-『GPSmap60CSx』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
県内の山でガイドブック等で紹介される一般的なルートでも長丁場とされるのが、百村山から黒滝山へのコースである。更にその延長線上には栃木百名山の中でも難易度が高いと言われる大佐飛山がある。
栃木の山を登りだして八年経つが、特に意識した訳ではなかった栃木百名山。助兵衛心が頭をもたげ、最近は体力のあるうちに残り少ない山頂も全て踏んでみたいと思うようになったのである。
大佐飛山を一発で仕留めれば黒滝山はおまけのように踏むことが出来る。しかしながら、黒滝山から大佐飛山は残雪期で無ければ激しい薮との格闘となる4Kmもある長丁場。林道木ノ俣巻川線の新登山口から黒滝山までの5Kmも、標高差約800mを稼がなければならず、決して楽とは言えない。大佐飛山登山は時間と体力の配分が重要になるだろう。
・・・と、まぁ今回は大佐飛山は無理としても黒滝山まで予習してやろうじゃないか。県道30号を走っている時にいつも眺めていた黒滝山を擁する堂々とした山塊。一度は歩いてみたいと思っていたのは率直なところである。
今回の取付き、と言っては失礼。いつもの道なき山行と違い、きちんと道標が設置されたパブリックな登山口である。梯子一本でここからどうぞ、というのが可笑しいが、信頼してよいかどうか解らないロープが一本垂れているよりは格段に親切でありがたい。
栃木の山150に紹介されている登山口は百村山に麓から登るルートと、林道木ノ俣巻川線の百村山の南側直下から尾根に登り上げる二箇所があり、今回選んだ通称新登山口のほうが幾らか黒滝山までの距離が短い。
ところが驚いたことに、今回の登山口より更に黒滝山寄りに更に二箇所の梯子を偵察の時に見た。一本は実際に梯子を登ってみたが確かに先には踏み跡が続く。しかしカシミールで精査するとそのあとの行程は決して楽ではなさそうなので現時点では今回使ったこの登山口が最適解だと思う。
梯子を登るとまず道標とご対面。踏み跡、もとい、登山道はしっかりとしているのでここは迷うことはないだろうが、慣れない登山者の場合は本当に此処で良いのか?という精神的なプレッシャーを開放するには充分効いている。
稜線まで標高差200m一気に登り上がる区間なので急登の連続。しかし、枝打ちされた美林の植林帯には程よく光も入り、踏み跡のしっかりした登山道は至って歩きやすい。
上の方に見える空の色を励みに登り切ると、百村山から黒滝山へと続く尾根道へと出た。植林帯の暗さから開放されたせいもあってことのほか空の青さと新緑の輝きが目に染みる。
稜線の出だしはゆるゆるの登り。こんな道がどこまでも続けば黒滝山はおろか大佐飛山なんか楽勝じゃんと思っていると、そうは甘くない。徐々に傾斜がきつくなるが、相変わらず道がしっかりしているのでまだまだ余裕だ。
一つ目の山名板のあるピーク、三石山へ到着。今日初めての眺望に立ち止まり汗を拭った。稜線上は実に豊かな自然林の中にあり、空が切れているので常に明るい。惜しむらくは周囲への眺望が無いところだが、新緑に抱かれながらその生命力を感じながら歩くのも楽しいものだ。
尾根に出てからちらほらと見られたツツジも、高度が上がるとシロヤシオへと変わっていく。花についてはまったく期待(というより解らないというのが正解)していなかっただけに嬉しい出会いだ。
三石山からさる山までは地味な登りの連続。相変わらず道はしっかりしているが、等高線は正直だ。一汗搾り取られて、さる山へ到着だ。名前の由来で猿の住処でもあるのかな(笑)と思いきや、これまた変哲のない地味なピークであった。
動物といえば、この山には鹿がまったく居ない。登山道がしっかりしているので動物達の微細な踏み跡を見分けるのは難しいが、糞はすぐに解る。ここまでの区間で見た鹿の糞はゼロ。タヌキもゼロ。熊もゼロ。見たことのないうずらの卵のような数片の糞が一塊。途中ヌタ場に最適な水たまりも二箇所あったが、何者かが使った痕跡も無い。イノシシや鹿が居ないのだから当然か。これだけ豊かな森に抱かれながらも動物の気配が無いのは何故なのだろう。
さる山からだらだらと登って行くと、本日のベストビューポイントである那須見台へ。北側の木が切れていて、三倉山から正面の大倉山、流石山、三本槍方面も見渡せる。また、黒滝山から大佐飛山へと伸びる稜線を眺めることが出来る。
良く踏まれた登山道はともすれば単調とも言えるが、花に囲まれ、時にピークを巻きながら、しかし登りは地味ながらも確実に高度を上げていく。
山藤山を通過し、標高が1500mに差し掛かる頃にシャクナゲが見られるようになった。シロヤシオもそうだが、こちらも全く予想外だった故に足取りが思わず軽くなる。
河下山を過ぎ、僅かに下るといよいよ黒滝山の全貌が姿を表した。ここまで登山口から三時間少々。奥まった感じは、手前に見える残雪からも感じることが出来た。
登山道は残雪帯で分断されている。目指すべき方角は明瞭だが、とりあえずピンクリボンに従い残雪を踏みしめる。僅かに踏み抜く場所もあるが、この時期に雪の上を歩けるとは思っていなかったので花に続いて変化を楽しむことが出来た。
程なく黒滝山の山頂へ到着した。立派な山名板がかかる山頂はさほど広くないが、しっかりと刈り払いされた那須野ヶ原方面への眺望が広がっている。右手に伸びる鴫内山からの稜線もこうして眺めると魅力的だ。ちなみに先人の記録を読むと皆さん百村山からの周回とされているようで、是非とも来年の積雪期にチャレンジしようと思う。
昼食前に少し大佐飛山方面を偵察しようと進んでみる。初めはしっかりとした踏み跡も徐々に薄くなり、いつしか薮に吸い込まれてしまった。丁度等高線が緩んだ平坦な箇所だから余計かもしれないが、こうなったらもうコンパスで進路角をあわせるしか無い。普段の薮山なら躊躇なく進んだことだろうが、何処かで熊が待ち構えているんじゃないかとか、万が一戻れなくなったら・・・などといつにもなく弱気が頭をよぎる。
ほんの入口だけなのに、薮のバリケードが深く立ちはだかり、深山のプレッシャーがのしかかったのは事実である。だが、残雪期にこの薮が覆い尽くされれば、あとは時間との勝負となるだろう。前日にスポーツクラブのエアロビインストラクターにスクワットでいじめられていて体力的には万全ではなかったが、しっかり調整すれば黒滝山までは案外楽に登れることは解った。更なる自信が出来たら、いずれ大佐飛山は挑戦したい山だ。
登りでは極力背後を振り返らないでストイックに前だけを見ながら歩いたが、下りはご褒美の景色を楽しみながら。辛い登り返しがないのがこのコースの良さでもある。
とても手の届かぬ高い所にある枝に結ばれた赤テープを見て思った。黒滝山へ至るこの稜線もまた、数mの降雪が登山道の周囲を覆う笹ヤブを埋め尽くし、落葉の樹間からは好眺望が望めるルートになるのではないかと。また、大佐飛山狙いなら残雪の終末期が良いが、ある程度ふんだんに雪が残っている3月下旬から4月上旬頃に黒滝山をゴールとして歩くのも悪くなさそうだ。来年の早春には是非実行したところ。大佐飛山はその感触を掴んでからでも遅くはないだろう。
黒滝山登山道は実によく整備されている。特に笹の刈払は徹底されており作業されている方々には頭が下がる思いだ。また、道標についても必要最低限押さえるべきポイントに設置されていて素晴らしい。もともと迷うようなルートではないが、それでも一箇所関心した道標があった。さる山から三石山へ降りていく標高1360m地点で尾根の乗換をする地点に設置されたそれはグッジョブ。はなからルーファン歩きならこうしたトラップポイントはよくあるが、登山道歩きに慣れた方だと陥りやすい分岐。コース外を警告する表示も的確だ。
新登山口への降下点も黒滝山から降りてくると大変見やすい位置で秀逸。ここは一旦見送り百村山へ寄り道をする。カタクリで有名な山らしいが、眺望もなくひっそりとした山頂であった。
先ほどまでの緑の回廊からモノトーンの植林帯へ戻り、後はひたすら高度を下げる。梯子の待つ登山口へと無事到着した。
初めての山域。そして、大佐飛山への憧れ。思いがけない花との出会いも新鮮であった。男鹿山塊は、最奥の男鹿岳もまた味わい深い雰囲気を感じる。栃木県に暮らし地元の山を登る者の端くれとしていつの日か必ずやこれらの山を訪れたいものだ。
概略コースタイム
駐車地発(06:34)-百村山からの稜線(07:05)-三石山(07:39)-さる山(08:18)-那須見台(08:40)-山藤山(09:03)-
河下山(09:41)-大佐飛山方面より撤退(10:06)-黒滝山(10:15)-昼食休憩-行動再開(10:57)-河下山(11:12)-
山藤山(11:37)-ヒトに遭遇(11:42)-那須見台(11:52)-さる山(12:10)-三石山(12:37)-百村山(13:05)-
駐車地着(13:28)
こんばんは
5km 標高差800m 累積標高差だと、、、もっとですよね
これは、やはり体力があるまっちゃんじゃないと厳しそう・・・
うちの場合は、コン様いけても、、、わたしが途中でへばります (^_^;)(^_^;)
でも
ガイドブックで想像してたよりも
ずっとずっと歩きやすそうな登山道 そして親切な道標(あたらしめだしキレイですね)
ほんと
どんな人が整備されてるんでしょう^^v
このルートは殆どアップダウンが無いので標高差はおおおよそ額面通りだと思います。
最近歩かれた笹目倉に比べたら、裏通りと一桁国道位差があるしっかりした登山道です。
新登山口からだと時間も短縮。難所などの危険の無いコースですから、じっくり時間をかけて攻略されてはいかがですか。
この間の偵察から僅か1週間後の黒滝山行でしたか。
残雪期の大佐飛山はこれからが遠かったという印象です。
さる山、三石山・・・懐かしいピーク名、それに黒滝山のオシャレな山名板も昔のままなんですね。
もう、大佐飛山は無理としても、登山道が整備されている黒滝山までなら再訪しても良いかな?なんて思いました。
リンゴさんは大佐飛山登っていましたよね。
自分も何とかと考えてはいるのですが、無雪期は薮との根比べ体力勝負になりそうなので、とても一人では太刀打ち出来そうもないと悟りました。
藪こぎもラッセルと同様先頭を交代しながら行けば後続は休めるとか。
黒滝山の手前にある鴫内山も見た感じ良い雰囲気でしたが、花登山のリンゴさんにはお勧め出来るかどうかは不明です。
こんばんは。
ジックリと読ませて頂きました。
栃百ガイドを読んだ時は時間的な問題で早々に諦めた山。
まっちゃんのログを読んでいるとコースそのものはケン坊にも
何とか歩けるかな~と思わせるものでしたが、まっちゃんには
そうでも”山素人”のケン坊にはそんな甘いものでは無い。
いま、一瞬とはいえ山を甘く見てしまったことを悔いてます。
まっちゃんが6時間じゃ、やはり8時間強は必要ですね...
獣が少ないようですが? 熊の生息地かと思ってました。
いやいや、新登山口からなら結構楽に登れると思いますよ。
少し急な登りもありますが、アップダウンが殆ど無いので帰りは下り一辺倒です。
(ほんの少しは登り返しありますが)
是非登ってみてください。
ガイドブックには熊が居ると書いてありますが、このへんの山域だときっとどこかにいるのでしょうね。
まぁ基本的に大音量の熊鈴とホイッスル、あと歌声(自分は熊にも迷惑なので自粛)装備すれば大抵は先方から去ってくれるのではと思っています。
熊鈴の効果については疑問視する意見もありますが、自分の場合は進行方向の先が見通せなくなったら、腰の熊鈴を手でじゃんじゃん揺らしてから進みます。
これからそっちにいくぞー!ってな感じで。
早速歩かれましたね。
黒滝山の山頂は5回ほど訪れていると思いますが、黒滝山が目当てで登ったのは初めて登った無雪期の時だけです。もう10年以上前の5月末です。ヘロヘロになって登った記憶があります。
帰りの途中で多分サルだと思うのですが、何回かおどかされましたよ。その時は熊だと思って、ビビりながら駆け下りました。あまり無雪期には行きたくない所です。
来年の残雪期はいよいよ大佐飛ですね。私も気力体力があれば行きたいですけど。
さる山の由来のようにやはり猿も生息していたのですね。
今回は本当に動物の気配が感じられなかったですが、
先日登った六郎地山の南側エリアなどは鹿の糞を踏まずに足を地面に降ろすのが不可能的な状況だけに、すっかり麻痺した感性では微細な動物のサインを感じとることが出来なかったのかもしれません。
野球親爺さんも大佐飛山経験者でしたね。
この山はルート的には特に技術面で難しい所は無いようですが、天気と体力、残雪のコンディションの全てが揃わないと難しそうですね。
自分の場合は基本的に単独なので、万全を期すため来年はまず雪の多い時期に黒滝山へ登ってみようと考えています。
お久しぶりです⌒o⌒*
偵察で、もしや大佐飛?と思いましたが・・・そ~でしたか!
季節が違えば感じが変わりますね。あたりまえか・・・
この界隈、鹿又岳がきになっているのですが、手ごわいシャクナゲは私には無理かとおもっています。
ここのところ、どこにゆけばよいか悩んでばかりです。
御無沙汰しております。
この時期の大佐日はやはり無謀と悟りました。
薮好きな自分ですが、黒滝山から一歩進んだ平坦地で心が折れましたよ。
やはりここは残雪期が正解ですね。来年狙います。
鹿又岳ですか。良いですね。
しかし、シャクナゲの密薮が登りに出ちゃうとかなりというか絶望的に辛いですよね。
トクちゃんも栃百クリアしてましたよね。
お次は栃273? あるいは日本百名山?
日本百名山は移動だけでも大変ですね。
業務連絡
本日 あかつきの湯
後追いしました!!
PH9.2
亀三郎好みの よいお湯でした。
あかつきの湯、行かれましたね。
この記事で詳細は書かなかったのですが、
泉質はなかなかなものだと思います。
ただコスパがちょっとね。
業務関連?の質問
オレゴン600
あかつきの湯まで、電源入れっぱなしで、、、
トラックデータは
山歩きの分だけ切り取って
カシミールの地図に貼り付け
簡単でしょうか?
ん、、、難しい??(^_^;)
カシミールでトラックをコピペして(元のトラックは保全)、トラック内の不要データを消せばOKですよ。
追加報告
1000円って知らなかったので
ふたりで
2000円
ちょっと、、、お値段、、、高いかも (^_^;)
わたし
予想は 700円だったんです 笑
そうでうよね。
ここはちょっとお高め。
施設的には700円程度が妥当かも。
泉質は確かに良いのですが。
栃百は昨年終わりました~!日本百は、無理であろうと思ってます。。。
栃273は持ってないので、今度本屋さんでみてみますね。
鹿又岳は、シャクナゲの上を泳がないといけないと聞きますので、来年残雪期に横川から狙いたいと考えてます!っていけるかどうかわかんないですけど~⌒o⌒*
日留賀岳から塩那道路を使って一時間ちょいという記録もあります。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-307262.html
シラン沢林道が途中崩落していなければ林道終点まで行けれるので自分はこちらを検討中ですが、
鹿又岳取付きから山頂までは悶絶しそうな薮の気配です。
残雪期に横川からも、地図を見ると結構厳しそうですね。
こんばんは⌒o⌒*
シラン沢バイクですか?
横川から見える塩那道のあそこに行ってみたいと思い何年もたちます。それゆえの鹿又ではあるのですけど・・・!
こんなん歩いてる人がいます。私には無理ですが、男鹿と鹿又の稜線が歩いてみたいのです~!
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-616371.html
この辺歩いている人は凄い方ばかりですね。
皆、あの奥深さに惹かれるのでしょう。
自分も精進してチャレンジしてみたいです
こんばんは。さすが渋いところを…と思っていたら、ついに栃百への決心を。
ふふふ・・・、これは楽しみです。これからの山行にもますます期待です~(^^)
さて、黒滝山。どうしても長距離、薮っぽい、単調、ピストンのみ…のイメージが強くて
(とくにNon夫かな)手が出せないのですが、深山っぽい雰囲気、いいですね~
意外に最初に描いたイメージが覆せていないだけかもしれません。
今まで栃百はあまり意識して無かったのですが、
黒滝山に登れたので欲が出て大佐飛も、と思い始めました。
二番手に難しそうなのが、男鹿岳と錫ヶ岳かなぁ。
もっとも、栃木273から栃百を引いた残りの山のほうが忙しくて、栃百完登はいつになるやら、かもです( ´∀`)