中禅寺湖、大日尾根 上野島ルートで社山


-『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成-
※当コースには一般登山道でない箇所が含まれています。参考にされる場合は自己責任でお願いします。

社山の過去の記事
  2011年 9月16日 中禅寺湖南陵を歩く
  2009年10月18日 中禅寺湖の展望台、社山
関連山行
  2007年 9月16日 半月山から茶の木平まで

 朝晩めっきり寒くなり、里にも紅葉の便りが聞こえてくるようになったが、里山の色付きも存外捨てたものではないのだ。
 日光に向かう時の定番ルートである新里街道を走っていると、我らが地元の里山も半蔵山から古賀志山へと地味ながらも色付きを見せ、すっかり晩秋の趣である。いつにも増して山行への気持ちが高揚(オヤジギャグではなくたまたま重ね言葉)してくるというものだ。それに加えてこの抜けるような青空はどうだ。もう既に今日の山行が素晴らしいことを約束しているかのような心持ち。最近の山行は天気に恵まれなかったのでなおさら感慨深い。
 いろは坂の紅葉渋滞も流石に沈静化したであろうこのタイミングをと、かねてより画策していた日光の社山北面領域の尾根筋が今日の目的ルートである。

 ネットで紹介されている社山のバリエーションルートのうち、北側は大日尾根が一般的である。最もベーシック(少なくとも自分はそう思う)なのが大日崎からのルート。そして松ヶ崎からと上野島からのルートもある。阿世潟を過ぎてすぐ手前の尾根を急登して合流するショートカットコースを含めると全4ルートとなる。
(いずれのコースも登山道では無く、道標のみならずテープの類も皆無なので注意されたし)

 事前研究によると、このコースの難しさはシャクナゲ藪の濃さにあり、大日崎R>上野島R>松ヶ崎R>ショートカットRのようだ。ショートカットRは藪無しで行けるので藪度はゼロとなるらしい。
 大日崎Rはネット諸氏も一様にシャクナゲに苦労しているようなのでビギナーの自分としては次回まわしとして、記録は少ないが上野島Rで登る事にした。

 今回は立木観音駐車場から阿世潟までワインレッド号(折りたたみ自転車)が出番だ。周回して阿世潟に戻るならマストアイテムとかねてより考えていたが、前回の黒檜岳の時は出番無しであった。

 林道終点の民宿が取り壊された(いつか泊まりたかった)跡地の隣に真新しい建物があった。ボートハウスなのだろうか。

今日の相棒 では出発 民宿跡地に新たな建物

 軽量な折りたたみ自転車とはいえ、上に乗っている自分が軽量では無いので、上り坂は無理せず押して歩くべし。下りはびゅーんと軽快。落ち葉が敷積もる上もとても心地よい。

 やがて上野島が遠くに見えてきた。島に最も近い岬から尾根を登っていくのが今日のルートだ。

落ち葉踏むサイクリング 上野島見える こう登るのだ

 阿世潟に到着した。まだ朝日は届かず、一面には細かいあられが解けずに残っている。初冬の趣だ。

阿世潟へチャリデポ完了 日が差さないのでまだ寒い

 阿世潟から先の中禅寺湖畔は初めて歩くが、なかなか雰囲気が良い。湖岸一周なんていうのも結構良いかもしれないが、一人で歩くのはちょっと寂しいかもしれない。山中を登り、そして下り、藪を漕いで岩を巻いている時は一人でも全く孤独を感じないが、こういった整備されている所を延々と歩くとなるとやはり一人は寂しいと思うのだから人間は勝手なものだ。

 二本目の木橋を渡ると大日尾根へのショートカットルートの取り付き点がある。この場所はネットでも必ず写真が載っているが、自分もあえて掲載した。穏やかな感じの疎林だが上の方はどうなっているか解らない。情報によると上まで藪は全く無いそうなので、「藪はどうも」という方にはお勧めバリエーションルートだ。ただ、此処も道標やテープが無いので経験者のみであろう。

二本目の木橋 ショートカットコースの取付点

 湖畔の道は時に狭くなったり変化が結構ある。紅葉の時期、新緑の頃は素晴らしい光景であろうことは想像に難くない。

湖岸を行く 阿世潟峠から社山への稜線 天気晴朗

 上野島前の岬に到着すると湖岸歩きも終了だ。一息入れて眼前の斜面へ取付き、尾根へとよじ登っていく。周囲を数ルート検討したが、正面が一番堅実な感じがしたのでそこを登る。写真ではまったく斜度が表現出来ていないが、足がかりの無い斜面の直登は奥に行くと斜度を増し、思いのほか苦戦した。里山でこういう斜面を直登する事がよくあるので臆することは無いが、慣れない人だとここが第一の関門になるかも知れない。

 無事取付きを登りきると尾根形顕著な末端に出る。そこはシャクナゲの群生が繁茂し、尾根の真芯を占領していた。

上野島のある突端に到着 まずはここを登る シャクナゲ藪が出て来た

 巻けるところは巻き、シャクナゲが手薄なところは正面突破。巻きもあまり下り過ぎるとリカバリの登り返しがキツイ。
 北側を巻いていると大日崎からの尾根筋が見えてきた。あそこも序盤の平坦地がいかにも藪が濃さそうに見えるが、後日是非歩いてみたいものだ。

手薄な所を攻める 北側を巻くと寒々とした光景 大日崎からの尾根が見える

 一旦藪が切れて快適な尾根歩きスタートと思いきや、そう簡単にシャクナゲは勘弁してくれず再び出現。相変わらず巻いたり突っ込んだりの繰り返し。時折ぽっかり何も無い場所があったりして変化があって面白い。

一旦シャクナゲ地獄から開放 ・・・と思いきや、まだまだ だいぶ高度が上がってきたようだ

 左右が切れ落ちていてどうしても正面突破不能な場合もある。そんなシャクナゲのガードが屈強な場所はちゃんと小動物ルートがある。四つん這いで行けばスイスイだ。たまにザックが引っかかるが案外これが楽ちんだ。

 やがて本当にシャクナゲ地獄帯から開放される。藪は嫌いでないが、シャクナゲのしなるような強靭な枝ぶりはやはり手強いもの。今回ははじめから想定内だったからよいが、突然出会うと結構めげるかもしれない。ツツジの藪は最強にしてもはや突破不能だが、自分としては根曲がり竹とシャクナゲも格闘相手としてはかなり高ランクである。

こういう所は四つん這いが楽だ 湖岸が美しい シャクナゲ地獄といよいよ決別

 大日崎からの尾根と合わせる頃になると、樹間にちらちら見えていた社山の北斜面が随分大きく見えてくるようになる。やがて1557mPへ到着。まばらな自然林に降り注ぐ陽光が暖かく、日溜まりを楽しむ冬場の里山歩きにも似た風情だ。

社山が大きくなってきた 松ヶ崎ルートと合わせる1557mP

 1557mPより松ヶ崎方面へ偵察を兼ね、なだらかな尾根を一旦下りて1514.9m三角点を踏む。周囲には何も無いが、ビニール製の白い三角点は獣達に囓られて牙跡無数。

松ヶ崎方面を少し偵察 1514.9m三角点 自然林を1557mpへ帰還する

 明るい稜線を進み、正面の小高い1633mPが次の目標。直下は笹原の急登だが、シカ道を見失わないように行けば案外楽に歩ける。たまにシカ道も失うが、やがて何処からともなく道は現れる。「たまには自分でルートを考えなさい」と鹿に諭されているような気分だ。

 1633mPを超えても更に笹の登りは続き、やっと傾斜が緩んだ頃に中禅寺湖の眺望が拡がる地点に到達した。足尾鉱毒の煙害でこの山域の南側に面した一帯は立ち枯れが多いが、中禅寺湖に面したこちらもガスの通り道だったのか、見事に木が失われている。時計を見ると時間も良い頃なので此処で食事にしよう。

1633mpが次の目標点 昼食の眺望点より 正面に高山

 社山の東尾根から見る中禅寺湖も壮大で美しいが、中禅寺湖の西側を直接見下ろすこの風景もまた良い。丁度正面に県の最高峰である白根山が白く冠雪しており、左右の山々を従えるような様子が実に素晴らしい。眼下には高山が湖からせり出している姿が大きく見える。天気はまったく不安の無い快晴で、雲一つなくガスの片鱗も無し。こんな極上の景色を独り占め出来て今日は今年の指折り山行と言って良いだろう。

 格別な味わいのコーヒーでゆっくり眺望を楽しんだ後は珍しくセルフ撮りに挑戦。百均で買ったクネクネ三脚がいまいち切り株に固定し切れなかったがまぁこんなもの?
 モデルがガニ股だとか服のセンスが無いとか、最近流行りのシェーが無いとかそういうツッコミは平にご容赦を。

展望地からの風景(動画)

 展望地から、だらだらと笹原を行くとやがて懐かしい道標が目に入ってきた。社山~黒檜岳縦走路に接合したのだ。黒檜岳への縦走路を記事にした時に『中禅寺湖南陵を歩く』と題打ったものだが、今回はその南陵の先端から歩いたことになる。

珍しくセルフ撮り カメラを引くとこんな感じ 社山~黒檜岳登山道へ接合

 道標地点から笹の急降下。ダイナミックな崩落地脇を通過していく。

あれを登り返すのかぁ ダイナミックな崩落地 突き当りが先ほどの道標地点

 崩落地は南西一箇所、少し社山寄りは北東側にもありなかなかダイナミックな景観を形成している。

 緩やかに登り返し、最後は黒木の森へと続く。木が切れて岩の合間を縫うようにして急登すれば社山の西側展望地へ飛び出した。

北東側もかなり深く崩落している 社山西展望地直下 西展望地から黒檜岳方面下降点

 南側眺望が素晴らしい展望地で一息入れていると、本日初めての登山者と会う。立木観音前を出発して五時間半ぶりに人に出会った事になる。

 西側には先日登った皇海山と鋸岳が大きく、その先には袈裟丸連峰が連なる。どこがそれだか同定は出来ないが、今春敗退した奥袈裟丸山への思いを新たにする。

 南に目を向けると、社山バリエーションルートの一つである南尾根が延々と銅親水公園に向けて伸びている。ここもピストンでは勿体無いので、大平山南東に二本ある尾根のどちらかを繋いで歩きたいのだが、距離も長いしかなりレベルが高そうだ。阿世潟まで登山道を下り、南の長手沢の林道に降りて周回とするのが自分の実力では無難なところだろう。

鋸岳と皇海山 袈裟丸連峰か? この南尾根も検討中

 山頂は写真を一枚撮って通過。後は登山道をひたすら下るだけ。好眺望のこのルートを登りの苦労を味わずして下るだけなのは、大日尾根でのシャクナゲ格闘のご褒美なのである。

 途中6人位の若い男女のグループが登ってきた。この時間に山頂を踏んでも、すぐ下山しないと登山口に着く頃は日が傾いているのではと老婆心。口には出さなかったが、後ろのほうの女性はお世辞にも快速とはいえない足運びであった。

 眼下に拡がる中禅寺湖の風景は定番だが、湖岸に横たわる稜線を(写真下、右)眺め、今日あそこを歩いてきたのだと思うと感慨深いものがある。

手前に鳴蟲山、奥は二股山 社山下りの定番眺望

 雨量観測所の掲示板を見てふと我がGPSを取り出し、フムフム、なかなか正確じゃないかと一人悦にいる。そりゃそうだ。これだけ天空が開けていて衛星の補足数も多いのだから、これで狂っていたら使えないよ。

 冬場は水の摂取量が減るものだ。カップラーメンとコーヒー用に約500ml、飲み水として500mlのペットボトルを1本用意して入山。更に非常用に500mlペットボトルの水をもう一本携行している。これが無いと荷が軽くなって良いと常々思うものの、万が一の事を考えると、非常用のカロリーメイト二箱と水一本はザックから外すことは出来ないのだ。
 残り少なくなった通常携行の一本を最後まで飲み干し、さぁ最後の下りだ。

雨量観測所の緯度経度は うーん、なかなか正確

 北斜面の階段は日が全く差し込まないようで凍結が見られる。一応軽アイゼンは持ってきているが、そこまでは必要なさそうなので注意深く降りていく。案外こんなところで転んで捻挫とか骨折をしたりするのかもしれない。

 最後はワインレッド号で余韻を楽しむように湖畔のサイクリングを楽しみ、今日の良き山行を締めくくることが出来た。

北面の階段は凍りついていた ワインレッド号がお出迎え

概略コースタイム

立木観音駐車場発(07:40)-阿世潟(08:13)-上野島前の岬(08:44)-シャクナゲ藪から開放(09:44)-
大日崎からの尾根と合流(10:00)-1557mP(10:08)-1514.9m三角点(10:20)-1633mP(11:15)-
昼食の展望地(11:41)-昼食休憩-行動再開(12:26)-黒檜岳分岐(12:33)-社山西展望地(13:07)-
雨量観測所(13:53)-阿世潟峠(14:10)-阿世潟(14:30)-立木観音駐車場着(14:58)

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中禅寺湖、大日尾根 上野島ルートで社山 への12件のフィードバック

  1. Non のコメント:

     こんにちは。晴天に恵まれた1日、楽しげなヤブ多数のバリエーション
    ルートを楽しまれたようで、本当に何よりでした。これまでに溜まった
    鬱憤も青空の下で解放されたのではないでしょうか(^^)
    (自然林のバリはNon夫が嫌がるので、ルート検討できないのが残念…)
     我が家は日曜に奥久慈の岩稜を歩いてきました。今年最後の秋山を
    楽しめて良かったです。

    • まっちゃん のコメント:

      久々の晴天で、溜飲を下げたとはまさに今回のような感じでした。
      ショートカットルートなら藪が無い(筈?)なので是非ご検討ください。

  2. リンゴ のコメント:

    大日尾根はショートカットコースからの取り付きをブログ仲間のレポで見ているので、自分もめっちゃ気になっています。
    やるならば芽吹く前の春先と冬枯れの時期、そして今回のような晴天の日に限られるでしょうね。
    まっちゃんがセルフ撮りした場所からの風景をこの目で見たいと思いました。
    いつか参考に出来る日が来ると良いのですが・・・(^^)

    • まっちゃん のコメント:

      機会があったら是非大日尾根歩いてください。
      シャクナゲに翻弄されるのはお勧め出来ませんが、ショートカットルートで歩いてもかなりお勧めだと思います。

      今回はシェーの練習してなかったのでセルフ撮りに間に合いませんでした(*゚▽゚*)

  3. コンドル のコメント:

    チャリで湖畔を通っても良かったんですね?
    禁止はバイクの事だったのかな?
    2年前にチャリでイタリア大使館へ行こうとしたら、
    ゲートの所に(2輪車通行止め)みたいな事書いてあったんで、
    歩きで行きました。
    阿世潟まで歩くと1時間強かかるので、チャリ正解ですよね。

    • まっちゃん のコメント:

      「車両の乗り入れを禁止します」とあったので、軽車両も含まれるかも知れません。
      真偽の程は?ですが、道を荒らすような行為は無かったので環境保護的にはOKかも知れませんが、モラル的には?かな。
      以前、ナンバー無しのポケバイで走っている釣り師を見たことがありますが、流石にあれはどうかなと思いました。
      湖畔歩きもルートと考え楽しむなら、歩きも良いですが。

  4. さとう のコメント:

    先日、石裂の廃道歩きで感じたワクワクが、まだ残っていて、まっちゃんさんの沢山の写真を見たら妄想がスパークしはじめました!
    つぎは、どの辺を狙ってるんですか?

    • まっちゃん のコメント:

      廃なものって、ワクワク感が溢れていますよね。
      廃道は特に、在りし日の標識やカーブミラーに往時の賑わいを感じたり、
      古道に至っては、そこを往来する荷駄の喧騒さえ感じます。
      また、今回のようなルートだと、日々そこを往来する獣たち、そして自分のような物好きがルートを探りながら歩いている姿が浮かんできます。

      次は、 どこでしょう。ネタ帳にはいろいろ妄想が書き連ねてあるのですが、下調べがまだまだな箇所だらけ。もっとも下調べの段階からお楽しみが始まっているのでじっくりと行きたいと思います。

  5. ケン坊 のコメント:

    こんばんは。
    素晴らしい報告書...完読しました>笑<
    まっちゃんじゃないと歩けないルートでケン坊は初めから諦めて読みました。
    晴天は自然からまっちゃんへのご褒美だと思います。
    もしケン坊が行く場合は日照時間の長い季節...じゃないと無理!
    しかしまっちゃんは周囲に見える山の名前を知っていて羨ましいです。
    山の名前が判ると違った楽しみもあるんでしょうね?
    エェ~ 最後に湖畔をサイクリング??? 嘘でしょう! マジっすか?
    やはりまっちゃんのパワーには敵いませんね~ 
    そんなこと最初から判ってましたが>笑<

    • まっちゃん のコメント:

      最近はめっきりパワーダウンしてしまって、休み休みしか歩けません。
      もともとそんなに体力があるほうではないので、スポーツクラブ通いは現状維持レベルです。若い頃にもっと鍛えておけば良かったとつくづく思います。
      同年代でもパワフルな人は自分と比べるととてつもなく体力があっていつも羨ましいです。

      でもケン坊さんだって男体山を二荒山神社から登ってしまうのだから凄いですよ。
      自分は、男体山登山なら「志津乗越」から、と弱気になってしまいます。

  6. 亀三郎 のコメント:

    こんにちは

    シャクナゲのヤブ!鹿道、、、うぐぐ、、、とても亀三郎には無理だす
    それでなくても、最近はアスファルトが「恋人」なので、、、(赤面)
    でも、それはそうと
    快晴だし、どの写真の風景も素晴らしいですね!
    わたしも、どっか一部分でいいから、
    こうゆう色で自分のカメラで撮ってみたいです!

    PS 知ってる場所、、、社山山頂、、、阿世潟峠、、、
       懐かしかったです(感謝)

    • まっちゃん のコメント:

      写真のベテラン亀三郎さんに褒められると恥ずかしいです。
      数うちゃ当たるで沢山撮りながら歩いているので、最近標準CTより遅いこともありますが、インターバル取りながら歩いているみたいなものなのでバテ防止で丁度良いくらいです(´∀`)

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