西場富士、遠し!


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-

大小山の過去の記事
    2013年01月12日  大小山から大坊山周回

寺久保山の過去の記事
    2009年02月11日  廃れゆく里山 寺久保山

 寺久保山から大小山(妙義山)を経て西場富士へ抜けるルートについては、以前大小山を歩いた時に地形図を眺めていて面白そうだなと思いネタ帳入りしていた。
 西場富士からの下山後は延々と車道歩きとなるが、日曜日に休みがあるので多少の疲れも一興だろうと考え今回は自転車を敢えて使わなかった。結果的には登山開始が予定より1時間近く遅れてしまい、薄闇の田舎道をトボトボと疲れた体で歩く事になってしまった。やはりワインレッド号を連れて行けば良かったという反省になったのである。

 前日から天気予報や気象データをまんべんなく眺めていたので、好天は望めないことは予想していたが、昼には切れる筈の薄い雪雲が歩き始めに影響するかどうか、現地に行ってから中止を判断してもよかろうと車を走らせた。
 ワイパーに降りかかる早春の湿った雪は、南下を続けても時に強く、また弱くもなる。空の色は案外明るく雲は高そうだから未だ期待は残っている。途中のコンビニで改めてスマホで気象情報を確認して駐車地に車をつけた。

 基本的には高気圧配下の天気なのだが、気圧のヘリから雲が流れ込んでくる典型的な高気圧曇り。日中の雨の心配は無さそうであるし、今日のルートは何処からでも里にエスケープ出来る。降っていたみぞれがやんできた頃合いをはかり出発する。

 予定していたのは2009年の寺久保山下山時に通った般若峠からのルートであったが、当時のデータをGPSに入れてきたにも関わらず、藪化していて取り付きが解らない。少し奥に入ってみるも、ぬかるんだ藪で苦闘するのも今日の長丁場の事を考えるとためらわれる。寺久保山一本狙いならカッパを着て突っ込んでも良いが今日はやめておこう。改めて雷電神社の裏手からオーソドックスな雷電神社コースで寺久保山を目指した。

般若峠への取り付きは不明 気を取り直して雷電神社裏から入山 湿った落ち葉の登りも一興

 標高が300m近くになると薄っすらと木が雪をまとい、歩く森は白い世界になっていく。里山で見るこんな景色も珍しい。こんな日に歩いた者だけが見られるご褒美かもしれない。

予報を信じて先に進む 高度が上がると枝の雪が増える  

 山頂へ着くと、駐車地で一緒だった二人組の男性が休憩中であった。自分が般若峠への入り口探しで手こずっている間に先行したようだ。眺望の無い山頂だが、薄っすらと白く飾られた山頂も独特の雰囲気があって良い感じだ。自分は先が長いので呼吸を整えて山頂を後にした。

 山頂から西へ進む道は笹が繁茂しているが、ロープが張られていて親切丁寧。また、刈り払いもきっちりされていてこんな日は雪まみれにならずに済むのでありがたい。

山頂も白く飾られていた 縦走路へと踏み出す こんな日は刈り払いがひときわありがたい

 進路が南に変わる手前、右手の370m級Pの、まるで粉砂糖を軽くふるったような美しい姿が目に入る。寄り道したいところだが、また別な機会にしよう。

林道を挟んだ370m級P やはり木製道標は味がある 貴重な晴れ間、足利方面

 小さなピークを幾つも越えていくこのルート。一つ一つのピークは標高差が数十メートルと大した事はないが、それでも数を重ねるに従いボディーブローのように効いてくる。般若峠への取り付きが失敗して時間的にちょっと焦りもあり、序盤多少飛ばしたのが効いてきたので幾らかピッチを抑えながら進んだ。幸いにして時折晴れ間が覗く空に大いに励まされる。寺久保山から塩坂峠までの区間は明るい尾根歩きが楽しめて良い雰囲気である。栃木の山150での紹介は大いに賛同出来る。

  301.4m三角点 点名、藤平入 眼下の北関東自動車道

 塩坂峠手前で前方から3人組の男性と交差する。雷電神社からの登り口が解らず逆周りしてきたという。確かに道標皆無のあの登山口はもう少し改善の余地があるような気もするが、あれはあれで里山然として良いとも思う。

