氷の世界、雲竜渓谷を訪ねる

アーカイブ:日光の山達

投稿日:2010年02月21日 22:00

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-- 『GPSMAP60CSx US版』+『カシミール3D』+『国土地理院地図閲覧サービスデータ』にて作成 --

 予報では週明けに気温が上がってくると報じていたので、暖かくなる前に冬場の懸案箇所である雲竜渓谷を訪れることにした。
雲竜渓谷は女峰山と赤薙山の南面の荒々しい場所に位置する峡谷であるが、その核心である雲竜瀑は冬季に氷結する姿に惹かれて訪ねる人が後を絶たないという有名な場所である。
ネットでもその報告は多数あり、最近ではブログ仲間のリンゴさんが訪問している。諸氏の記事を目にするたびに自分も溜息をついていたのであった。

晴天のなか、いつものように車を西走させると日光の山並みがどんどんと大きくなってくる。今日はあの懐へと向かうのだなと思うといつにも増して胸躍る気分である。

神橋を渡ってすぐ右折する。程なく北に向かう細い道へと入って行くと、幾ばくかの集落を通り過ぎる頃には白銀の世界へと様変わりしていく。今週もパジェロミニの直結4駆モードの独壇場である。

ゲート前には既に数台の車が駐めてあった。自分も駐車スペースを確保して支度する。思いの外気温は低くないが、肝心の氷瀑が緩んではいないかとそちらのほうが心配だ。

ゲートを越えて林道を歩き始めると、その先にも真新しいタイヤ痕が続く。どうやら工事関係者の通行があったのだろうか。まずは轍を拾いながら雪道を楽しむことにしよう。

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今日もパジェロミニは絶好調    ゲート前に駐車する    関係車両の轍が続く

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稲荷川を挟んだ向かい側      

 行き交う後続者や先行者も無し。たった一人で歩く雪の林道というのは案外寂しいものである。いつもの道無き道の単独行なら、穏やかな稜線を歩いていても常に緊張が継続し、ともすれば本当に胃が痛くなることもある。まぁそんな事が愉しくて歩いているのは事実だが、まったくもってコースが保証されている今日のような単調な林道歩きは、流石の自分も話し相手が欲しいところであった。そのぶん、歩く(進む)ことよりも、自然の気配をいろいろと感じ取ることが出来たような気がする。

春を間近に控えた小鳥達ののさえずり。雲一つ無い空と白銀の道。さくさくと進む自分の足音が静寂の中に確かに響いていく。

緩い坂道を1時間も歩いた頃、稲荷川展望台へと到着。展望台には監視カメラが設置されており、レンズの向かう先は日本一の砂防ダム、日向砂防ダムである。

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稲荷川展望台    カメラが監視する先は    日向砂防ダム

 ダムの奥の方は左手が女峰山、正面が赤薙山となる。今回のルート中では最大の眺望ポイントであった。設置されている双眼鏡はコインを入れなくても見ることが出来る。作業員の監視用なのだろう。暫し楽しませて貰った。

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女峰山    赤薙山    無料?双眼鏡

 展望台の前に1台自家用車が駐まっていた。あとで解ったのだが一般ハイカーがゲートを開けて上がってきたようだが、よくここまで走ってこれたものだと驚く。

ここから先はいよいよ轍も無くなり人間の足跡だけが続いていく。天気がよいので雪の反射が目に辛い。ゴーグルを持ってこなかったのが残念だが、きっと汗で内側が曇ってしまって使い物にならないのだろう。

標高が上がってくると雪も締まってきた。ますます軽やかなサクサクと歩む足音を、突然切り割くような爆音。見上げれば、碧い空に見事なコントラストの真っ直ぐな飛行機雲が描かれていた。

林道のほぼ終点に近いあたりで右側の谷にトレースが逸れていく。道標は特に無いが渓谷へはどうやらここから降りていくようだ。

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いよいよ足跡のみ       ここから谷に降りていく

 突然目の前の景色が広がり、浅瀬ながらも荒々しい流れの稲荷川源流の広大な河原を眼下に見渡せる場所へ出た。雲竜渓谷入り口である。遠く奥のほうに氷の柱が連なっているのが見える。

アイゼンを装着して渓谷に足を踏み入れる。飛び石を伝って沢を渡らなければならない場面が何回かあるが、一番始めのポイントで不覚にも右足を岩から外して沢に落としてしまった。アイゼンの歯が岩に当たりバランスを崩したのだ。深さは30センチくらいなので危険は無いが、一瞬にして靴の中に水が入ってきた。幸いにスパッツを履いていたので靴の中に水が充満してはいない。気温も高いので下手に脱ぐよりもこのまま放置しておいたほうが良いだろう。

次なる難関は、足の幅一つ分やっとの箇所の通過。氷の壁にかろうじて指で確保出来るホールドポイントが2つある。日頃からボルダリングなどをやる人ならたやすいだろうが、浅瀬とはいえザックごと沢の餌食にはなりたくない。息を整え気合いを入れて慎重に通過した。今日一番の難所だろう。

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   雲竜渓谷入り口    僅かなルートを辿る

 峡谷上部のほうへ進むと巨大つららが下がっており、その真下に人が居た。つららは時折折れて落ちてくることがあるらしいので、直下に居るのは大変危険な行為だ。見ている自分のほうが冷や汗ものである。あの巨大なつららが直撃したら即死も充分あり得るだろうに。

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   下部の人で大きさが解る   

 一旦昼食休憩を挟み、更に雪の急斜面を登っていくと、とうとう正面に雲竜瀑がその全容を露わにした。ここまで見てきた氷柱も充分に迫力あるものであったが、その高さは100mにも達するという圧倒的なスケールと存在感に息をのむ。女峰山と赤薙山の前衛を守る竜がまさに天に向かって昇っていくが如しである。

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   雲竜瀑   

 安全の為に滝に近づくことはしなかったが、氷瀑クライミングをする人もいるという。自分は遠巻きにして眺めるだけで充分である。滝の左手の高い所へ登って周囲を見渡すが、切り立った崖と所々に見えるつららがこの谷の険しさを遺憾なく物語っていた。

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   脇の峡谷   

 山奥に、密かにかつ堂々と、無雪期には轟音と共に滝壺を穿ちながら周囲にけぶる水霧。想像するだけでも壮絶な風景に相違ないであろう。紅葉期もなかなか良いという。自分も季節を違えて是非再訪してみたいとものだ。また、過去のネット記録と比べると、もっと氷も大きく渓谷全体が壮大な年があるようである。長い長い林道歩きを我慢するだけの価値は充分にある雲竜渓谷。今後も楽しみである。

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氷瀑側から見る最終アプローチ    林道より宇都宮鹿沼方面
概略コースタイム
林道ゲート駐車地発(9:02)-日向ダム展望台(10:00)-渓谷入口(11:05)-
渓谷上部にて昼食休憩(11:44)-行動再開(12:02)-雲竜瀑到着(12:10)-
雲竜瀑出発(12:23)-渓谷入口(12:47)-日向ダム展望台(13:47)-
林道ゲート駐車地着(14:26)

コメント (4)

リンゴ:

コメント投稿日:2010年02月24日 19:43

私が行った時よりも積雪も多いし、氷壁も氷瀑も大きい様です。
先月の暖冬傾向から一転、2月の寒波で氷が発達したのかも知れませんね。
もしかしたら今年のベストではないでしょうか!

けむ:

コメント投稿日:2010年02月24日 20:28

これがうわさの雲竜瀑ですかー
写真で見てもスケールのでかさを感じます。
生で見るとすげー迫力なんでしょうね。

Non:

コメント投稿日:2010年02月24日 22:20

 こんばんは。もぉ、日光の山好きなら一度は行ってみなきゃでしょ~くらいに思いました。
すごい迫力です。氷柱の下にいる人たち、見ている方がちょっと怖いけど…(^^;)
ちなみに、WILD-1の店内に「こんなとこ行きました」のレポ的なものが飾ってあって、その中に
雲竜渓谷が含まれているのご存知ですか? それを見かけた時に、なかなか面白そうだなぁって思って、
Non夫に「こんなとこ、あるんだね~」と声をかけてみるのですが、「ふーん」だけで反応が薄くて…。
結局は毎年のように見送っているのですが、紅葉シーズンも良いんですね。確かに綺麗そう~
Non夫に「山じゃないとこ」とリクエストされたら(たまにあるので、その度に頭を抱えます・苦笑)
ここを提案してみたいです。
それと、自分がいかに県内のことを調べたり見たりしていないかを思い知りました。日向砂防ダム、
日本一ですか。そういう目で見てみると、これまでと違って見えます(^^;)

まっちゃん:

コメント投稿日:2010年02月24日 22:46

>リンゴさん

"友知らず"付近のつららはリンゴさんの記事の写真のほうが迫力あったような気がします。
でもここは写真じゃ伝わらないですよね。本当に壮大でした。行って良かったなと思ってます。


>けむさん

是非是非お出かけください。林道歩きがちょっと飽きますが、私は暇つぶしにジグザグを一箇所ショートカットして直登。薮が無い分コース取りは自由ですが、雪で足が滑って思いの外体力消耗。おとなしく"ジグザグ"と林道を辿って行きました。


>Nonさん

栃木もまだまだ良い所が一杯ありますね。
というか、実は自然の懐がでっかくて、その中に小さな自分が遊びに行っているだけなんでしょうね。

紅葉シーズンは長い林道歩きも楽しめそうで期待出来ます。