古賀志山考

 週末の天気はまったく期待していなかったが、朝方、土曜日の雨が少し残っていたのになんとなく好天の兆し。予報を見ると風もさほど強くなさそうではないか。時刻は既に昼近くだ。今から登れる山といえば・・・久しく訪れていなかった古賀志山散策へ出かけることにした。

 地図もGPSも持たずに山に入るのは実は初めてである。今回は安全重視、手堅いところで北登山道か?

 まてよ、北登山道は昨年の台風で崩壊したと聞く(それでも皆さん通行しているらしいが)。車を林道の通行止手前まで入れてしまったので、北登山道は帰りに見ようか。必然的と言うべきか、気が付くと東陵尾根に足が吸い込まれていった。


東稜尾根末端より入山

 車から僅か1分で急登開始だから準備運動不足の体にはややキツイ。結構息があがる。でも流石は古賀志山だ。道形はバッチリでなんの心配も無く登って行ける。少し経つとようやく体が追いついてきた。


結構急登

 途中にある岩場を寄り道して登ると、見事な中尾根の展望台。以前この眺望は無かったような気がする。


中尾根の展望台あり

 南からの踏跡と交錯する鞍部で北登山道へ誘導する黄色の道標あり。直進は東陵見晴らし、という案内はあえて出さないこの道標は誰が設置しているのだろうか。不用意に東陵岩場へ行かせないという意味は解るが、登り口からここまで一枚の案内も出さずにここに来て北登山道に戻れというのもちょっと微妙な感じだ。
 下山時に見たこの黄色いタイプの道標は、北登山道入り口の柵を立てて進入を防いでいる箇所を迂回すべく、沢の右岸より北登山道に侵入させるように誘導していた。北登山道を管理管轄している宇都宮市は登山道自体を封鎖しているのだから、この道標を市が建てるとは思えない。古賀志山を守るNPO法人があるというのは聞いているが、もしそちらで建てているならそれはそれで問題があるかもと思える。もっとも、”古賀志山問題”については様々な視点があり、とりあえずこういった形で一つ一つ収支していかないといけない状況に来ているのかもしれない。
 こんな感じだと古賀志山界隈を自由奔放に歩くのは罪に他ならないであろう。そう考えると、自分にとってはまた一層足が向かない山になっていく気がする。


北登山道へ誘導?

 岩場の下を巻く道を二本つないで、あとは東稜見晴らしまで一直線の岩ルートとなる。以前はロープや鎖に殆ど頼らずに登ることが出きたが、今回は気のせいかホールドが少なくなったように感じるのはどうした事か。鎖を握ることが多くなった。自分にも、着実に老いはやってきているのだろう。「実力の7掛くらいで登れなければやめたほうが良い」というのを聞いたことがあるが、残念ながら自分にとってこのルートもそろそろ分不相応の時期がやってきたのかもしれない。
 上から何人かハイカーが降りてきたが、下りで此処を使うのもちょっとどうかな?中にはかなり年配の人も居て、思わず心の中で「気をつけて」と呟いた。


東稜の岩場を二つ登って一息


ホールドが少なくなったような気がするのは歳のせい?

 東陵見晴らしに到着すると、意外にも先客は一名のみ。既に一時を回っているので皆さん下山してしまったのか。
 やはり賑やかな山行は好まないのであろうか、お一人様の年金世代であろう女性が食事を終えて丁寧にコッヘルをしまう姿があった。柔らかな小春日和が降り注ぐベンチに、もの静かに腰掛ける彼女の邪魔をしないように少し離れたところにザックを置いた。

 今日はガスと水は担いでこなかったので、コンビニパンを齧って昼飯だ。所詮は普段もカップラーメンとコーヒーだけなのに、何故か少し寂しい食事だ。

 東稜見晴を後にして御嶽山を目指すと、古賀志山の山頂はグループが食後の歓談に花を咲かせている最中。初めて見る立派な山名板や立派な地図に少なからずとも違和感を感じたが、これが今の古賀志山なのだ。


