掃部ヶ岳と杏ヶ岳


-『GeoGraphica』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-

 昨晩は道の駅くらぶち小栗の里に泊まった。この道の駅はつい先日10月29日の夜にもお世話になっている。勝手知ったるでは無いが、今回は駐車位置を間違うこともなく好位置に車を停めることが出来た。

 また、道の駅に入る前に検索で引っかかった温泉に立ち寄りしたらこれが大当たり。くらぶち相間川温泉だ。

 群馬の日帰り温泉は意外と安い所が多く、今日も山の汗を流せればよい位に考えていたが、520円を払っていざ入湯してみると施設の古さは否めないものの、肝心の泉質はずばり強烈。なんでも、濃すぎる成分で注目されているようで長時間の入浴はかえって体に良くないとも言われているそうな。
 感覚的には少し油が混ざったアルカリ性溶液に浸されているようなそんな感じと言ったらよいだろうか。栃木でも硫化水素泉が強力な所は那須と奥日光湯元に行けば沢山ある。だが鉱泉のような感じの泉質は初めての経験でなかなかパンチのある入り応えである。おかげで小野子三山のシゴキのような疲労がスッキリと癒えたような気がする。

 朝7時に出発。その時役場の放送でエーデルワイスのチャイムが鳴った。
 和音が奏でる旋律がなかなか美しいんじゃない。アレンジした人はセンスあるなと思わせるコード進行にうっとり。
 エンディングコードのハーモニーがとりわけ良くって、自分だったら絶対この音を選ぶだろうなと考えたのと一致して鳥肌もの。
 少し愁いを含んだ中にも希望と明るさが滲んだようなそんな音。あぁ、今日も一日頑張れるぞ。そんな爽やかな気分で道の駅を後にした。


高崎市榛名林間学校「榛名湖荘」裏手の無料駐車場に駐車 既に紅葉が美しい

 榛名湖畔は今を盛りの紅葉で彩られている。まだ朝も早い時間だが、湖畔にテーブルを拡げてコーヒーを淹れてくつろぐ人。重い三脚を抱えながら撮影にいそしむカメラマン。秋の輝くひと時を楽しむ人たちがあちこちに見られた。


登山口から見上げる硯岩がひときわ目立つ

 駐車場から少し進んで登山口に入ろうとすると、見上げた上に岩柱が威容を放つ硯岩が目に入ってきた。今日のルートの第一中継点だ。


登山口から一登りで硯岩の岩頭に到達


榛名湖の向こう 左の烏帽子ヶ岳、そして形の良い榛名富士、奥には二ツ岳


紅葉はまだまだ楽しめる


ロッククライマーの残置ロープがあった


さて、掃部ヶ岳を目指そう 序盤は緩やかな笹道をのんびりと


今日も快晴に恵まれた 今秋、群馬とは相性が良いようだ


中盤以降木製階段が出てくるが、だれしも脇の道を歩くだろう

 木製階段が結構な距離続いているが、とても歩きにくく皆さん脇の道を歩くようでしっかりと踏み固められている。あまりにもピッチが狭いのでこの上を歩くとなると土ふまずのツボ刺激のバランス取り歩きになってしまうのでちょっといただけない。

 間に土でも埋まっているならまだしも、間隔が狭くちゃ足を間に置く事は出来ないし、広い所じゃ今度足が下がり過ぎるし、とにかく歩けたものではないのだ。企画設計した人はきっと山歩きをしたことがない人なのではと、どこの山でも階段を見ると思うのだ。その点鉄塔巡視路によく見るプラのステップを使った階段は歩きやすい。やはり専門の方は心得ているのだと思うのだ。


陽が降り注ぐ掃部ヶ岳へ到着

 追い越した同年代くらいの夫婦が後から山頂にやってきた。二人の会話から登頂の清々しさが伝わってくる。ご主人はポーズを作る奥様に向けてしきりにシャッターを切る。そんな二人の様子が微笑ましい。このルートをピストンで登るなら標高差は350mに満たない。特に難しい所も無い。登り慣れていない方には、達成感のある絶景を見ることが出来る手頃な山頂なのではないかと思った。


逆光だが榛名湖と外輪山が箱庭のように広がる


谷の紅葉が波のように連なるのも綺麗だ


先日登った鼻曲山が奥に見える 右最奥の浅間山は頂上が雲に覆われていた


南側、妙義山の右上は南アルプスだろう、そしてその隣は八ヶ岳

 眺望を充分に楽しんだ後に山頂を後にする。今日はまだ全行程の半分も歩いていない。目的の杏ヶ岳はまだまだ先である。


笹尾根を南西に下る 手前は西峰

 掃部ヶ岳から南西に降りる尾根は笹が腰高くらい。雰囲気は大変良いが、朝露をたっぷり含んでいるのでズボンが見る間に濡れてくる。雨具のズボンを履きたかったところだが、今日の行動では間違いなく不要と判断して車に置いてきてしまった。結局、次第に笹の朝露は無くなりズボンも自然に乾いてくれたので結果オーライだ。


榛名湖の見える角度が変わると雰囲気が違ってもう一枚


杏ヶ岳はあの一番奥のピーク 杖の神峠まで一旦降りての登り返し まだまだ先だ


途中の耳岩より(麓から見て右耳) ここは絶景だな 時間があったら昼寝をしていきたいほどだ

 西峰ともう一つのピークを越えて更に高度を下げると巨岩が露出している箇所に突き当たる。耳岩だ。遠くから見るとトラの顔に見えその耳が印象的なのが由来とも言われているようだ。(真偽は定かでない)


耳岩より見る色彩の海原


真ん中が西峰 掃部ヶ岳は奥で見えない


しつこいようだがアングル変わったので耳岩からももう一枚


溶岩が地上へ登り龍のように噴出した不思議な地形


杖の神峠の舗装道路に交差

 耳岩から進行方向が南に変わりぐっと標高を下げる。ここで掃部ヶ岳の山頂から初めての登山者とクロスする。こちら側はあまり歩く人はいないようだが、ルートの雰囲気は絶対的にこちらのほうが良いと思う。杏ヶ岳まで行かなくとも杖の神林道で戻れば周回出来るのだから、湖畔からのピストンだけでは勿体ないと強く思うのである。

 杖の神峠で休憩していると上から更に単独者がやってきて林道を降りていった。この区間は都合二名の登山者しか居なかったことになる。


後半の最高標高点、1317mの鷲ノ巣山

 杖の神峠から先の杏ヶ岳へのピストンは静かな落ち着いた山道。眺望は殆ど樹木に隠されて効かない。だが、歩き慣れた里山の風情が漂う登山道となった。こちら側のエリアに入っているのは自分一人かもしれないが、ここのところ人が多い山ばかりだったので、ふと一息つけるそんな思い。風でそよぐ木の音。自分の気配に驚いて去ろうとする小動物達の足音。色んなものに神経を集中させながら歩くのはやはり登山の醍醐味だ。


杏ヶ岳まではもう一下り、そしてもう一登り しかも見えているピークの更に次が山頂だ


ピンク色に染まる落葉絨毯の登山道が心地良い


二度の登り返しを経て静かな山頂へ 眺望は全く無い

 ようやく辿り着いた山頂。三等三角点、点名は『杏ヶ嶽』。
 地理院地図には「李が嶽」(すももがたけ)としながら、かっこ書きで「杏ヶ岳」(すもうがたけ)ともある。
 すももと入力して変換すると李が出てくるが、杏はあんずと入力変換すると出てくる。
 要はすもも=あんず=プラムとなる訳だが、”すもも”が”すもう”と訛るところが面白い。山の名前の由来を詳しく解説している本に載っているならば、是非読んでみたいものだ。


下山途中に樹間から相馬山の特徴的なピークが見える

 下山にかかると数人の登山者とスライドした。どうやら時間差で、まったくこちらが人気が無いという訳でも無かったようだ。杖の神峠まで戻ってみると、先ほどは車が一台も無かったのでてっきり閉鎖林道だとばかり思っていたが、数台の車が停まっていた。峠に車を置いて杏ヶ岳と掃部ヶ岳をピストンするハイカーもいるのだろう。


杖の神林道は序盤の眺望最高 樹に閉ざされた杏ヶ岳登山道よりスッキリしている 最後のご褒美だ


下るに従い砂利道へ 普通逆じゃないかな


絶景ポイントだった耳岩が遠くに見えた(トリミング) なるほど 丸い耳がくっ付いているようだ


榛名湖畔まで戻ってきた 中禅寺湖南岸から見る男体山を彷彿とさせる


湖畔の紅葉は今が盛り


烏帽子ヶ岳 このほかまだ未踏のピークが幾つかあるが総ざらいは来シーズンだ

 秋の良い一日を過ごす事が出来た榛名山。
 思えばバイクで水沢うどんを食べるためだけにしか訪れなかったこの地だが、今年の春から今回で三回目の訪問となった。
 榛名富士はロープウェイでずるしちゃったけど、その後二ツ岳、相馬山、水沢山と登ってきた。
 登山可能な外輪山の山はまだ幾つかある。でもあまり性急に登ってしまっては榛名山に申し訳ない。新しい春の息吹が感じられる頃にまた訪れようと思っている。

 そして明日はやはり歩き残しがある赤城山。その前に本日の泊地へ向かい、温泉で汗を流して明日への鋭気を養おうじゃないか。

概略コースタイム

駐車場発(07:58)-硯岩(08:23)-掃部ヶ岳(09:16)-西峰(09:37)-耳岩(10:00)-
杖の神峠(10:25)-鷲ノ巣山(10:48)-杏ヶ岳(11:20)-鷲ノ巣山(12:00)-
杖の神峠(12:17)-林道歩き-駐車地着(13:19)

カシミール3Dデータ

沿面距離:10.3Km
所要時間:5時間21分

カテゴリー: 車中泊の旅, 群馬県の山 パーマリンク

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