ベトナム旅行ニ日目

8月18日(火)

 ホテルにてバイキング形式の朝食。笑っちゃう程防音性に劣る部屋で、すぐ脇にあるドンコイ通りを往来するバイクや車の音が煩くて昨晩はなかなか寝付かれなかった。だが、気が付くと疲労の果てに深い眠りに落ちていったようだ。救いはエアコンがきちんと動くこと。お陰で体調も胃の具合もすこぶる良好だ。

 バイキングで早速フォーを食べた。香草のスッキリした香りが鼻に抜けるスープが美味い。そんなスープが絡む優しい麺の喉越しが良い。薄切りの牛肉が乗っていたが、齧ってみると肉の臭みがなく、スープの香りに一体化していて美味しい。肉嫌いの自分でも完食してしまった。

 今回の旅行は呆れるほど何も計画を立てていない。今日何処に行くかというのは昨晩地図を眺めてやっと決めたばかりの思いつきの旅である。午前中の予定は、まず観光客の定番であるベンタイン市場。そしてホーチミン市唯一の高層ビルへ登り市内を眺めてやろうじゃないか。そんな計画でホテルを出発した。

 昨晩、ニャーハンゴンへ食事に出かけた時に既に市内の交通事情の洗礼を受けているのだが、改めてその凄さに圧倒された。日本人から見ると交通ルールなんてあるのかと思うほど凄まじい状況だ。お行儀よく横断歩道で待っていても永遠に渡ることが出来ないとさえ思ってしまう。

 まず、歩行者用の信号が無い場合が多い。というか殆ど無い。車両用の信号は交差点手前の右側(車両は右側通行)にある柱の上に小ぶりなやつがちょこんとついているのみで、日本のように進行方向前面に信号が垂れ下がっている訳ではない。
 歩行者用信号のない横断歩道の渡り方は、まず横切る車道側の信号が赤になっていることを確認して・・・左右に充分注意して進みましょう。では無くて、左右に注意して注意して注意して注意して注意して・・・ 要するに一瞬たりとも気を抜かずに車やバイクが突っ込んできたら即ダッシュ出来る位の注意力が肝要なのだ。歩行者優先という考え方は希薄なようで、横断歩道を人が歩いていても轢かなきゃ問題ないさ的なノリでみんな運転している。当然バイク同士や車対バイクにも凄まじい暗黙のルールがあるようだ。クラクションが至るところで鳴り響くこのへんの事情は長くなるので次回に改めよう。

朝食はホテルのバイキングで ホーチミン市民の足 怒涛の進軍

 時折、ビルに掛けられた独立70周年記念の垂れ幕を見かける。日本の戦後70年と重なるかと思いきや、ベトナムはフランスの植民地時代を経たあと、日本の東南アジア侵略で一時的に日本統治となったことがある。ホーチミンの独立宣言がなされたのは日本敗戦後の1945年9月2日である。独立前の最後の統治者である日本の痕跡が全く見られないことや抗日的な感情が殆ど感じられないのはやはりその後のベトナム戦争の傷があまりにも深く、歴史の一部に溝を作ってしまったのではないかと推察。 

ホーチミン独立宣言から70年を迎える 観光客定番のベンタイン市場

 ベンタイン市場は、観光名所としての位置づけもあり適度な清潔感がある。午後になると暑さと人出が増すので朝の早いうちが良いとガイドブックに書いてあった。なるほど、この高温多湿で更に雑踏となればもはや先に進む気力は無くなるだろう。
 ひと通りぶらぶらするが、あまりに雑多過ぎ。基本的に買い物に興味の希薄な自分はともかく、買い物好きの家内や娘には精巧な手作りの雑貨などに時折心動かされるようだ。決定的に欲しいものが見つからなかったということもあるが、値切り交渉が前提なこの市場では初めに提示される金額が案外高く、またどこまで値切れるか不明なのでなかなかお買い上げには至らない。
 それでも、外の日差しが強いので帽子を持って来なかった自分がColumbia(恐らくニセもの)の帽子、娘が麦わら帽を購入。少し値切って両方で50万ドン(約2,800円)だった。他の物価を考えればもうちょっと値切ればよかったと後から後悔するが、帽子屋のおばちゃんに寄付したと思いましょう(笑)


 市場をひと通り見終わり、次なるポイントは徒歩で1km先のビクテスコフィナンシャルタワーへ。ホテルから市場まで既に600m程歩いているが、とにかくジリジリと照りつける日差しとむせるような湿度が厳しい。たまらず途中のお洒落なカフェに緊急避難。
 初乗り1万ドン(55円程度)のタクシーに乗っても、市内なら間違いなく300円もあればどこにでも行けてしまいそうだという。ならばタクシーの多用もありかなと思ったが、やはり歩いて移動するといろいろなものが見えるのでそれなりに楽しいものなのだ。

  あまりの暑さにカフェに避難 走っているバイクも多いが駐輪もこの通り

 街中に溢れるバイクはは当然駐車場所にも汲々として、勢い歩道が埋め尽くされるということになっている。場所によってはおじさんがたむろしていて、彼らがどうやら盗難とか様々な問題を解決管理しているようにも見受けられる。バイクの持ち主がおじさんにお金を渡してバイクを託し、帰ってきたオーナーの為にバイクを路上まで出しているおじさんの姿をあちこちで見かける。保管場所はパブリックな道路を使うというところがちょっとセコイが、サービス業として成立しているところが面白い。

もはや歩道は埋め尽くされている 自転車の後ろで屋台を牽引する子供 街角の風景
  胃腸に自信があれば食べてみたいね いろいろな肉が吊り下がっている

 地上68階建てビルの49階にあるサイゴンスカイデッキの入場料は20万ドンとお高め。日本円にして1,100円だから、コンビニで500mlの水が1万ドンで買えることを考えれば日本だと2,000円くらいになるのだろうか。当然訪れるのは外国人と一部の裕福なベトナム人観光客だけのようである。
 展望室からは360度ホーチミン市を眺めることが出来る。眼下に先ほどまで居た赤い屋根のベンタイン市場が、そして近くのロータリを大量のバイクが通り過ぎて行く様子も良く見える。別な方角にはお世辞にも綺麗とは言えないサイゴン川が滔々と流れるさま。ビルのガラス越しとはいえ、空気中の水分が極めて飽和状態に近い霞んだ遠景。そしてその下に繰り広げられる人々の営みを感じる風景だ。

唯一の高層ビルへ 展望デッキより眼下のベンタイン市場 サイゴン川が滔々と流れる

 ビルから灼熱の通りに再び降り立てば、クーラーに慣れた体にはガツンとくる熱気。思わず溶けてしまいそうだ。

 小ぶりな飛行機なら離発着できそうなグエンフエ通りの突き当りには人民委員会庁舎があり、その前衛に革命のシンボルであるホーチミン像がある。人影は少ない(幾らか涼しくなる夕方には沢山人が居た)が、ベトナムのステータスのような場所なのだろう。(翌日、ここで兵士にホイッスルを吹かれる事件発生=大したことじゃなかったですが)

 ここより一本東側の通りに渡ると、滞在中のホテルの前にあるドンコイ通り(ソウルの明洞のような場所)に出る。ホテル方面に向かって北上すると、フランス統治下の残香、あるいはロシアの影響なのか、そんなものを感じるお洒落な建物の市民劇場などもある。

突き当りが人民委員会庁舎 市民劇場 ヨーロッパ調の佇まい

 昼飯を何処にするか思案したが、昨晩目を付けておいたビィンコムセンターという近代的なショッピングモールの食堂街で食べることにした。ここは写真付きのメニューがあるので安心して注文出来る。ベトナム料理数品とベトナムの地元を代表する333ビールで乾杯!
 それにしてもベトナム料理は必ず野菜(殆ど香草)が一緒に出てくるのだが、要はそれらに巻いて食べろということらしい。この香草がまた爽やかにしてスパイシー。エグ味やクセのある野菜好きな自分には堪らない。

今日もベトナムビールで昼飯をいただく

 食後はタクシーを拾い、自分の希望でサイゴン駅を見に出かけた。特に鉄ちゃんで世界の鉄道事情に興味があるという訳ではないが、駅というのはいろいろな人がいろいろな目的で集まっているので(それだけに危険もあるのだが)ベトナムに来ても見落とすまじと随分前から考えていた。

 サイゴン駅に向かう日本人観光客は珍しいらしい。タクシーに乗る時にSaigonStationと言っても通じない。ベトナム語ではGa Sai Gonなので「ガーサイゴン?」とも言ってみるもまったくだめ。後で知ったのだが、Gaはニャーと発音するように聞こえていた。結局地図を指さして乗せて貰ったが、ベトナム語は発音もイントネーションも多彩でかなり難しそうだ。

  {駅に向かうタクシー車内からの動画(バイクが凄い)→ 動画1 動画2

 駅に発着する列車と乗降する人々の姿で賑わう光景を期待していたが、終着駅であるサイゴン駅の電車の便は極めて少ないことが判明。事前調べをしておけば良かったと後悔する。まぁ雰囲気は掴めた。北部のハノイ方面まで30数時間掛けて列車の旅なんてのもいつか経験したいものだが、冷房車じゃなくちゃ嫌だ(爆)

食後はタクシーに乗りサイゴン駅へ ベトナム語オンリー 便は少ない

 白人のバックパッカーツーリストのような人少々、長距離列車で移動するベトナム人が少々、閑散とした待合室をひと通り見渡してから駅舎を離れ周囲を散策した。ホテル周辺のような都会的な雰囲気からまた違った生活感が滲みでている光景を見ることが出来たので満足。

カフェとも書いてあるがよく解らない店 駅前駐輪場もこの通り 何故かあたりに鶏の親子が

 駅前で再びタクシーを拾い、中心部にある聖マリア教会まで移動する。ここまで来ればホテル周辺までは徒歩でも射程距離なのだ。
 フランスの建材を使用しているという教会は、周囲の喧騒とは一線を画した厳かな雰囲気に包まれている。

駅前通りは流石に生活感全開だ 聖マリア教会  

 教会の脇には黄色いお洒落な中央郵便局がある。内部は現役郵便局として機能している他、観光客向けの土産物屋にもなっているというユニークさ。教会とセットで訪れる観光客向けのリソースにしてしまおうという発想が面白い。

  お洒落な色の中央郵便局 郵便局だが観光客にも開放

 郵便局の前の広場では切り絵を売るおばさんが何組かいて観光客を狙っている。この切り絵がまた精巧極まりなく、閉じて冊子状になっているものを開くと見事な3D切り絵が拡がる。再び閉じればまた冊子に戻るというすぐれもの。これを機械で作っているか人間が人手で作っているかどうかは知る由もないが、刺繍小物のショップ店員に聞いたところ、ベトナム北部の人達に手作りされた商品が日本円で数百円で手に入るということから、発展途上国への大いなる労働力搾取とも思えてならない。経済発展の為の通過儀礼のような現象だが、そもそも一応社会主義国家であるこの国の場合どう考えてよいかいまいち不明。
(切り絵カードについては詳しい人のサイトを参照ください)

 そんな手作り雑貨小物店が点在するドンコイ通りにおいて、家内と娘はショッピングに精を出す。自分はとんと興味が無いので裏通りの静かな雑貨店の前に暫し腰を降ろしてまったりと過ごす。先ほどから目の前の携帯椅子に腰掛けアイスコーヒー片手に新聞を読み耽っているおじさんも、時折こちらをチラ見しては「この日本人は一体何をしているのだ」と言いたげ。家内と娘が見た自分は「すっかりベトナムのおじさん化」してたそうな。

  精巧な切り絵を売るおばさん 裏通りの静かな風景

 行き当たりばったりの今日の最後の行動は、ビィンコムセンター内のスーパー探索。万引きが多いのか、入り口でバッグを預けないといけないのがちょっと面倒だ。品揃えは日用雑貨から食品、酒類まで豊富だ。一般的なマーケットに比べれば幾らか割高なのかもしれないが、整然と商品が並んでいて安心感も高い。もし、ホーチミン市に居住するようなことになったら、暫くはお世話になりたい感満載のお店だ。

 昼食も結局ビィンコムセンターの食堂街であったが、流石に暑い街中を探検する元気も出ずに店内にあるフォー24というチェーン店でフォーを食べることに。慣れない暑さの中、疲れきった体に333ビールの滲みること。韓国のhiteビールはあまり美味しいと感じなかったが、ベトナム国民ビールの代表選手である333は充分美味しいと感じた。情報によると、少し中心部から離れた所にあるビアホールに行けば一杯30円くらいでグラスビールが飲める店が沢山あるらしい。ビギナーツーリストにはハードルが高そうだが、そんな所にもいずれかは行ってみたいものだ。

スーパーの様子   ビールの箱売りもしている
おぉ!出前一丁 カップ麺も充実 カップ焼きそばもある
缶飲料コーナー 晩飯はフォー24というチェーン店で  
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ベトナム旅行ニ日目 への4件のフィードバック

  1. 亀三郎 のコメント:

    バイクの群れ?すごいですねぇ 動画も拝見しました!
    ああゆう流れでは とても 車 運転する自信は
    私には ありません (^_^;)
    でも なんか 同時に 国の活力?も感じたりして・・・
    日本も 産めよ増やせよで 人口増加策で
    国力Upを図らないと、、、なんて、、、
    それはそうと
    香草 問題なければ ベトナム食も問題なしですね^^v
    わたしは どっちかと言うと、、、チャンツァイ?香草系が苦手なもので
    たくさんあると よけて食べるタイプ、、、
    東南アジア向きじゃないんです。

    • まっちゃん のコメント:

      いや、ホントによく事故らないなぁと感心しましたよ。
      自分の拙い写真や動画だと実際の臨場感の一割も表現出来てなくて、現地はそれはそれは凄いことになってます。

      帰国して車運転したり横断歩道歩いたりすると、つくづく日本って安全な国って実感します。

  2. ケン坊 のコメント:

    こんばんは。
    情報量が多過ぎてケン坊には的が絞れません>笑<
    異国の文化、慣習とでも言うのでしょうか TVでは
    たまに目にする光景も、ブロ友の目で捉えた映像と思うと
    俄然”親近感”が湧いてきて...見させて頂きました。
    ケン坊には海外ネタは提供できません。もっぱら楽しむ
    側の一人として、次回以降も楽しみに待ってます。

    • まっちゃん のコメント:

      事実は小説よりも奇なり
      じゃありませんが、やはりその場に立ってみないと分からないことが多いもので、海外良好はもっぱらカルチャーショックを楽しむものと、少なくとも自分は考えてます。
      韓国も三回行きましたが、ベトナムもももう一二回行きたいと思ってます。
      あまり暑くない時期に(笑)

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