-『GPSmap60CSx』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
※当コースは全て登山道ではありません。参考にされる場合は自己責任でお願いします。
関連山行
2011年12月17日 鳴虫山~火戸尻山~675mP
鳴虫山から火戸尻山まで歩いた時、眼前に大きく横たわる六郎地山を見ていたく感動した。黒川沿いの殿畑集落を眼下に眺め、そこより一気に立ち上がる大きな山。その時は山名さえ知らなかったが、とにかくあそこを歩いてみたいという慟哭にちかいものがあった。
かくして年月が過ぎ、道なき山歩きの経験もそれなり積み、いよいよ挑戦の時が来たようである。本来はあと一ヶ月早く登るはずだったのだが、諸般の事情と天気予報が揃わず、ずるずると延期してきてしまった。今年は芽吹きも早いので青葉の茂り、下草の成長も早いはず。今回駄目ならもう次シーズンへ持ち越しと腹をくくっていたが、どうにか決行にこぎつけた。
自宅を6時過ぎに出発。夜半の雨がやんではいるものの空は今ひとつスッキリしない。天気予報は気象庁とウェザーニュースのどちらを見ても晴れを告げている。車が古関集落に差し掛かると、雨上がりのガスが周囲の山腹に浮かんでいた。墨絵のようで美しい。
一旦、林道河原小屋三の宿線を駆け上がり、縦走の到着点である峠にワインレッド号をデポし、とんぼ帰りで予定駐車地に車を停めた。準備を済ませいよいよ出発である。地形図上での理想的な取付きは(下写真右)の尾根末端。しかしそこには営業中のログハウスがあり庭先に車が停まっているので正面突破は難しい。少し離れたところから尾根に取り付くつもりで周囲を探索した。
すると、渡りに舟のような作業道を発見、しばらくこれを追うもすぐ消失する。はなから取付きは直登と腹をくくっていたので、幾らか楽をさせてもらった。しばし気合を入れて直登直登。いきなりの急斜面で出だしから腿がパンパンだ。先行きが長いのでちょっとセーブが必要だな。
やがて稜線に乗ったところで、ログハウスとの間合いを確かめてから熊鈴を取り出した。
歩きやすい防火帯を過ぎると薄い薮が出てくるが特に問題なし。嬉しいのはツツジが含まれた所もちらほら。花をくぐりながら歩くのも楽しいものだ。
序盤の標高差300mはひたすら登りの連続だった。写真を撮る余裕のある場所は比較的穏やかだが、急登区間になると足元のグリップもあまり良くないので体力を消耗する。先行者である動物達も急斜面では足を滑られせているようで苦労が伺える。
一旦突き上げてようやく風が抜ける稜線に乗り換えるとほっと一息。このころよりツツジが見られるようになるが、生憎の天気で光量不足。今ひとつ精細に欠けるのが残念。出発から1時間20分、部活のシゴキのようにひたすら登り続けてようやく一回目の下り。この後はアップダウンを繰り返し六郎地山まで徐々に高度を上げることになるが、流石にこの序盤戦でいささか元気が削がれた。
847mP手前で西側より登ってきたブル道(伐採重機用の道)と合わせる。帰宅して地図を見たが可能性のあるのは旧川中島集落から上がって来るルートが有力である。だが、稜線直下で崩落しておりこのままでは重機の往来も困難であろう。
847mP付近でブル道に別れを告げて871mPへの登り返し。ジリジリと登るのが案外辛い。途中、急斜面にあるのが大変珍しい石祠。登山靴のグリップもままならないような急斜面に一体どうして石祠を建てたのだろう。建立者の強い思いを感ぜずにはいられなかった。ここを登りきり北へ進路を変える。乗り換えた尾根はツツジ咲く薮。次々と変化が楽しい。
まもなく2つ目の石祠があった。こちらは平坦な場所で見ていても落ち着く。
974mPを過ぎるあたりから草地が始まる。背の低い笹が繁茂しているが鹿によって新芽が食べつくされているらしく、結果的にバリカンで刈り揃えたような感じになっている。
暫くすると右手東方に展望が開ける。真向かいに鎮座する鶏鳴山はひときわ大きく、何処から見ても端正な円錐形の笹目倉へと稜線を伸ばしている。かつて、あそこを歩いた時の事を思い出すと感慨ひとしおだ。笹目倉より手前に風雨雷山を経て下った宮小来川の集落もよく見える。
再び笹目倉より右手に目をやると、黒川の渓谷を挟んだ向かいの羽賀場山とお天気山の無骨な姿が見える。写真は撮ったのだが、残念な事に火戸尻山がピンぼけになってしまって掲載を断念。
鶏鳴山の手前の一段低い火戸尻山より南東に宮小来川集落まで伸びる尾根筋がよく見渡せた。この稜線も鳴虫山から火戸尻山へかけて歩いた時、半ばの675mPより赤井原林道へ降りてしまった経緯がある為、是非尾根末端まで歩いてみたいものだ。
この先展望の得られる箇所はほぼ無いだろうし、先ほどから妙に腹がすいてしかたなかった。山頂までまだ標高差100mを残してはいたが、時間も丁度良いのでザックを降ろして食事休憩とした。
いつものように食後のコーヒーでのんびりとしている。山鳩の低音が効いた力強い鳴声と、谷の何処かで鳴くウグイス。目の前の雄大な景色に添えられる情景としては最高だ。ふと目を凝らすと伐採で丸見えになった稜線を数頭の鹿が越えていく。印象的だったのは遠目に見ても尻の白い毛が随分大きく見えたこと。調べて見ると、警戒すべき状態の時は尻の白い部分を大きく見せるそうだ。直線にして百メートルほど離れたニンゲンに気づいたかどうかは定かではないが、あるいは仲間同士の問題か。いずれにせよ何か事情があったのだろう。
いつまでもそこに佇んでいたい景色に後ろ髪を引かれる思いで、山頂への残りの登りへと足を踏み出す。ゆっくり休んだはずなのにやはり序盤のキツさが効いているのだろう。若干足が重いが、それでも自然林の稜線は気持ちが軽くなる。
やがて六郎地山へ到着。三角点の廻りを見渡すも山名板が見当たらない。珍しいことだ。県内の三角点で山名板の掛かっていなかったのは此処が初めてではないか。先人の記録を見ると確かに山名板ある筈だ。よく探すと、かつて懸けていたと思われる針金はかろうじて見つかった。どこかに落ちているのでは再度探すも見当たらない。ふと真上の美しい木漏れ日を見上げると、少し離れた樹上に人工物が掛かっているのを見つけた。遠目に山名版のようにも見えるし枠組みのある掲示板のようにも見える。いずれにせよあんな高い所まで”獲物”を引っ張り上げた犯人は誰なのだろう。自分の頭蓋骨もあそこに吊り下げられたらたまったものでは無い。くわばらくわばら(^^;
山頂から北側は一気に踏み跡が濃くなる。と同時にシロヤシオが目立つようになった。紫のツツジ、紅色のツツジ、そしてシロヤシオと三色揃い、花と巡り合わせの薄い自分にとってはささやかなツツジ祭り状態だ。
(三色揃い踏みの写真は撮影したものの、解像度が悪くてよく解らない画になっていて残念。腕前とカメラの性能に落胆)
緩やかな主稜線から1101mPへの転換点はGPSを見ながら慎重に。すると黄色のビニールテープがご丁寧に正解を掲示してくれている。ここよりつるべ落としのように標高差にして約90m下げて再び140mの登り返しだ。流石に食後の重い体には堪えるが、此処を超えれば後は最後の973mPを残すのみでほぼ下りとなるのだから頑張ろうじゃないか。
稜線を塞ぐような大岩を過ぎ、西側に張られた古い有刺鉄線を見る。かつては鹿避けとして機能していたのだろう。今では寂しく朽ち果てつつある。
何も無い1101mPで一旦休憩をして残る973mPへと高度を下げる。稜線はますますもって穏やか。樹間からちらっと見えた女峰山方面からは数機のヘリの音が聞こえてくる。3日に女峰山で遭難した人を捜索していたヘリだ。この日の午後3時頃に発見救助されたというので丁度その一時間位前に聞いていた事になる。
973mPへは僅かな登り返し。ゴールは近いが気を緩めて滑落などしたら女峰山の方の二の舞いだ。ここは慎重に行くべし。
左手が崖になっている最後の小ピークを右手に巻くと、なんとコンクリート法面で道路まで真っ逆さま。というのは冗談でここは偵察済。
無事河原小屋三の宿線へ降り立ち傍らのワインレッド号の元へ到着した。
長丁場の六郎地山踏破は無事完了した。だがこの林道の下りも気が抜けない。標高差500mのダウンヒルなのだ。我がワインレッド号はこういうハードな条件の仕様とは程遠いので慎重に行かないとまずい。特にブレーキが弱い。このブログで登場する以外に乗っていないのに既に前輪のブレーキゴムは新車時の半分以下。如何にハードなブレーキング環境にさらされているかという事である。理由は簡単。ルートには基本的に下りしか選択しないから(笑)。
何はともあれ、ブレーキが効かなくなっては命に関わる。ブレーキシューのオーバーヒートを避けるように時折立ち止まったり、ブレーキングの間隔を広くとったりといろいろと工夫しながら降りていく。若い頃金が無かった時代に4輪ともドラム式ブレーキを搭載した軽自動車(今ではどんな安い車でも前輪は絶対ディスクブレーキだ)で峠を降りた時、ブレーキ多用でドラムが加熱して極端にブレーキの効きが低下した経験があった。仕組みは同じなのだ。自転車の場合フロントブレーキは通常の平坦地ではそれなりの効果があるが、下り坂ではリアブレーキが命綱なのだ。(バイクは逆)
途中、ガードレールに悪名高き井上昌子落書きがあった。一人、複数、あるいは連鎖犯。自分は鞍掛山大岩南尾根のバリエーションルートにも昌子岩とペンキで大書してあったのも記憶に残る。Googleなどで「井上昌子 落書き」と検索してもらえばあまたの検索結果に満ちている。暴走族がペンキでいろいろ書くのは許されることではないにしても社会の構図的に理解出来る。だが、山歩きを楽しみにする者が行う行為としては甚だ理解に苦しむのだ。そんなに自己顕示欲が強ければ登った山の全てに昌子山名板でも吊るせばよいのにそうでもない所がますます解らない。『犯行心理が見えてこない』のである。
林道の傾斜も緩みようやくブレーキの心配も少なくなってきた。のんびりと進む左手に、今日歩いてきたであろう稜線が続く。
計画当初、先人に倣い川中島集落跡地からのルートにほぼ傾いていたが、今回も自らのこだわりに徹して歩けた事に充足感を感じる一日であった。
概略コースタイム
駐車地発(07:53)-872mP(09:30)-896mP(10:24)-ブル道接合(10:34)-847mP(10:42)-871mP(10:59)-
974mP(11:41)-昼食ポイント(12:01)-昼食休憩-行動再開(12:45)-六郎地山(13:03)-1101mP(13:56)-
973mP(14:25)-自転車-駐車地着(15:25)
こんばんは。稜線踏破、尾根利用、ロングコース、と、まっちゃんさん3拍子が揃った山歩き。
読み応え抜群で、まっちゃんさんらしいなぁと感じつつ読ませていただきました。
思いがけない花との出逢いも素敵ですが、女峰山ほか、周辺の山々の眺望も優れていますね。
自然林の感じもいいし、薮も少ないし。このレポでメジャー化するのかもしれないなぁと思いました。
懸案のコース踏破、おめでとうございます & フロンティアの役目、ひとまずお疲れ様でした(^^)
植林帯の尾根を繋ぐルートだと殆ど眺望にはありつけませんので、たまに樹間から見える景色には敏感に反応します。
また、いつも書いていることなのですが、伐採地は山自体にとっては少し悲しいことではありますが、通過するハイカーにとっては喜び。大いなる矛盾に困惑します(^^;
おはようございます^^
ほんとに近くだったんですねぇ ガスは?って思ったのですが
標高差の違いですかね?
ま、うちも復路は晴れましたので、それが救いです!笑
でも、シロヤシオは見れなかったっす 残念
蕗平からのハイカーさんから、途中シロヤシオ満開だったと
聞いてたので、いいなぁって思ってました。
まっちゃんの撮ったシロヤシオ きれいです~~~^^v
しかし
山名板、、、どうしたんでしょうね
あの高いところにあるのが山名板?
もしかして、、、ハクビシンがくわえて、、、上げたとか??(^_^;)
ガスも花も標高差の影響だと思います。
六郎地山から更に500m程高い所なので、ツツジはこれから。
蕗平から登ってくると、丁度シロヤシオの咲いている標高帯を通過します。
地蔵岳や夕日岳方面は丁度ガスがかかるギリギリの高さに見えました。
山名板は・・・
ハクビシンあたりだと可愛くて良いのですが、熊だったりすると、怖あ(TдT)です。
こんばんは。
遂に縦走されましたね。
何時だったかケン坊へのコメントに六郎地山の名が?
記憶が違わなかったら...
このコースも半端ないアップダウンの連続のようで
とても我々素人には”夢のまた夢”のコース。
最後のワインレッド号で1時間も下りだからOK?
それにしても頭が下がります。
確かにアップダウンの連続は堪えます。
巻きルートは基本的に危険なので原則どんなに辛くても尾根キープでピーク超えの連続です。
たとえそこが薮でも常に正面突破。越えられない岩があって巻けない時はすなわちそこで行動終了だと思っていますが、幸いにしていままでそういった局面に遭っていないのはラッキーなのかもしれません。
>とても我々素人には”夢のまた夢”のコース。
いえいえ、単独では流石にちょっと無理かもしれませんが、馬蹄形を軽々こなすケン坊さんなら歩けるかもしれません。逆に自分がケン坊さんの年齢になったときに馬蹄形はおろか果たして普通の山歩きさえできるかどうか心配です。そのために今のうちから少し鍛錬しておかなきゃというのが正直な気持ちです。
どこへ行っても賑わいを見せたゴールデンウィーク、ひとり静かな山歩きは憧れでもあります。
原点に戻っての単独行、もう出来ないかな・・・(^^;)
リンゴさんならいつでも渋い単独行に旅立てるんじゃないですか。
あ、でも、”足の合う”『相棒』がいるのも良いものですね。
まっちゃんさん こんばんは。
なかなかのルートだと思うのですが、さらっと歩かれていらっしゃいますね。
結構アップダウンがあって大変そうです。
川中島からのピストンにしなくて良かったですよ。単にピークハントの歩きになっちゃいますから(自戒を込めて)。
やはりこういった歩き方をしたいものだとつくづく思いました。
3年前に川中島からピストンされた記事、拝見しておりました。
流石に6月ともなると草木も深く、気温も高くて難儀したことと思います。
周回を考えれば乗り物を確保するか、林道歩きを潔しとしなければピストンしかないのがこの手の山の宿命かもしれませんね。