沼津アルプス+大嵐山(日守山)


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
※大平山~大嵐山(日守山)は沼津アルプスルートに比べ未整備区間です。ご注意ください。
また、大嵐山(日守山)側から大平山へは立入禁止となっています

静岡の旅二日目 11月19日(金)

 今回の静岡の旅。登山は沼津アルプス一択だ。
 他の日にも実は山頂を踏んでいるが、どちらも登山とは言い難いようなレベルなのであくまで登山はこの日一日だ。
 標高は低いがアップダウンの激しいこのルートは、沼津市街地に張り付くようにして延びる里山七座を巡る歩きとなる。

昨年西伊豆を訪れた際、金冠山の山頂でお会いした静岡の方から、眼下に見える沼津アルプスの存在を聞いた。帰宅後調べてみるとなかなか面白そうな、また意外にハードな縦走であることが判った。静岡リベンジの際は是非歩いてやろうじゃないかということになったのだ。

 今回は前泊した道の駅から至近の日守山公園駐車場に車を置き、電車利用の周回コース、沼津アルプス七座+大嵐山(日守山)とした。


日守山公園入口が今日の出発点であり終着点


狩野川土手を散歩する老夫婦と富士山

 まだ朝早い時間の日守山公園駐車場。日守山は手軽に登れるよく整備された山なので、日参登山の方の車が既に数台停まっていた。そして自分が出発する頃には空身で登山を終えて降りてきた夫婦に挨拶をされた。まさに地元の人に愛される山なのだ。

 ここからの時計周りも考えたが、今日予定の登山口がある沼津駅までは電車を乗り継がなければならない。まずはのんびりと狩野川沿いを歩き、30分ほどで伊豆箱根鉄道の原木駅へ着いた。

 駅到着と同時に三島行きの電車が滑り込んで来たので慌てて切符を買って乗車する。車内は通勤通学の人で溢れかえってており、山支度の者など皆無だ。多少の恥ずかしさをこらえながら三島駅に着いた。

 ここでJRへ乗り換えるのだが、切符を買うのに手間取ってしまう。ようやく沼津方面のホームに駆け上ると、丁度乗り換え便の沼津行きが出発しようとしているところ。タッチの差で乗り遅れてしまった。

 結局15分後の電車に乗る事は出来たが、沼津アルプス+一座の長丁場を前にして、時刻表情報など事前調査が足りなかった事を反省。


電車を乗り継ぎやってきた沼津市内 狩野川に掛かる黒瀬橋より


沼津市内からは大抵の場所で富士山が見える 日本の山でもあり郷土の山でもある


日光の鳴虫山登山口にどことなく似ている

 沼津駅南口に降り立ち、朝の沼津市内を歩いていく。ゴミ集積場で世間話に興じるおばさん達、開店準備に忙しい飲食店の店主。そんな日常の光景の向こうに小さな山の姿が見えてきた。香貫山である。


取り付きの階段から一登りすると平和塔(五重塔)あり ここからも富士山が顔を覗かせる


香貫山は全山、公園の遊歩道として整備されている

 香貫山は沼津アルプス七座を構成するも、南東側を車道で分断されているので実際は単独峰に近い趣もある。
 また、登山道が沢山あり、大変整備されているので山全体が公園と言って良い。そのせいもあり、比較的高齢な方が足腰鍛錬の為にほぼ空身で歩いている姿も多く、また山中に水道が引かれていて水飲み場が提供されていたりもする。要は沼津市の裏山的な存在、市民の憩いの場なのである。


駿河湾が拡がる美しい光景に胸がすく思い

 香貫山の山頂に至る直前に駿河湾が拡がるポイントがあった。海べりは千本浜の松林であろうか。
 井上靖の自叙伝的作品、「しろばんば」「夏草冬濤」の洪作少年が旧制沼津中学時代に歩き回ったであろう香貫山や千本浜。洪作少年も見たかもしれないこの風景。これだけでも静岡に来たかいがあったなとしみじみ思うのであった。


一座目 香貫山の山頂は電波塔だけで眺望は無し


一旦香貫山から完全に下山するようなルートで舗装道(車両通行不可)を進む


舗装道から再び登山道へ 横山登山口にて 熊も鹿も猿も居ないが猪だけはいるらしい

 沼津市の熊出没情報は無いらしい。実際に今回このルートを歩いた感じでは動物の痕跡はかなり薄く、鹿は皆無、猿は不明だ。看板のイノシシは、登山道に餌を求めて鼻で地面を掘り起こした跡が数か所見られたので居るのは確かなようだ。


二座目 結構な急登に絞られて横山へ ここも眺望は無い

 香貫山をほぼ全て下り切って再び同じような標高の横山への登りはジグザグ無しのストレート急登がなかなかキツイ。
 登り切った横山は眺望ゼロだが、まずはここでザックを置いて一休み。
 香貫山では沢山の人に会ったが、主縦走路であるこちら側では全く人を見かけなかった。平日だから流石にこちらには皆さん入って来ないのかと思いきや、自転車で横山登山口に居た方が後から登ってきてここで追い越される。


横山から一旦「また下るんかい?」状態からの徳倉山へはまた急登 よく整備されているがなかなかキツイ


三座目 徳倉山からは富士山が見えた


対空壕跡があった


樹の名前は解らないが明らかに植生が異なる 海沿いの山の証しだ

 徳倉山から先はしばらく緩斜面の道が続きほっと一息。
 途中にある対空壕跡は、太平洋戦争末期に駿河湾を北上する米軍機を攻撃する為に銃座を据えた場所だという。戦果のほどは、終戦の年である1945年7月17日にあった沼津大空襲をもって知るべし。故に、哀しい遺産である。


沼津アルプス最高峰の鷲頭山が姿を現す


四座目 志下山付近からは海原の眺望が広がりコース随一のビューポイントとなる


沖合に見える筏のようなものは養殖場


静けさの中、鼓動を打つようなリズムのエンジン音と共に漁船が帰ってきた


いつまでも見ていたい光景だ


六座目 鷲頭山 残念ながら眺望は無し

 最高峰だけに登り応えのある急登の鷲頭山は、手前の小鷲頭山が沼津アルプス五座目でこちらも揃って眺望は無い。だが、遠くから沼津アルプスを俯瞰した時、やはり主峰の威容が漂うこの山姿。直下の急登はその証だろう。


沼津アルプス七座の最終座である太平山へと進む これまた登り返しが辛そうだ


ウバメガシ純林 鷲頭山と大平山間の岩稜にしか存在しなかった

 道標に、「この先ウバメカシ純林の岩尾根。沼津アルプスの核心部」と書いてあった。岩尾根という言葉に若干緊張するも、通過してみれば岩が露出している尾根という意味で危険な所は無い。

 ウバメカシを調べてみたら、名前の通り樫の仲間なので花とかは付かないので華やかには欠けるだろうが、混合林ではなく純林という意味では見事であった。


太平山への登り返しで汗をかいていたら途中でご褒美の富士山


七座目 そして沼津アルプス最後の太平山へ ここも眺望は無い


最後はオプションルート これより奥の細道とな?

 一般的な沼津アルプス縦走路はここでおしまい。ヤマレコなどで紹介されている一般ルートは大平山から南に静浦漁港方面への登山道をもってして完結となる。

 だが、今回は稜線を東に向かい大嵐山(日守山)を目指す。
 どうやらこの先は地元山岳会としては「奥の細道」として楽しんでいる節がある。
 今回は観光登山としてやってきたのでガチのルーファン藪漕ぎは勘弁願いところだが、まずは「奥の細道」のお手並み拝見だ。


最終到着地点の大嵐山(日守山)が見えてきた


途中の大岩で本日最後の富士山サービス

 「奥の細道」に入ると急な下り、梯子、うっかりすると滑落しそうな岩の巻道など明らかにスリリングな雰囲気が出てくるが、あくまでやり過ぎない程度に手を入れた感がひしひしと伝わってくる。終盤で足も大分疲れてきたが、歩いていてなかなか楽しい区間であった。

 香貫山を除いて数人しか会わなかった沼津アルプスも「奥の細道」となると流石に一人旅だ。だが、眺望の良い大岩で食事中の男性に遭遇。容貌は失礼だが仙人のよう特に身の回りに構わないような雰囲気だが、静かな山が好きな事は一瞬で解った。彼も突然の自分の出現に少なからず驚いていたようだ。

 「自分の地元である栃木だと遠くに小さく富士山が見えただけでもカメラを向けてしまう」と語りかけた。また、昨年は愛鷹山の黒岳と越前岳に登り大きな富士山を見たこと、自衛隊演習の大砲の音に腰を抜かしたことなどを話した。
 富士山の見える大抵の山に登った事があるという彼から、富士山展望台として勧めたい幾つかの山の名前をお聞きして先へと進んだ。次回の静岡訪問の際には是非踏みたい山となった。


「奥の細道」を抜けると綺麗に整備された公園敷地に到達

 大嵐山(日守山)の登り返しが済むと公園の立派な柵があった。柵を乗り越えて公園側から来た方を見ると掲示があり、「ここから先は公園エリア外になります。立入には所有者の許可が必要です。 日守区長 函南町役場 管財課」とあった。

 なるほど、事情を知らずに逆方向から歩いて来たのでしょうがないが、立入禁止区間だったのだね。反対側にも掲示が無いのは片手落ちとしか言いようがない。要は、超整備された日守山公園から散歩レベルの人がこの先の未整備エリアに入って起こりえるトラブル発生の責任を取りたくないとも読み取れる。


沼津アルプス+一座 最後の日守山(大嵐山)へ到着 いやぁ長かった


山頂からは昨晩泊まった道の駅ゲートウェイ函南がよく見える


残念ながら富士山は雲に隠れていた

 大嵐山(日守山)からの眺望はなかなか堂々としていて素晴らしい。富士山は雲に隠れていて見ることが叶わなかったが、狩野川の蛇行するふるさとの眺め、ほぼ180度の眺望は箱根山塊までぐるっと見渡せる素晴らしさ。登山口からよく整備された道を標高差200mほども登り詰めればこれだけの景色が手に入る。地元の人が毎日登りたくなるのも頷けるというものだ。


公園の階段をゆっくりと降りていく


日守山(大嵐山)は地元の人に愛される公園として整備されているのだ


今晩は「川の駅」側へ駐車 ここからも富士山が良く見える

 今晩は連泊で道の駅ゲートウェイ函南に泊まる。ただ、昨晩のトラックのアイドリング音にはほとほと参ったので隣接する川の駅側に車を停めた。

 シェード設置や片付けなど済ませて車内で一息ついていた時、ふと外を見ると綺麗な夕景が拡がっているではないか。
 カメラ片手にしばし自然の織り成す寸劇に酔いしれた。さぁ明日も天気が良さそうだ。


夜のとばりが降りてくる


おぉ!夕日に染まる富士山


沼津アルプス稜線を染め抜く夕日が狩野川に映る 明日も天気がよさそうだ


低山だが累積標高差は1460mもある

概略コースタイム

日守山公園駐車場発(07:09)-伊豆箱根鉄道 原木駅着(07:37)-鉄道乗車-JR沼津駅発(08:22)-
香貫山登山口(08:45)-平和塔(08:57)-夫婦岩(09:10)-香貫山(09:16)-横山登山口(09:44)-
横山(10:04)-徳倉山(10:44)-対空壕(10:55)-志下山(11:32)-ぼたもち岩(11:49)-小鷲頭山(12:08)-
鷲頭山(12:22)-大平山(13:18)-大嵐山(日守山)(14:45)-日守山公園駐車場着(15:11)

カシミール3Dデータ

沿面距離:16.7Km(日守山公園駐車場~原木駅間も含む)
累積標高差:(±)1,460m(沼津駅~日守山公園駐車場)
所要時間:8時間2分(電車乗車時間も含めたトータル)
※累積標高差は、『国土地理院基盤地図情報数値標高モデル5mメッシュデータ』よりカシミール3Dにて算出した値

カテゴリー: 車中泊の旅, 静岡県の山 パーマリンク

沼津アルプス+大嵐山(日守山) への2件のフィードバック

  1. リンゴ のコメント:

    なんと!今回は8日間もの旅でしたか。
    沼津アルプス・・・聞いたことはありますが、間近に見える富士山や海。
    栃木の山では見ることの出来ない眺望が得られて良いですね。
    静岡の旅シリーズ、続きも楽しみです。

    • まっちゃん のコメント:

      やはり海なし県の栃木に住んでいると海って憧れちゃいますよね。
      特に山歩きをしながら海を見られるって特段の思いがあります。
      そしてやはり富士山ですね。

      このあとも富士山の写真が沢山出てきます。
      途中で飽きちゃうかもですね(*^。^*)

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