立派な山名板


そして立派な案内図

御嶽山もいろいろ話題になっていたが如何に。

 おぉ!伐採でより一層眺望が拡がったじゃないか。だが、問題の撤去されたベンチ跡は生々しく茶色の土が露出している。
 そして傍らにNPO法人が県に申請した伐採許可証が提示されているのを見ると、これはこれでまた複雑な気持ちになる。

 何はともあれ、以下、景色を堪能しよう。我が里山達も勢揃いである。


御嶽山まで足を伸ばしてみる


伐採効果で眺望は抜群になった


だが、


複雑な気持ちも残る


気をとりなおして、そして・・・まずいな。高原山に雪が無い


鉄塔の海


半蔵山の堂々たる姿


赤岩山の彼方に二股山


かまど倉から川北山、手前は次石山
(紫雲山と白雲山)


笹目倉から鶏鳴山への稜線、手前の石尊山は未踏だな


大沢の城山  植生が迷彩柄だ


電線が邪魔だが  猪倉山


筑波山は遥か遠い

 帰りはどうしようか悩んだが、今日は無理せずちゃっちゃと下山しよう。荒廃していると言われる北登山道拝見!

 なるほど確かに荒れている。もともと沢筋を詰めるルートなので水が出ればこうなるのは自然の理というものだ。元来作業道かなにかをそのまま登山道にしてしまおうという市のスケベ心が功罪と言えるかもしれない。

 東陵尾根を使い、岩場の下で北に巻いて古賀志山北西の稜線に出るルートあたりを正式登山道にすればこんな事にならなかったのではと思ったりするのだが、地権者との問題とかその他諸々あるんだろうね。無責任ハイカーの戯れ言なりと読み飛ばして欲しい。

 驚くべきは山上から土砂で流された箇所が既に登山者達のショートカットルートと化しつつあること。貪欲なハイカーの足をもってすれば沢に掛かった木の梯子の存在もあまり必要で無かったのではないかと訝しるのも極論であろうか。
 

 そして、北登山道終盤の木にくくりつけたワープロ案内には思わず失笑した。
 「この先段差がありますので注意してお進みください」

 これは間違いなく市が掲載したな。山歩きってそういう場所をひたすら歩くことで、そんなところで怪我しても「行政の管理がなって無い!」なんて言うアホな輩はいるのか?

 居るから役所としてはそういう掲示をしたくなっちゃうんだよね。きっと。

 とまぁ、いろいろ考えさせられた古賀志山。夕食に向けて良い運動にはなったが、スッキリ山を歩いた気にはなれなかった。破壊と再生というのは永遠の輪廻であるのは言うまでもない。そして古賀志山を守ろう会の主張も理解出来ない訳ではないし、心ないハイカーの存在も確かに認められる。でも、何か色んなことが引っかかるんだよなぁ。非日常的な山遊びの現場である筈なのに、ここ古賀志山では極度に矮小化された社会そのものになってしまったような気がしてならないのは自分だけであろうか。
 否、古賀志山問題はそこまで深刻と受け止めるべきなのかもしれない。


荒廃の北登山道で下山

一応コースタイム

駐車地発(12:00)-東稜見晴台(13:06)-昼食休憩-行動再開(13:19)-古賀志山(13:23)-御嶽山(13:32)-
富士見峠(14:09)-駐車地着(14:43)

カテゴリー: 宇都宮の山 パーマリンク

古賀志山考 への12件のフィードバック

  1. ケン坊 のコメント:

    こんばんは
    珍しくまっちゃんがケン坊たちが歩くようなコースを
    歩くなんて…と思いましたが
    限られた時間だと、身近な山になっちゃいますよね
    改めてまっちゃんの写真見ると、有名な山だけでなく、
    低山や里山の山容や稜線の山名を見ると、懐かしく
    思い出します。
    半蔵山、城山、笹目倉から鶏鳴山、二股山等々
    あぁ週末の天気が回復することを期待したいです
    まっちゃんに背中を押されて 何処にしようかな?

    • まっちゃん のコメント:

      御嶽山からの景色はなかなか贅沢ですね。
      宇都宮近郊の山がオールスター勢ぞろい。
      山の一つ一つ、歩いた稜線が懐かしく思い出されます。
      これからもルートを変えながらまた歩いて行きたいと思っています。

  2. リンゴ のコメント:

    なるほど。古賀志山問題。人気の山だけに色々あるんですね。
    春のカタクリ、アカヤシオ、ヒカゲツツジとなど。
    県内では逸早く春の花が見られる貴重な山なので、また楽しく歩けることを望んでます。

    • まっちゃん のコメント:

      そうなんですよね~
      古賀志山は花の山でもあるんですよね。
      自分は毎年タイミングを外しちゃってますが、自宅から至近距離のアドバンテージを活かして花撮りオヤジ入門したいです。

  3. 野球親爺 のコメント:

    御嶽山からの写真が綺麗ですね。なんか立体的に見えるのは気のせいでしょうか?
    古賀志山も地権者、登山者と色々あるようですね。
    個人的にはあるがままの状態を保つように歩きたいです。

    ちなみにこの日は雪の少ない高原山の片隅、学校平から八海山神社まで歩いてきました。
    1456Pから八海山神社までの間は雪の消えている部分が多かったです。

    • まっちゃん のコメント:

      御嶽山の山頂からの写真はレンズを交換しながら、いろいろと試行錯誤しながらの撮影でした。
      まだまだ修行不足で、パソコンで画像を開いてはガッカリばかりですが、距離感とか空気感を少しでも感じていただけたとしたら嬉しいです。

      >あるがままの状態を保つように歩きたいです
      激しく同意ですね。

      1456mPから八海山神社の間の雪も無かったですか。
      今年はもう駄目かなぁ。
      とかいって油断しているとドカ雪が降る可能性もあるので油断出来ないのですが、
      今は守子神社から雪に埋まったお釈迦様に会いに行くことばかり考えてます。
      いつ決行するのかが悩みどころです。

  4. chikoやん のコメント:

    一度しか行ったことがないけれど(^^;
    古賀志山へ登ってみようと思ったきっかけは、日光連山の展望台だ。と聞いたから。
    好展望の陰には、山頂伐採物語があったんですね。
    お気に入りの鳴神山も、同じような話が・・・
    山頂の展望がよくなり、たくさんの人が訪れるようになったけれど、景観は変わってしまった。と。

    ・・・それにしても、好展望です。(*^^*)

    • まっちゃん のコメント:

      鳴神山にもそんな話があるんですね。
      先日一度きり歩いた感じでは古賀志山のような雰囲気を感じませんでしたが、
      市街地から至近距離にある山は人々に愛されるが故にいろいろあるものですね。
      山は出来るだけ自然のままで、そして持ち主がいるのならその方たちの意思をまず尊重して、
      ありのままの状態で歩きたいと思ってます。

  5. 亀三郎 のコメント:

    こんにちは
    最近 全然 山歩き行けてないので
    久しぶりに
    公園でウォーキングして来ました!!
    今日は 6km 57分45秒~~~~
    ところが
    コン様は 57分ちょうどくらい??
    年齢の差は 仕方がないのか??
    それとも キホンの体力差か?。。。。この辺りは不明。

    ただ
    山歩きでも だいぶ先行されるので
    キホンの体力かもしれませんね (T_T)(T_T)

    • まっちゃん のコメント:

      いやいや、45秒は誤差ですって。
      亀三郎さんのレディーファーストが咄嗟に結果に現れただけですよ(^_^)

  6. 亀三郎 のコメント:

    追伸

    3月からは
    山歩き
    復活!!
    したいと、、、思っています、、、、

    確定ではないですが、、、(^_^;)

    • まっちゃん のコメント:

      今年は暖かくなるのが早そうな感じですね。
      自分としてはもうちょっと冬が長いほうが良いのですが、
      花の山にカメラを持って行きたい気持ちもあったりで。どっちも魅力的。

      コン様とお揃いの山行記事を期待してます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA