯子が二か所ある(下山時撮影)


山頂になにやら建物が 後で調べると、奥社兼「お籠り堂」だということらしい

 相馬山は外見から感じるミステリアスさとは裏腹に山頂は完全に「講」の人達のもので、登山者にとっては肩身が狭いような雰囲気がある。日光の男体山に登った時も感じたが、なんとなく雑然とした雰囲気。人為的な不自然さから山頂のもつ爽やかさとか清冽さを感じ取ることが出来ない、そんないささか残念な山であったことは正直に付け加えておこう。特に建物裏に積み上げられていた何かの空き缶はいかにも興ざめであった。

 もっとも、その異形の山姿を信仰の対象として崇めてきた人々の為にも相馬山があるのはごく自然な事、相馬山を否定する気はさらさら無いことは付け加えておこう。


山頂到着 信仰の山なのは解るが、少し雑然とした感じもぬぐえない


山頂に立つのは黒髪山神社


勧進の石碑が囲う山頂


少し離れた場所に控えめに山名板があった


南向きの鳥居 下を覗くと急峻ではあったが修験者なら通りかねないようなルートっぽいものがあった


途中いくつもの鳥居を経て下山を終えた最後の鳥居には黒髪山神社と書かれていた


あとは約30分の車道歩きで駐車場に戻る 往来する車も少なく長閑


磨墨岩全景


二ツ岳の雄岳、相馬山、磨墨岩


グランドは閉鎖中だが駐車場と併設のトイレは利用できる ありがたいことだ


折角なので水沢うどんで昼食とした


相変らずコシとのど越しの良い麺 やはり一味違うといつも思うのだ

概略コースタイム

<二ツ岳>
オンマ谷駐車場発(07:06)-まゆみの原(07:12)-七合目避難小屋(07:59)-雌岳(08:10)-七合目避難小屋(08:21)-
雄岳(08:36)-オンマ谷駐車場着(09:20)

<相馬山>
松ノ沢グランド駐車場発(09:33)-ジョーズ岩(09:47)-磨墨岩(09:58)-ヤセオネ峠分岐(10:29)-相馬山(10:59)-
ヤセオネ峠分岐(11:26)-車道接合(11:41)-松ノ沢グランド駐車場着(12:09)

カシミール3Dデータ

沿面距離:10.2Km
所要時間:5時間3分

カテゴリー: 群馬県の山 パーマリンク

群馬遠征第一弾の二日目 への2件のフィードバック

  1. リンゴ のコメント:

    代車での群馬遠征、お疲れ様でした。
    榛名山とそれを取り囲む外輪山の山容は遠くから眺めても特徴があり、何となく興味がありました。
    確かに山頂に建立された人工物には興ざめかも知れませんが、1度は登ってみるのもありですね。

    • まっちゃん のコメント:

      以前は軽自動車、しかも長距離には向かないパジェロミニであちこち走っていましたが、普通車の快適さに慣れてしまうと軽自動車のパワーの無さとか振動による疲労(最新の軽はだいぶよくなっているのでしょうが)が結構効きます。
      車の修理が上がってくるのが連休明けということなので、それまでに出来るだけ動こうかと思って行動してます。
      しかし、上州の山ってどこもかしこ尖がった感じがあって新鮮です。

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