 いろいろ構築物が多い賑やかな塩坂峠を後にして、道標に導かれてゆるく登り始めると二つ目のピークが鳩ノ峰である。

山中に忽然と地デジアンテナ 塩坂峠はいろいろあって賑やか 鳩の峰直前の立派な標柱

 大きな石碑と今は無残に崩壊してしまった遺構、そして鳩の峰の由来に思いを馳せながらしばし休憩。

そして鳩の峰へ到着 大きな石碑 石祠の前の社殿は寂しい姿に

 鳩の峰から高度下げで失敗をする。ここまでしっかりした登山道をずっと歩いてきたので地図もろくろく見ずにきたが、道形が明らかな方へ導かれていき、落ち葉も深くなり踏み跡が薄くなってきた。尾根が落ちる先はもはやゴルフ場のみ。慌ててGPSを覗き込むと、嗚呼やっちゃったね。70mの登り返しに余計な体力消耗。ピークからの下降は地図を出してコンパスを合わせるべきなのに、ここに来るまでの道標の多さと道形の太さにすっかり油断してしまったようだ。

これを見落として標高差70mのシゴキに一汗 良い佇まいの石祠 主は変わった神様?

 越床峠近辺で昼食休憩を予定していたが、先ほどの登り返しでいささか疲れも溜まってきた。腹具合も時間も丁度良いので、眺望は無いが静かな道端に腰を降ろして休憩だ。

 食後のコーヒーまでフルコースで済ませるとやっと元気が出てきた。この先、越床峠から妙義山までは結構厳しい登りが待ち受けているのでまずは出だしセーブしながらのんびりと進む。幸いにして足も随分軽くなり、登りが楽になってきた。

お次はR293 次の石祠 越床トンネル上部の鞍部にて トンネル上部より足利方面へ向かうR293

 鉱山番屋が右手に大きく見え、最後のピークからR293旧道へ降下する辺りはにわかに道形が怪しくなってくる。途中軽く倒木などもあり、僅かな区間だが山歩きを始めて間もない人にはちょっとドキドキするかもしれない雰囲気だ。

番屋が近くなってくる 廃道の旧道R293へ 一般コースは言いがたいが

 道路へ降り立つと廃な雰囲気がプンプンしていて良し!好きだなぁこういう佇まい。反対側には道標としっかりした道形が伸びており、旧道を使ってここから越床峠へ入り大小山や大坊山へ向かう人が案外多いようだ。

廃なる雰囲気ヨシ! 西へ僅かに進むと道標あり 大小山まではもうひと踏ん張り

 越床峠にて水を口に含み、いよいよ今日の登りのクライマックスである妙義山への岩稜帯へと向かう。ローソク岩へなどという余裕がある時なら道草してしまいたくなるような道標に目をくれず(というより余裕無し)ひたすら妙義山を目指す。
 プチ岩場なども出てきて精魂が搾り取られていくも、ようやく妙義山へ到達だ。

以前通過した懐かしい越床峠 稜線に出て振り返ると大坊山が大きい 今日は遠慮しておきます

 山頂に居るにはいささか遅い時間なれど、流石に人気の山だけあり妙義山には先客の男女一組。彼らが下山した後にも途中で追い抜いた単独男性が登ってきた。

 改めて寺久保山と歩いてきた稜線を眺めると、感慨深く疲れも吹き飛ぶ景色だ。少し先にある展望箇所から東を覗くとこれから進む西場富士への稜線が伸びている。どうやらゴールは見えたようだ。

いやはや、やっとここまで来ました あのゴルフ場奥から延々来たと思うと感慨深し これから進む西場富士への稜線

 阿夫利神社分岐までは前回歩いているが、ここから先、西場富士までは宿題のルートである。道はよく整備されていて危なげは全く無し。途中に見どころの岩場などもあるが今日は流石に疲れていてスルーだ。

西場富士へは道が整備されている 前回はここを登って大小山 こんな見どころもあるが今日はスルー

 軽い登り返しの末に本日の最終目的地である西場富士に到着する。ベンチに腰掛けしばし休憩とした。時間が押していたので家内にラインで連絡を入れて、後は僅かな下りを安全に降りるのみである。

 実はこの下りの区間は事前情報収集を全くしていなかったのでてっきり藪下りかと思っていたが、実際は西場の百観音に向けて下るしっかりとした道が付いておりなんの心配も無かった。最後は藪歩きでシメるとばかり思っていたがいささか拍子抜けした。

ヤッター、今日の目標地点 西場富士からの眺望はこんな感じ 城跡だったようだ

 もっとも、予定していたルートは動物柵から更に真っ直ぐ東に進み、寺の階段のような記号の箇所に降りるつもりだったが、そちらは激藪で敢えて脇にある歩道を無視する必然性も無し。ということで無事西場の百観音へと到着した。気力が残っていれば此処も見ていきたかったが、今日はパス。振り返ると今日はパスが多かったなぁ。本来パスすべきルートミスもあったりで結構厳しい一日であったが無事こうやって下山も完了した訳だ。あ、でもこのあと、駐車地を目指す6.5Kmの里歩きがあるんだけどね。

丈夫な動物避けの柵 西場の百観音も今日はスルー 車道はなるべく避けて、まだまだ先は長い

概略コースタイム

駐車地発(08:01)-般若峠入口探索より復帰(08:09)-寺久保山(09:06)-301.4m三角点(10:19)-塩坂峠(10:45)-
鳩の峰(11:06)-ルートミスに気づく(11:18)-鳩の峰に復帰(11:27)-昼食地点(12:12)-昼食休憩-
行動再開(12:49)-越床峠(13:37)-妙義山(15:04)-西場富士(15:50)-動物柵(16:07)-西場の百観音(16:13)-
R293接合(17:23)-北関東道下(17:49)-駐車地着(17:56)

カシミール3Dデータ

沿面距離:22Km
所要時間:9時間55分

カテゴリー: 県南・両毛の山 パーマリンク

西場富士、遠し! への14件のフィードバック

  1. 野球親爺 のコメント:

    いやあー、だいぶ歩かれましたね。お疲れ様でした。
    越床峠から大小山への登りはめげそうですね。
    西場富士は歩いたことがないので、簡単なルートで歩いてみます。
    このような周回は考えている時から楽しいですね。6.5㎞の里歩きもまた楽しからずや、でしょうか?
    ところでまっちゃんさんは花粉症ではないのですか。
    こちらは今年はちょっと症状が出ているので、花粉の飛びそうな所は避けている状態です。

    • まっちゃん のコメント:

      全ルートがきっちり整備された登山道なので気疲れはしませんでしたが、
      そのせいでルートミスなどやらかし、体力的には結構搾り取られた感がありました。
      でも、車に戻った時は結構充実感がありました。
      こんな無茶歩きも里山ならではの楽しみですね。

      花粉症は・・・
      何となく鼻水が出たり出なかったりで、もしかしたらとは思うのですが、
      「花粉症じゃない。花粉症じゃない。」と自分におまじないをかけていると
      不思議と悪化しないようなそんな古典的な手法でここ10年くらい乗り切っています。
      でも、いつまで通じるやら( ´∀`)

  2. 亀三郎 のコメント:

    こんにちは
    寺久保山 登山口 先日 ケン坊さんPartyがスタートした地点ですよね
    看板はなくて 赤テープのみの目印
    そこから ドラマが始まる、、、なんちゃって
    それと たしかに 標高300mでも 白い世界
    行った者だけが 味わうことの出来る世界
    まっちゃんの言われる通りだと思います^^v

    • まっちゃん のコメント:

      いつもは天気が悪い時は歩かない臆病者の自分ですが、
      今回はトレーニング山行と割りきって出かけたら思いがけない光景に出会えた、
      怪我の功名的な部分もあって、良い風景を見ることが出来ました。

      陽が差し始めると一斉に雪が溶けて、登山道は雨が降ったようになったのには閉口しました(笑)

  3. ケン坊 のコメント:

    こんばんは。
    まだ、脳裏に残ってる景色を思い出しながら塩坂峠まで読み、
    その先は何時かは歩くかもしれないコースと思って、真剣に読ま
    せて頂きました。
    大小山~大坊山~大小山の周回は経験してるので、今度は
    途中、越床峠から寺久保山をピストンしようかなって???
    時間的には7~8時間かかるかも…無理かな~
    ところで”西場富士”へは、一度歩きかけて腰が引けて戻ったという
    記憶があります。
    全く事前準備なしに、案内板?を見て思い立ってだったので…
    そんな簡単では無いですよね~ 一度は歩いてみたいです。
    それにしても10時間とは凄い! 
    ケン坊は年々歩く時間が短くなってきてます(8時間が限度)。

    • まっちゃん のコメント:

      ケン坊さんの後追い。早速させていただきました。
      今回のルートの構想は記事にも書いたように以前からあったのですが、寺久保山から
      越床峠に至る区間の様子が今ひとつとなのでは、といった勝手な思い込があって
      なかなか実現に至らずにいました。
      ところが、ケン坊さんが良さそうな雰囲気のレポを掲載していただいたお陰で決行出来ました。

      鳩ノ峰から東に進んで寺久保集落に降りるのも依然ネタ帳に眠っていますので、
      次回こそは閉ざされた般若峠から寺久保山へのアプローチを含めて再訪しようと思ってます。

      西場富士へは、道もしっかりしているので是非お勧めですよ。違った雰囲気の大小山を楽しめることと思います。
      問題は車を置く場所ですが、
      西場の百観音から阿夫利神社駐車場まで約1.3Km。
      稲荷神社に降りれば700mくらいで、充分歩いて戻れる距離になります。

  4. 亀三郎 のコメント:

    こんにちは
    寺久保山から塩坂峠 明るい尾根道歩きなんですね
    ガイドブックとか
    以前 他の人の山レポを読んだときには
    けっこうマイナー??ってイメージ大だったのですが
    ことし ケン坊さん まっちゃんと続けて山レポ拝見すると
    案外 亀三郎が思ってるより 人が入ってる?って感じがして来ました。 笑

    こうなると
    雷電神社の駐車場までたどり着けるか、、、と
    あの 写真で拝見してる
    赤テープの登山口が見つかるか、、が
    2大問題点になるでしょうかね、、、私の場合、、、、(^_^;)

    • まっちゃん のコメント:

      寺久保山から塩坂峠、
      結構お勧めですよ。雰囲気も景色もなかなか良いです。

      雷電神社の駐車場は結構分かりづらいですが、↓の場所です。
      http://maps.gsi.go.jp/#18/36.376552/139.524286/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0f0

      分かりやすいのは神社手前の路側に5~6台止められるところで、こちらです。
      自分も今回はこっちに止めました。
      http://maps.gsi.go.jp/#18/36.376988/139.525740/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0f0

      神社は目立ちますから、まずそこを目指して行けば後は裏手に登山口の左右に赤テープがあって、登り始めれば山頂まで迷う箇所はありません。

      寺久保山から塩坂峠へ行くには、般若峠方面に間違えて行かなければ道標の示す方向は一箇所のみ。出だしは笹の背が高くて翻弄されるかもしれませんが、尾根沿いにロープが設置されていて安心です。
      ロープが切れると後は道もしっかりしてきて、南に進路が変わる頃になると道標がバンバン出てきます。

  5. リンゴ のコメント:

    里山を繋いでの超ロングコース。
    車道歩きも含めて10時間とは凄い!
    自分は不注意からぎっくり腰をやってしまいました(T_T)
    幸い軽症なので調子が良ければ、どこかの里山で復帰したいと・・・。

    • まっちゃん のコメント:

      ぎっくり腰ですか。それは大変でしたね。
      一度治っても再発する可能性があるので油断できないですよね。

      自分はぎっくり腰ではないんですが、やはりたまに軽い腰痛に悩まされることがあって、
      腰にいつもと違った負担(ごく軽いやつのほうがてきめん)が一定時間かかり続けると
      決まって腰が張ってきて、ひどい時は歩く姿も不自然な感じになることがありました。
      スポーツクラブに通うようになってからは殆ど痛む事もなくなりましたが、
      同じ姿勢が続く時は意識的に腰の負担を分散させるようにしています。

  6. chikoやん のコメント:

    大通りから西場までだって、十分遠いなぁ。って思っていましたが・・・
    22キロですかっ。それは、もう、車で移動する距離です。(笑)
    どまんなか田沼付近から見える山の稜線上には、こんな景色が
    広がってるんですね。
    近くて遠い大小山。なかなか歩きに行けずにいるので、楽しませて
    いただきました。(^^)
    ちょっとの標高の違いで見られた雪景色。これは嬉しいですね。

    • まっちゃん のコメント:

      宇都宮から一時間位で来れるこのエリア、地図をよく見るといろいろバリエーションが組めて楽しそうな所です。自分のような初期高齢藪ハイカーにとっては、何処に降りても里というのが安心です。

      今回は車道歩き長すぎでした。チャリデポしたかったのですが、好適地が見つからなくて・・・
      街中なので変な所に置くと不審者になりかねないのが里山歩きの短所といえば短所(笑)

      でも、最近便利に思うのはグーグルのストリートビューです。
      こんな田舎道まで、といった情報量で、偵察に行かなくても大体の雰囲気掴めるのでありがいです。

  7. 亀三郎 のコメント:

    雷電神社 駐車地 地図 ありがとうございました ペコリ
    行ってみようと 思ってますよ~~~^^v

    もちろん
    まっちゃんよりも 歩行距離の短いコースで、、、(^_^;)(^_^;)

    • まっちゃん のコメント:

      いやいや、あんな変態ルートじゃなくても寺久保山~塩坂峠ルートは充分素晴らしいですよ。
      是非是非、 山行記事をお待ちしてま~す。

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