御前山から井殿山、津室山、住谷山、赤沢富士


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

 御前山は以前から訪れてみたい場所であったが、春先から秋まではとても暑くて歩けそうにないので真冬しかないなと思っていた。最近は県東エリアに足繁く通っているので、それならばと思い立つ。ついでに付近の名前のついた山も踏んでみようと考えながら地図を眺めた。
 一つ一つのピークが独立しており、尾根通しでそれぞれの山を繋ぐことは案外難しそうである。縦横無尽に通っている車道や林道を避けて通ることは出来ないようだ。茨城の山はこのパターンが多いからここは敢えて逆らわず林道歩きもコースの一部と考えることにしてルートを決めた。

 駐車地は道の駅かつらの大駐車場。
 車を替えてからの山行は流石にひと気のない路側にポイと駐車するのも忍びないので、どうしてもこういった駐車ポイントを選択しなければならないのが最近の悩みだ。贅沢な話だが、こんな時はパジェロミニの機動力とお気軽さが懐かしい。


登山口は北にあるのでちょっと冷え冷えとしている

 那珂川大橋の手前から少し進むと立派な登山口があった。悠々とした登山道を進んで行くと、途中にかなりの樹齢と思しき大木を見る。


よく整備された登山道を進む 写真ではわからないがかなり大きな木

 ひとしきり登ったあとは傾斜が緩むが、山城の遺構なのか、なかなか複雑な地形をしている。


次々と違った地形が現れる

 有名な鐘撞堂跡に寄り道をすると、御前山では恐らく随一と思われる眺望が拡がっていた。見えているのは帰りに登る赤沢富士であろう。美林の山で良い被写体だが、自分の腕では逆光でうまくカメラに収めることかなわず。


道標も流石立派だ

 鐘撞堂跡では2人の男性が声高に談笑中。そして更に進む途中でトレランの人に追い越されたのが今日の行動中で唯一遭遇したヒトである。まだ時間が早かったせいなのだろうか。人気エリア故にいささか拍子抜けした。


あずまやから北の展望で一休み

 道が南北へと別れる。北へ降りれば青少年旅行村へと至りガイドブックのルートが完了する。
 ここは南へ向かう。途中から舗装林道歩きとなるが、分岐すべき目論見の地図の実線道には鎖ゲートが掛かっていた。


林道歩きの末、ここよりゲートを超える


関係者の車の往来は今もありそうな雰囲気

 暫くは鬱蒼とした林道を淡々と詰めていく。薄い藪が出てくるが問題無し。道が大きく右手に湾曲して尾根に乗り上げる場所で、流石に飽きてしまったから直登してショートカットだ。


林道が大きく湾曲する箇所をショートカットで直登してみる


登り上げると立派な林道

 立派な林道を暫く行くと崖地記号が地図に描かれている箇所を通過するようになる。林道脇には明らかに掘削した跡が延々見られ、かつてこの場所で林業が盛んだった頃の名残を感じる。
 地形図で道が途絶える少し手前あたりから段々と道が自然に還りつつあり、そして藪が煩くなってきた。


やがて藪の世界となっていく

 井殿山の西側は岩が剥き出しになっており、容易に近づけない雰囲気がある。山頂を巻くようにして回り込む踏み跡もいよいよ途絶える頃、若干手薄なポイントをがありそこから取り付いた。
 アプローチ箇所はザレていて掴む岩角も脆く気が抜けない。今日のルートでは一番の難所であったと言って良いだろう。


巻きながらポイントを探る


息を切らしてよじ登ったところが井殿山だ 山名板の類無し

 近年のネット情報では山名板があったようだが、見渡しても板の類は一切無し。
 少し先にあった廃屋は情報通りに健在だ。なんとなく寂れた雰囲気に包まれる中、先へと進む。


山頂の少し先に廃小屋


周囲の地面に露出する鉄の基礎 何が建っていたのかは知れず


明るい木立から幾らか景色もある 日差しが有難い

 井殿山から津室山間は一変して道型もしかっりして藪はまったくなくなる。北側にある光戸の集落から井殿山に登り、津室山に至るルートはネットでも散見されるため、踏み跡の濃さも頷ける。

 そして津室山もまた山名板の一切無い静かなピークである。井殿山と違ってこちらは三角点だから栃木の山なら放っておかれるはずは無いのだが、茨城のハイカーは他の山も総じて山名板に淡泊なようである。
 栃木のハイカーが固執しすぎていると思うのが正しいのかもしれないが、いずれにせよ傾いた三角点標柱を見ていると忘れ去られたような雰囲気を感じるのを禁じえなかった。


津室山もまた山名板無し ここで昼食とする

 津室山から北東の尾根への入り口を探すのに少し手こずった。ツツジの時期に歩いている記録も多いが、冬枯れの今、このありさまではやはり最近はめっきり廃れたルートなのかもしれない。


僅かだが笹道あり ここは道形がしっかりとしていた


一旦尾根を下り切った谷筋で作業道に拾われる

 再び薄暗い廃作業道を進み、続く舗装林道歩きも束の間。かたわらから延びる予定していた破線道跡はすぐに藪に飲み込まれていくのだ。今日は楽ちん林道歩きとばかり思っていたがなかなかそうもいかないらしい。


繋ぎの林道から破線道へ 藪のお待ちかね


足もとの道型はあるのでとにかく前進

 今日一番の藪区間。久しぶりに四つん這いで通過すること数度。やがて峠のような所で尾根に乗ればほっと一息。
 感心したのはそんな藪でも、時にはしっかりとそして時には儚げな痕跡でも道型が続いている事だ。地形図の破線も伊達じゃないなぁと実感した。
 こういう山をあちこち歩いてきて破線道の現存に懐疑的になっていた自分だが、そんな所を丁寧にトレースするという課題で歩くのも一興ではと思った次第だ。


峠のようなところから尾根に乗ると案外穏やかである


住谷山が見えてきた

 今日のルートは総じて標高差は大したことは無い。だが流石に距離を歩いて来たせいかいささか疲れが出始めた、住谷山の頂上部に立つ廃屋に到着。潰れかけた廃屋の中に本のようなものが散乱していたが、なんとなく正視しがたい雰囲気で目を逸らす。ここもまた忘れ去られようとしているかのようだ。


山頂手前にやはり廃屋があった

 三角点はと探すと、祠の少し先の低い個所に見つけたがやはり山名板は見当たらない。


祠のあるピークから少し先にひっそりと三角点があった

 計画では三角点から南東に下降する予定であったが、小さなしめ縄が掛かった先に明らかに参道と思しき道型があり、これを下る。やがて予定していた方角と収束し、計画通りに住谷の集落へと降り立つことが出来た。


しめ縄のかかった参道より下山する


住谷の集落へ出てきた


ゆずがたわわに実っている

 猫の子一匹はおろか、文字通り誰にも遭わずに集落を抜け赤沢富士方面へ延びる林道を進む。人家は点在するもあまりに人の気配が無く、ちょっと大袈裟だが人類滅亡の未来にタイムスリップしたような錯覚さえ感じてしまう。

 赤沢富士への最後のアプローチはきっと登山道があるのだろうとタカをくくっていたが、こちらは破線道のあるべき場所に一切の痕跡が認められず。少し先の歩きやすそうな場所を探して取り付き、植林と雑木の混合林を少し登るとすぐに道標が見えた。白山神社からの登山道に合流したようだ。


赤沢富士もどうやら裏口入山だったようだが、ようやく道標と出会う

 山頂方面に直登していく踏み跡もあったが、道型のしっかりした方を選び南西の尾根から登り上げた先が赤沢富士。本日初めて見る山名板であった。


いやぁ、本日初めての山名板


枝越しの東の眺望 でも海が見えるのが嬉しい

 山頂から僅かな下降で林道へ出会えばあとは延々とこれを下っていく。日を落とし始めた冬の弱い木漏れ日のせいであろうか、流石に林道歩きの足も重くなってきた。


長い林道歩きの末ゲートを跨ぐと・・・

 林道をゲートを跨ぐと不可抗力的に嵐山山水さんの敷地に出てしまったが、現在休業中のようで人の影は無し。ネット情報で既知の鉄の扉をそっと開けて外に出た。


嵐山山水さんの敷地に出てしまい、門をこっそり開けて出場


本日休業で良かった この奥が林道

 嵐山山水から少し先に(公式?)登山道の道標があった。果たして山頂からの下山路にこちらへ誘導する山名板があったかどうかは不明である。機会があったら是非確認してみたいものだ。


公式登山道は少し先にあったが、山頂からこちらへの道標は無かったような?

 長い長い今日のルートもやっとおしまい。道の駅に面するR123に出てようやく6時間半ぶりにヒトに遭遇するのであった。

概略コースタイム

駐車場発(07:33)-登山口(07:40)-鐘撞堂跡(08:10)-御前山(08:16)-あずまや(09:08)-林道ゲート(09:42)-
林道終端(10:17)-井殿山(10:31)-津室山(11:00)-昼食休憩-行動再開(11:35)-笹道(11:47)-
舗装林道接合(12:20)-古い破線道へ進入(12:23)-藪から解放されて峠(12:39)-住谷山(13:23)-
住谷集落(13:40)-赤沢浄水場(14:02)-舗装林道から山中へ(14:16)-白山神社からの登山道と合流(14:21)-
赤沢富士(14:35)-林道へ接合(14:48)-林道ゲート出て嵐山山水通過(15:17)-駐車場着(15:36)

カシミール3Dデータ

沿面距離:20Km
所要時間:8時間3分

カテゴリー: 茨城県の山 パーマリンク

御前山から井殿山、津室山、住谷山、赤沢富士 への2件のフィードバック

  1. リンゴ のコメント:

    自分の記録を遡ると2015年11月下旬にシーズン最後の紅葉を求めて御前山を訪れていました。
    関東の嵐山と称されるだけあって、那珂川に川霧の立ち込める雰囲気が素晴らしかったのを覚えています。
    歩いたのは御前山~赤沢富士のみでしたが、井殿山、津室山はツツジの季節が素晴らしいと聞いているので、一応ネタ帳にはメモってあります。
    どんなルートを選ぶのかを考えるのも楽しみですね。

    • まっちゃん のコメント:

      井殿山や津室山は確かにツツジの季節の山行記録が多いですね。
      あ、そうか。紅葉の御前山も良さげですね。
      どうも低山は真冬。という固定観念に固執してしまっている自分はちと反省です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA