小来川蕎麦「ほそで」と大芦渓谷

アーカイブ:昼飯探訪

投稿日:2009年11月08日 22:01

../../../img/0911/091108_00-thumb.jpg

 新そばと紅葉を楽しみに家内とドライブに出かけた。

 蕎麦は以前から気になっていた小来川の最奥にある「ほそで」という小屋風の店である。少し集落寄りにある山家(やまが)や瀧茶屋は結構有名で、いつ見ても客が絶えない。場所的な事もあるだろうが、かなり奥まった「ほそで」はどちらかというとひっそりとした佇まいもあってあまり目立たない感じがする。だがネットで調べると案外評判が良い。土日のみ営業というのがいかにも農村レストラン然としていて興味深い。百聞は一見にしかず、まずは行ってみようと考えていた。

 小来川の集落を抜け、滝ヶ原峠に向かって走っていく。黒川添いに火戸尻山を回り込むようにして進路が北に変わり、暫く走るとやがてログハウス調の文字通り「山小屋 ほそで」に着く。ぱっとしない天気だが、逆にしっとりした感じが周囲と溶け込んでいるような妙に落ち着きのある佇まいである。

 丁度昼飯時であるが、引き戸を開き中を窺うと閑散とした店内に客は居ない。少し不安にもなったが、囲炉裏に燃える火の匂いも中々に良い。

 いかにも地元の主婦といったおばさんが注文を取りに来た。どことなく素人くささもあるが、むしろ家庭でもてなしをうけるような雰囲気もこの店ならではであろう。

 

 蕎麦セットと名前はモダンだが、ありふれた素材の天ぷらは、蕎麦と食べ合わせるに充分かつ美味。中でも大根の天ぷらは意外な旨さに驚く。

 肝心の蕎麦のほうはどうだろう。実は新蕎麦かどうかというのを聞くのを失念してしまったが、麺はコシがあって香りも香ばしい。自分的には結構高得点だ。そして蕎麦つゆ。これが実に素晴らしい。後を引かないさっぱりとした味わいにまず驚く。それでいてダシの本質は決して損なわれていない。大抵、ダシが勝っていたり塩辛さが勝っていたりするものだが、ここの店の「かえし」と「だし」の微妙なバランスが醸し出す味わいの深さは舌鼓を打つに値する。決してグルメや蕎麦通では無い自分だが、今まで食べた蕎麦の中でこのつゆは恐らくダントツトップの味わいであること間違いなしである。

 2組ほど客が入ってきた頃には、あがりのそば湯も飲み干し「ほそで」を後にする。さぁ、後半は大芦渓谷の紅葉狩りだ。

 滝ヶ原峠へ駆け上り、そこから南へ「河原小屋三の宿線」に入る。どうやらこの辺りは林層もさることながら幾らか時期も逸してしまったようで割と殺伐とした風景が続く。それでも段々と高度が下がってくると時折山腹を綺麗に覆う紅葉を見ることが出来た。

../../../img/0911/091108_01-thumb.jpg    ../../../img/0911/091108_02-thumb.jpg    ../../../img/0911/091108_03-thumb.jpg
ほそで    蕎麦セット大盛    河原小屋三の宿線より

 三ノ宿山の東側を通るこの林道が、やがて日光沢と平行するようになると周囲の樹々が賑やかな色づきで迎えてくれるようになった。そして日光沢が本沢と合流し東大芦川渓谷をなす地点、大滝に達する。いつもなら訪れる人もまばらであろう駐車スペースに沢山車が駐まっていた。

とはいっても10台にも満たない位だから大したことは無いのだが、行き交う車もまばらだっただけに此処だけぱっと賑やかな雰囲気がする。三々五々、撮影に熱中する人、静かな佇まいを楽しんでいる人。夏に来たときには葉に隠れていた大滝も、落葉の今ははっきりとその姿を見ることが出来る。紅葉は派手さこそないが、渓谷の美しさを感じるには充分なその風景を眺めながらストーブで沸かしたお湯で熱いコーヒーを飲んだ。

 今年はあと何回紅葉を見るのだろうか。齢五十を目前にして、一体生涯にあと何回、いや何十回紅葉を見るのだろうか。妙にセンチメンタルな気分なのは滝の魔力なのか。古から、人知を越えた自然の営みに人々は畏れ癒されていくという。そんなことが少し身近に感じることが出来たそんな一日であった。

../../../img/0911/091108_04-thumb.jpg    ../../../img/0911/091108_05-thumb.jpg    ../../../img/0911/091108_06-thumb.jpg
   大滝   
../../../img/0911/091108_07-thumb.jpg    ../../../img/0911/091108_08-thumb.jpg    ../../../img/0911/091108_09-thumb.jpg
河原に降りる    川中島の橋から   

コメント (5)

Non:

コメント投稿日:2009年11月10日 00:43

 こんばんは。お蕎麦の描写が美味しそうですね~。私は蕎麦より、うどんで育った方なので
(あとは言わずと知れた豚骨ラーメンですね ^^)、お蕎麦には疎くて、蕎麦湯も味わえない
タイプですが(苦笑)、下山後に一番食べたくなるのは暖かい蕎麦だったりします。
あ、何より気になったのが大根の天ぷらです! 今度、試してみよう。輪切りでしたか?

 あと大芦渓谷、紅葉をゆっくり楽しむのに良さそうな場所ですね。あまり派手さはないけど、
しんみりした良さがあるというか。まあ、何よりも、その場で淹れるコーヒーですね。
ひさしぶりに熱々のコーヒーを外で飲みたいと思いました(^^)

けむ:

コメント投稿日:2009年11月10日 20:08

まっちゃん こんばんは

隠れ家風でいい感じのお店ですね。
Nonさん同様ダイコンの天ぷらに興味津々です。
そういえばなんで今まで天ぷらの材料にしなかったのかなあ。
蕎麦も田舎風でおいしそうです。

まっちゃん:

コメント投稿日:2009年11月10日 21:27

Nonさん

そういえばNonさんは九州でしたね。
20年位前に出張で初めて博多に行ったとき、豚骨ラーメン屋で辛高菜が置いてあって、皆当然のように大盛で乗っけて食べてる光景に遭遇しました。自分も倣いましたが、これがびっくり美味。博多の辛高菜って明太子の崩れた部分が入っていてナイスです。

博多といえば明太子がお土産で有名ですが、辛高菜の味にすっかりヤラレテ沢山お土産に買っていったら我が家では大変好評でした。あと、長崎に行ったときに買ってきた福砂屋のカステラも美味しかったなぁ。かねふくの明太子とか福砂屋のカステラは当時も東京などの銘店街で入手できましたが、辛高菜は同じ物を見たことがなかったので、その後数回の出張では必ず大量に買い込んできたものです(安いし美味しいし)


>けむさん

店に入った瞬間、あまりにも閑散としていたので「あちゃー失敗かなぁ」と思いましたが、なかなか雰囲気からして味のある店でした。


>Nonさん、けむさん

大根の天ぷらは自分、盲点でしたね。食べると案外ホクホク感があってさっぱりしていて美味かったです。
そういえば、9月に家内と林道ドライブした時の湯ノ花温泉の蕎麦屋では梨の天ぷらが出ました。
一瞬何なのか判りませんでしたが、結構合うものです。
料理は素材の組み合わせの偶然から想像もつかない美味しさを産み出すものですが、良い例ですね。
今度我が家で天ぷらをするときは片っ端から揚げてみるかな(笑)

ちなみに、大根は輪切りで厚みが1センチくらいでした。家内は一旦茹でてから揚げているのかなぁと言っていましたが、食べた感じは適度に歯ごたえもあったような・・・
謎です。

亀三郎:

コメント投稿日:2013年05月10日 17:46

こんにちは
ほそで、、、そばつゆ、、、絶品、、、の雰囲気ありありですね
写真の色からすると、わたしも多分、気に入る系統じゃないかと思いました!
お蕎麦も、美味しそう===
行きたいお店リストがたまってますが
ここも
後追い候補にリストアップしました!!(笑)
亀三郎
お蕎麦、、、好きなんです
でもでも
真っ白更科系じゃなくて
挽きぐるみが入った、田舎蕎麦系が好み!
なので、、、この店、、、かなり気になっています^^v

PS 大根の天ぷらも、、、、興味津々!

まっちゃん:

コメント投稿日:2013年05月10日 21:18

亀三郎さん、こんばんは。

ほそではお店の雰囲気も「隠れ家」的な雰囲気があって良いです。
味については自分の素人評価なので気に入っていただけるかどうかわかりませんが、一度は訪れても損は無いと思います。

(それにしてもこの記事のリンク、リンク切れだらけですね(^^;メンテしないと)