三重の旅 お伊勢参り

 11月後半の車中泊の旅が始まった。

 今回は前半の15日~18日は家内と共にお伊勢参り+観光。二人で車中泊は現実的に無理なので宿を取り、美味しい食事と温泉に癒されるフツーの旅行となった。18日の昼過ぎに近鉄で帰る家内を降ろし、26日までの車中泊へと遷移した。


 平日なので高速の早朝割の為に朝3時半に自宅出発。余裕はあったが45分頃には無事高速に乗る事が出来た。1万5千円近い高速代が2/3の約一万円になるのでばかにならない。

 計画では移動で疲れるので松坂駅前の激安ビジネスホテルで寝るだけと考えていたが、高速も途中の渋滞など無く順調に進み、昼頃には松坂へ到達。定番の伊勢うどんを食べたあと外宮参拝となった。

 正直自分は神仏の信仰は無い。しかし殆どの人は無くても神仏に頭を下げる。自分も社会的なお付き合いでは神妙な面持ちで首を垂れることはあるが、今回は単なる観光なのでこだわる事はない。家内は丁寧に参拝して回ったが、自分は単純に神の大本山たる伊勢神宮という所を見てみたかったというのがここを訪れた目的だ。

 外宮は衣食住や産業の守り神である豊受大御神(とよううけのおおみかみ)を祀ってある。広々とした玉砂利の道が信仰の無い者にとってもすがすがしい思いであった。

 夜は松坂駅周辺の居酒屋で適当につまんで飲む。流石に560kmを超える運転と超早起きには疲れた。コンビニで買ったロング缶のチューハイを飲み終えると早々にダウンである。


まずは伊勢神宮の外宮より


流石!広大かつ荘厳な雰囲気


正宮の豊受大神宮




凄い生命力 神のなせる業か

11月16日(木)

 お伊勢参りの順番は外宮、内宮、朝熊ヶ岳というのが正しいらしい。朝熊ヶ岳は伊勢神宮の裏山的な存在で標高555mの立派な山だ。山上に朝熊岳金剛證寺(あさまだけこんごうしょうじ)がありここへお参りするとお伊勢参りがコンプリートということらしい。
 ちなみに山頂近くまで有料道路があり車で登ることが出来るらしいが、今般朝熊山詣りにこだわる人も少ないという。YAMAPを見ると麓からお伊勢参りルートを歩く人も散見されるが、今回我が家は車ルートも含めて割愛させていただいた。

 内宮は我国の神様の頂点である天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る皇大神宮と別宮がある。天照大御神は日本の国土を作ったという伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)と伊邪那美大神(いざなみのおおかみ)より産まれたという。さて、それではイザナキノミコト、イザナミノミコトに親は居るのかと調べると古事記にはその記述はなく、先代の神はいたがこの二人が親から産まれたという記述は無いという。天照大御神は女神と解釈されており、混沌とした時代に卑弥呼のような女帝が出現したのも女性を神格化したほうが争いを納めやすいという部分が共通しているように思えて面白い。最も、トップの下には実務を仕切る者達がいるわけなので天照大御神の部下は如何に?などという話を始めると神話好きの方々にお叱りを受けるのでやめておこう。


内宮前の赤福本店


おかげ横丁


鳥居をくぐり宇治橋を渡るといよいよ境内


五十鈴川の御手洗場 水が大変綺麗であった


正宮 皇大神宮 集団でお参拝をする燕尾服の人が居た


他の神様を祀った別宮もある


宇治橋のたもとより


赤福本店前の五十鈴川にかかる新橋 ここも水は澄んでいる

 折角なので赤福でもいただこうじゃないかと店に行くが、朝はすいていたのに長蛇の列。おかげ横丁のいくつかのお店で食べ歩きをした後、餅菓子屋さんで休憩とした。赤福は自分的にはただ甘いだけのように感じるが、たまたま入ったこのお店で食べたお菓子。いささか歩き疲れた体に甘さが染みて香り高いお茶の美味しさがよくマッチした。


和菓子で一服 ちょっと量が多かったかな

 無事お伊勢参りを終え、今晩の宿に向かう途中にある二見の夫婦岩に寄り道する。雲が拡がる空故に海の色はいま一つ冴えなかったが、一瞬雲間から日が差し込むと照らされた岩が神々しく輝いた。


二見にある夫婦岩


陽が差し込む一瞬


二見浦の穏やかな海岸 足跡もどこか楽しげ

11月17日(金)

 昨晩の夕食は豪華。伊勢海老が真ん中に鎮座する新鮮な魚がふんだんな舟盛、美味な料理の数々、そして宿お勧めの冷酒に舌鼓を打つ。庶民的だがたまにはこういう贅沢もよい。以前はバイキング式の食事が良いと思ったことがあったが、年々食べられる量が減って来たので少量でも美味しいものをゆっくりと食べたいという風に変わってきたのは歳というものだろう。

 明けて翌朝は強雨。外歩きの観光は無理なので雨脚が弱くなってきた頃を見計らい鳥羽水族館へ。孫でも一緒なら喜ぶだろうが、流石に老夫婦でいかがなものかと思いきや、評判に違わず素晴らしい展示やショー(入館料も素晴らしかったが)に午前中を充分に過ごすことが出来た。


鳥羽水族館でアシカショー


アシカ君熱演


ジュゴンやスナメリなど派手な海獣が豊富な展示の中 やはりカピバラ見るとほっこりするな




ペンギンの散歩ショー 腕輪で個体識別しているらしい


愛嬌たっぷり(本人達はその意識はないだろうが)に一生懸命歩いていた

 昼過ぎからすっかり晴れ上がる。風はいささか強いが空は青い。鳥羽から少し南下、眺望を求めて車を走らせる。「鳥羽展望台 海女のテラス」がすこぶる景色が良いということで向かった。


風が強かったが眺望は最高!

 沖合に神島が大きく見える。神島は三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台となった島であり、170.7m三角点(灯明山)に登ることが出来る。離島、しかもここまでコンパクトな島の山に登るなんてそれだけでもロマンチックで登高意欲にそそられる。だが鳥羽からの船が一日数便なので少ない旅程では組み込むのにためらわれてしまうのが残念だ。「潮騒」を読んだらもう一度この地に至り、伊勢湾の出口にあたるこの島に上陸し是非ともあの頂を踏んでみたいと思うのだ。


伊勢湾の出口に浮かぶ神島 いつか訪れたい島だ




神島の右手に目をやると渥美半島





 今晩泊まるのは高台に建つ海側の眺めが売りの宿。部屋に通されて窓外に拡がるオーシャビューに思わずため息が出た。夕食は近頃珍しい部屋食の和食コースだ。昨晩と若干意匠が異なるが刺身膳から始まり美味しいものが並ぶ。今宵も冷酒に酔いしれる。食事の後は温泉を楽しみ、火照った体を冷まそうと窓を開けると夜の冷たい風の向こうに遠い対岸の明かりがちらちらと灯る。なかなか贅沢な時間だ。


今夜の宿はオーシャンビュー 部屋からこの眺め


翌朝目覚めると既に漁が始まっていた


朝日を受ける漁港




遥か向こうの市街地が蜃気楼のように浮かび上がる

 風は引き続き強め。だが昨日と違って朝から天気は良い。家内との観光は午前中一杯なので志摩方面へ向かう。ガイドブックでもよく紹介される横山展望台より英虞湾の入り組んだ複雑な光景を楽しむ。


英虞湾方面の複雑な海岸線





 伊勢市まで戻り、参拝残しの猿田彦神社へお参りをする。猿田彦はみちびきの神様である。人生は選択の連続というから実は結構大切な神様なのかもしれない。天照大御神や豊受神のようなインフラ系と違ってより人間臭い部分に関わる。よって賽銭も半端ないように見受けられた。

 敷地内に佐瑠女神社が並ぶ。佐瑠女さんの由来は板書の説明を読んでもイマイチ理解出来なかったが、天照大御神が天岩戸に隠れてしまった時に岩戸の前で佐瑠女さんが神楽を演じてお出ましをいただく契機になったという事から「芸事や縁結び」の神様とされている。故に芸能人の奉納した幟がたくさんあった。


最後はみちびきの神 猿田彦神社へ


お隣の佐瑠女神社

 コメダコーヒーで昼食を済ませた後、家内を近鉄の伊勢市駅で降ろす。家内は近鉄特急と新幹線を使って宇都宮に帰る。自分はここで車内アレンジを車中泊仕様に変えて尾鷲を目指す。

 土地勘がまったく無いのでどこをどう走ったのかはあとでGPSのログを見てから解ったが山間部の趣も日頃知っているものとどことなく違って見えるのは植生なのだろうか。尾鷲や熊野周辺は日本一降水量の多い場所で樹もよく育つというので圧倒的に針葉樹が多いと思っていたのだがあながちそうでもないようだ。

 途中から雨が降り出した。大台ケ原方面の標高の高い所は暗い雲が覆っている。神々の住まうこの土地。しっかりとお参りをしなかった自分を叱るような荒天。もしかしたら高地は雪が降っているのかもしれない。

 尾鷲市内のスーパーで食料調達をすると再び山間部へと入っていく。泊地である「道の駅 熊野きのくに」は店舗営業が土日のみという山の中にある閑散という言葉が実によく似合う道の駅だ。一応二桁国道(R42)に面しているとはいえ往来する車も極めて少ない。これは静かな夜が期待出来る。

 食事も終えていざシュラフに潜り込もうとしたがどうにも夕方からの強風が気になる。ネットで現在地予報を見ると風は強めだが5m程度。だが実際の風は山あいの複雑な地形であるせいか時折突風が吹きつけて車体を揺らす。継続的な強風なら何度か経験したことがあるが、ちょっと様子が違うのだ。同日、他の地域では竜巻のようなものが見られたという報道もあった。万が一この閑散とした道の駅で竜巻に持ち上げられても車の中でシュラフにくるまれていては逃げるタイミングは無い。まず命はないだろう。猿田彦ではないが判断に時間を要しなかった。熊野の海岸沿いにある別な道の駅に脱兎の如く車を走らせたのだった。

撮影使用機材
・NIKON Z50
・NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR

カテゴリー: 車中泊の旅, 旅行 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA